星剣使いにして天剣の王~岩から剣引っこ抜いたら始まる冒険譚~

田仲らんが

◆【第1部】◆:────〈星剣開放篇〉────

☞【The Start of Story】:~《ファースト・プロローグ》~


 「──オイオイ、

 なんでこんなとこに剣がさってんだ……?」



 それは、ある日の早朝のことだった。


 俺は日課であるランニングを終え、いつも通り近所の川沿かわぞいに出向くと、同じく日課である剣の修行をしていた。


 なぜ、川沿かわぞいかというと、修行が終わったあと、すぐに汗を流せて便利だからだ。


 そして、剣の修行をしている最中、ふとみょう違和感いわかんを覚えた。


 毎朝見ている光景に、なにか違う物が──、"異物"がうつんだような……。そんな感じだ。


 一旦いったん、剣の素振すぶりをやめ、周囲しゅうい視線しせんを走らせる。


 すると、俺から前方ぜんぽうやく五〇メートル程の位置に、昨日きのうまではなかった物が顕在けんざいしていた。



 ─────アレは………"剣"、か……?



 そう、抜き身の剣があったのだ。


 それも、巨大な岩石がんせきさるというかたちで。


 普段ふだんはなんにもない場所に、巨大な岩石がんせきと、それにさった抜き身の剣。


 もちろん、興味きょうみがないハズがない。


 すぐに近づいてみる。


 そして、近づいてゆくにつれ、徐々じょじょにその全容ぜんようが見えてきた。


 ───これは…………すげぇな。


 とんでもない業物わざものだろう……。


 その剣は素人目しろうとめの俺が見ただけでもわかるほどの、途轍とてつもない業物わざものだったのだ。


 所謂いわゆる長剣ちょうけんに分類されるモノ。


 青空のごとみ切った、見惚みほれるほど綺麗キレイ蒼色あおいろ刀身とうしんをしている。


 それはまるで、闇夜やみよに光り輝く星そのものかのような、


 そんな印象いんしょうを受けるほどに、神々こうごうしい存在感そんざいかんのようやモノがあった。


 「──というか、

 なんでこんなとこに剣がさってんだよ……」


 少なくとも昨日きのうまでにこんな物はなかったし、あったとすれば、少しは村で話題になっているはずだ。


 だがしかし、俺が知るかぎりではあるが、村で先日せんじつにそんな話題わだいがっていなかった。


 ということは、突如とつじょとして川沿いココに出現したとしか思えない。


 それも、"何らかの現象げんしょう"によって、だ。


 ……しかし、それよりも、



 「これは……、

 本当に、

 美しいな……」



 俺は思わずその美しさにかれてしまい、蒼色あおいろ長剣それれてしまう。


 すると、次の瞬間────



 〖──ふふんっ、

 魅力みりょくづくとは、

 おぬし

 わかっているのだっ!〗


 「うぉあっ!?」



 突如とつじょとしてひびいた機械的きかいてき女声おんなごえ


 それにおどろいたことで、反射的はんしゃてきに手をはなして数歩後退すうほこうたいしてしまう。


 な、なんだ……っ!?


 急に、声が聞こえた……?


 それも、のう直接ちょくせつ、語りかけてくるような……。


 俺が混乱こんらんしているあいだにも、その声のぬししゃべり続ける。



 〖……むぅ?

 何をおどろいておるのだ?

 おぬしかられてきたのであろう?〗


 「……へ?

 も、もしかして……本当に剣がしゃべってんの、か……?」



 そ、そんな馬鹿ばかな……。


 古今東西ここんとうざい、剣がしゃべったなんて今まで聞いたことがないし、ありえない話だ。


 そう、ありえないハズ、なのだが────……



 〖ふふんっ、

 そうなのだ!

 は剣なのだ!

 よろしくなのだー!〗


 「は、はぁっ!?

 ままま、マジか!?

 本当に剣がしゃべってる────!?」



 オイオイ、マジかよ……。


 これは驚愕きょうがくどころの話じゃないぞ……。


 俺は目前もくぜんの剣に対して警戒心を強めるが、それをさとらせないように平常をよそおう(※できてない)。



 「お、お前は、一体何者なにものなんだ……っ?」



 緊張からか、若干上擦じゃっかんうわずってしまった声で会話をこころみる。


 すると、



 〖何者なにもの

 とはのことなのだ……?

  ふぅむ。

 ──まぁ、そんなことはこのさいどうでもいいのだ!

 まずはをこの岩から抜いてみせるのだ!

 ここは窮屈きゅうくつで、もうあきあきなのだー!〗


 「えぇ……?

 結局けっきょく教えてくれねぇのかよ……。

 ──うし。

 なら、お前を抜いたら教えてくれよ?」


 〖…………ふふんっ、分かったのだ! 

 もしも抜けたら教えてやるのだ!〗


 「よし、決まりだ。

 行くぞ───!」



 たがいに約束をわした俺は、目前もくぜんにある岩石がんせきから剣を引き抜こうとする。


 そして──────



 「ほれ、抜いたぞ。

 これでどうだ?」



 いきおいよく『シャラン』という軽快けいかい音色ねいろを鳴らしながら、その剣を引き抜いた。


 お、おぉー……。


 案外あんがい簡単かんたんに抜けたな。


 もっと重いかと思ったんだが。


 すると、予想外よそうがいな結果におどろいているような声音こわねで、俺の手におさまる剣から返事がかえってきた。



 〖………………まさか、本当に抜けるとは思わなかったのだ……。

 ──これはすごいことなのだ!

 運命の出会いなのだ!!〗


 「運命の、出会い……?」


 〖そうなのだ!

 本来ほんらいならば、おぬしのことを抜けないと思っていたのだ!

 しかし、結果はこうして抜けたのだ!

 しからば、お主はの ″契約者けいやくしゃ″ となったのだ!

 これからよろしくなのだーっ!〗


 「は、はぁ!?

なんでぇ────────!?!!」



 なぜか引き抜いたら勝手に契約けいやくさせられたんだが!?


 ……まぁ、あんな口車くちぐるまに乗せられた俺も俺で悪いんだけどよ……。

 それにしてもあんまりだろ!!



 「──お、おい!

 契約けいやくするなんて聞いてねぇぞ?!

 っていうか、契約けいやくってなんなんだよ!?」


 〖……?

  でも、を抜いたのはおぬしなのだぞ?〗


 「そ・れ・は!

  お前が岩石ここから抜いたら教えてくれるって言ったからだろ!?」


 〖ふふんっ、それより、とっととおぬしの名を教えるのだ!〗


 「お前さっきから俺の話聞はなしきかなすぎじゃねぇ!?」



 こ、コイツ……っ!


 引き抜いたら勝手に契約けいやくさせられるし、人の話は聞かないしで……。


 もう、メチャクチャだぁ……。


 あきれて物が言えない俺を置いて、なおも目の前のコイツはしゃべりかけてくる。



 「〖それで、おぬしはなんと言うしょうするのだ?〗」


 「はぁ、……………………『アスト』だ」


 「〖──!

 あすと、あすと、あすと……───あすと!!

 うむ! とてもイイ名をしているのだ!

 気に入ったのだーっ!〗」


 「ぉ、おう、それは…………ありがとよ。

 ──んで、お前は?」


 「〖ふふんっ、の名は──まるしあどわーず!

 〈星剣せいけんマルシアドワーズ〉なのだーっ!!〗」



 転瞬てんしゅん────────


 俺の手におさまっていたコイツ────、


 〈星剣せいけんマルシアドワーズ〉が、巨大な白光はっこうを周囲に放った。


 すると、目の前が一瞬いっしゅんにして白一色しろいっしょくへとめ上がる。


 結果、一時的に機能きのう停止シャットダウンする。



 「──っ!?!!

  な、なんだ……っ!?

  なにが──────!」



 俺は突然のことに手元の剣をを手放てばなすと、光から視界しかいを守るために両手で顔をおおかくした。


 やがて、徐々じょじょに光がおさまってゆくと、先程さきほど機械的きかいてき女声おんなごえとは打って変わって、幼く、可愛かわいらしい声が耳朶じだを打った。


 「ふふんっ、これで契約けいやくは完了したのだ!

 あらためて、これからよろしくなのだ!

 ────あすとっ!」


 その声にられ、ゆっくりと目を見開みひらく。


 最初に視界しかいうつったのは、あお煌々こうこう六芒星ろくぼうせい耀かがやく、自身の左手のこう


 ──そして、コチラに燦然さんぜんとした笑みを振りまく、一人の"幼女"だった。



 ────────はぁああああああああああああーーーーーーっっっっっっ?!!!!!

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