第102話 こーへいvsピースケ! ファイッ!
バッ!!
パクぅ――ッ!
俺の視界に突然入り込んできたもの――それはピースケだった。
俺より早く落下点へと入ったピースケは、しなやかな跳躍からのジャンピングキャッチによって、俺が取ろうとしていたフライングディスクを先んじて口キャッチしてみせたのだ。
「なっ、ピースケ!? いつの間に!?」
「あーん、ピースケ駄目だよー。今はこーへいと練習してるんだから。ステイ、ステイ!」
春香がピースケをたしなめるものの、
ブンブンブンブン!
ピースケは嬉しそうに尻尾を振りながら、春香のところにフライングディスクを持っていた。
「ははっ、ピースケのやつ、どうにも我慢できなかったみたいだな」
「いつもはちゃんと言うことを聞くんだけど。ごめんね、こーへい」
「そんなのいいってば。そりゃ目の前で2人だけで楽しい遊びをされたら、いくら言うことを聞く賢いピースケだって、我慢できないよな」
「うーん、どうしよっか?」
「せっかくだし、ピースケとキャッチの勝負でもしようかな? こうなったらもう言っても聞かないだろうし」
「じゃあこーへいとピースケのキャッチング勝負ってことで」
「了解」
「ふふっ、頑張ってね」
「こう見えて元リトルリーガーだからな。キャッチングでは負けないさ」
「ピースケもそれでいい?」
ブンブンブンブン!
ピースケが俺と春香を見上げながら、元気よく尻尾を振る。
心なしか挑戦的な目をしているような気がしなくもない。
「ピースケはやる気満々みたいだねー」
「ピースケ、お手柔らかにな」
ブンブン!
というわけで。
俺はほぼほぼぶっつけ本番で、ピースケとフライングディスクのキャッチングで勝負することになった。
俺とピースケは春香から少し距離を取って構える。
「じゃあ行くよー! 準備はいーい?」
「バチコーイ!」
キャウン!
「えいっ!」
春香がフライングディスクを投げた。
フワッと浮き上がりながら飛んでくるフライングディスク。
予想される落下点をめがけて、俺とピースケが走る。
(くそっ、微妙に落ちそうで落ちてこないんだよな。落下点の目測がどうにも測りにくいぞ)
予想した落下点あたりで俺がフラフラしていると、ピースケが俺の3メートルほど前に出た。
(なんだ? ピースケ、どうしてそんなに前に出た? そこには落ちないだろ?)
ピースケの行動の意図を俺が疑問に感じていると、それまで悠々と空を舞っていたフライングディスクが曲がりながら急激に落下し始めて、ちょうどピースケのいるあたりへと向かって落ちていく。
「なにぃ――っ!?」
驚く俺とは対照的に、ピースケはそれを難なく口でキャッチした。
「ピースケ、ナイスキャッチ! 残念、こーへいの負けだねー」
春香が楽しそうな声で笑った。
「まさか落下する軌道を完全に見切っていたというのか? やるなピースケ……!」
ブンブンブンブン!
でもそうか。
目の前で見せられたおかげで、なんとなくだけどわかったぞ。
フライングディスクはスピードが落ちてくると、空気の影響を受けてそこからは一気に落ちていくんだ。
俺は思い描いていた落下軌道を修正する。
(見てろよピースケ、次は俺が勝つ。春香の前で、
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