魔王に殺されたらいきなり転生して過去に戻った件~助けられなかった仲間を今度こそ助ける~

@1ya12ma2to

俺は魔王に殺されたはずだった

「はぁ、はぁ…」

「冒険者とはこんなものか…」

まずい。こんなはずじゃなかったのに。

俺の前にいる魔王は退屈そうにしている。

何でいきなり………

俺達はいつか魔王を倒すために今日も仲間達と

クエストを受けていた。

ミッションも終わり、後は戻るだけとなった

瞬間に奴は現れた。

「ノイル!逃げろ!」

「逃げるわけにはいかない……!」

仲間の一人のロクにそう答える。

仲間は四人いた。

ロクと俺以外死んだ。

俺を庇って。

「俺が逃げたら全部無駄になる。

 あいつらの命が無駄になる…!」

「悪いがお前に用はない。邪魔をするなら

 殺すぞ」

「くそ!アイススピアー!」

「ふん……無意味な攻撃だな」

ロクの攻撃を意図も容易くよける。

俺もロクも瀕死だ。攻撃は当たらない。

「面倒くさい。力の差を見せてやろう」

まずい、奴の魔力が増えてきた。

このままでは俺もロクもやられてしまう。

「待て。俺を殺してロクを見逃してくれ」

「おいノイル!」

「こいつは関係ない。俺の冒険に

 ついてきただけだ」

どうにかしてロクを助けなければ。

「ふむ、いいだろう」

「ああ、頼む」

「まずは、氷の小僧からだ!」

「え…」

「黒炎!」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!」

「やめろ!」

仲間が目の前で死んでいく。

俺が弱いせいで。

俺が油断したせいで。

俺のせいで。

「やめろぉぉぉぉぉぉぁぉぉ!」

「冷静さをかいた雑魚に興味などない。

 死ね。黒炎」

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

俺のせいで仲間が死んだ。

こんなことになるなら

もっと鍛練するんだったな。

このとき俺は魔王の攻撃によって

ロクの言っていた事をすっかり忘れて

しまっていた。

『お前が死んでも俺達三人で作った転生魔術

 で復活するからな。まぁイレギュラーが

 起こるかもしれんけど大丈夫だろ』

聞き逃していたが聞くべきだったな。

イレギュラーとやらを。




☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆




「おい、ノイル。早く起きな」

ん、なんだ。久しぶりに聞く声だな。

「ここは?」

「何寝ぼけてんだい」

「んん?」

俺は確か死んだはずだ。

なんだ走馬灯でもみてるのか。

「早く飯食うよ」

「あ、ああ」

走馬灯にしては意識がはっきりしてるな。

さて、整理しよう。

確か俺はクエストを受けているときに

魔王に遭遇したはずだ。

そして、魔王にやられたはずだ。

だが、記憶が正しければ今は幼少期のはず。

さて、どうしたものか。

「おい、フォード。俺は今何歳だ」

「今日はどうしたんだ、

 いつもより面倒くさいな」

「いいから早く言え」

「はいはい。お前は今は十歳だ」

前の俺は20歳だったので十年前か。

「急にどうしたんだい。

 怖い夢でも見たのかい」

「子供扱いするな」

「ふん、子供の癖に」

さっきから会話しているこの女はフォードという名前だ。

長い赤髪をポニーテールにしている

気の強そうな女だ。

顔のパーツがしっかりしているので黙ってれば

美人なものの豪快な性格とばばくさい喋り方で

全くモテなさそうだ。

これが宝の持ち腐れと言うんだな。

「あんた今変なこと考えていないかい」

「いいや、考えてないよ」

危ない、危ない。

勘の鋭さは健在だな。

「まあいいや。飯にするよ」

「ああ。今行く」

俺はベッドから出て二階を降りていく。

どうやら俺は転生してしまったらしい。

そういえばロクがそんなことを言っていた

ような気がするな。

だが、転生とは過去に戻るものではないはず

だったんだが。

まあそんなことを考えていてもしょうがない。

俺は一階の居間に行くことにした。




☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇☆◇




俺は今フォードの作った飯を食べ終えて

二階の自分の部屋にいる。

部屋には俺の好きな本がたくさんあるので

読書している。

だが、今は好きな本を読んでいるのではなく

魔法について書かれている本を読み漁っている

がそれといったことは書かれていない。

この世界は目の色によって得意とする

魔法が変わる。

緋の眼は火や炎系統を、蒼の眼は水や

氷系統を、翆の眼は風や回復系統を、白の眼は

どの属性も使える。

緋も蒼も翆も他の魔法が使えるが本職の奴らには遠く及ばない。

だが、白は人によって得意不得意は変わるが

すべて満遍なく使える。

何年もかかるが妥協せず訓練すれば、全ての

属性の魔法を使えるようになるため

最強の眼とされている。

そして、俺の眼は黒である。

そう、黒である。

どこの国の話を聞いてもどの本を読んでも

そんな色の眼を持った人はいなかった。

そしてこの眼はどの魔法も使えないのである。

何度も魔法の本を読み、構築を頭の中で描いた

が全く使えなかった。

それに、不吉な眼と呼ばれ俺は三年前の七歳の

時に親に捨てられた。

そしてフォードに拾われ今に至る。

だが、黒の眼しか使えない魔法があるのを俺は知っている。

『反・魔法構築』という魔法である。

この魔法は相手の使った魔法を分析し、構築、

そして相手の使った魔法の倍以上にして

放つ魔法である。

こう聞けば聞こえは言いかもしれないが、

この魔法を使うには全ての魔法を構築出来る

ようにし、なおかつ付与魔法も覚えなければ

いけない。

相手の魔法が当たるよりも早く分析、構築

しなければいけないのでハイリスク・

ハイリターンな魔法なのである。

俺の前世は、これを妥協し仲間達の魔法で

戦っていた。

だから、仲間が死んだ瞬間に俺の能力が

下がり、魔王にやられたのである。

だが、俺は今転生して時間がある。

前世は妥協したが今回は時間をかけて

訓練していこうと思う。

魔族が使う闇魔法も覚えなければな。

さて、では読書に戻ろう。

どうやら転生魔法は長年作られてきているらしいがどれも不完全で完璧な転生魔法は

作れなかったらしい。

それにロク達が作った転生魔法もイレギュラー

が起こり未来に行くはずが、こうして過去に

来てしまったらしい。

不幸中の幸いで記憶が消えることはなかったが

ここは過去で間違いないだろう。

なぜなら、死んだはずの俺の命の恩人が

まだ生きているからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る