第16話 ウェブ授業
「先生には悪いけど、笑っちゃったよ。噛みすぎだし、ものすごい汗かいてるし。だいたい、最初の方なんか声入ってなかったし…。
お兄ちゃんも一緒に見てて笑ってた。カメラに向かって喋るのって、そんなに緊張するのかなぁ。」
初めてのウェブ授業が終わった夕方。久美ちゃんから電話があった。
授業といっても今日はお試しで、先生の自己紹介とか、休み中の過ごし方とか先生の話しを聞くだけの20分ぐらいのものだった。
見終わった後、隣りで一緒に見ていたお母さんが
「先生も慣れない事で大変ね」
と呟いていた。
先生って教室でみんなの前で喋ったり授業をするのは全然普通なのに、カメラの前になるとそんなに緊張するものなのかしら。少し不思議。
「そういえば、隣りのお兄ちゃんの家で見てるんだっけ。」
「そうだよ。久しぶりにお兄ちゃんの部屋に入ったんだけど、小さい頃に遊びに行ってた時とはなんだか感じが変わってて、ちょっと緊張しちゃった」
高校生の男の子の部屋ってどんななんだろう。想像できない。久美ちゃんが羨ましい。
「いいなぁ。私も一緒に観たいなぁ。私なんかお母さんと観たんだよ。来週からちゃんと授業やるんだよね。お母さんと見てもつまんないけど、一人でみてもつまんないよ。」
「へへへ…先生の話しが終わった後もお兄ちゃんとお喋りして帰ってきたよ。来週の授業もお兄ちゃんの部屋で観るんだ。Wi-Fiでもお兄ちゃんの部屋が一番映りがいいんだって。」
Wi-Fiでも映りの違いとか、そんな感じなんだ。よく判らないけど、そうなんだろう。
「じゃあ来週から毎日お兄ちゃんの部屋に行くの?」
ウェブ授業は来週から毎日のようにある。たいていは午後からの1時間ぐらい。学年ごとに時間が違う。低学年は午前中になっている。
「そうなるね。弟は午前中の最後の時間で、私は午後の最初の時間。お母さんが『お兄ちゃんの分もお昼をお弁当にして作るから3人で一緒に食べたら?』って言ってる。お兄ちゃんの家はおじさんもおばさんも仕事でいないからね。タブレットを無料で使わせてもらってるから、少しはお返しがしたいみたい。家族全員が毎日のように家に居るのも辛くなってきたしね〜」
「あはは…。そういうもんなんだ」
「そういうもんなんだよ」
久美ちゃんは少しオーバーにため息をついてみせた。
「でもさ県内のシンキカンセンシャも最近はずっと0が続いてるし、もう少しだよね。もう少ししたらまた学校にも行けるし一緒に遊べるよね。きっと」
「そうだよね。学校再開まではお兄ちゃんとお喋りして楽しむわ」
うーん…やっぱり羨ましい。
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