第12話 帰宅部の指針 下
アルト劇場がその後1分くらいで終わった。
「よし、一通り自己紹介も終わったし、今日の活動の本題へと入ろう」
「活動とはなんですか部長」
「鳩、早まるな。今日の活動は、ずばり帰宅部の学習会!」
「「学習会?」」
僕としいたけは首を傾げた。
「うーん、まあとりあえず百聞は一見にしかずだ。席につけ」
「なに先生気取ってるんだか、このFランク風情が」
ここで言うFランクというのは、テストで赤点だった人のことを指す。
それと姫流之、さっきの自己紹介と打って変わってキャラ変わったな。
「部長にその態度はなんだ、よって、死刑!」
「罪重すぎませんか?」
「ジョークだよ、ジョーク、ハハハ」
しかし、ここはどんな人の悪口を言っても全て丸く収まる。
劇場やらちょっとしたジョークとかで、世界がみんなこんな感じなら、戦争や内戦も、起こらないのかな。
みんなは机へと座った。
一番前の教卓には部長、前の机にはアルト先輩と蘭舞先輩。
一番後ろは一年3人組だ。
「よし、今日の学習会というのは、主に鳩としいたけのためだからな!」
そう言い、部長が指を差す。
そして、学習会は始まった。
学習会といえど、いつも教室でする授業と違って、ホワイトボードには何も書かず、部長が自動的に話すといった感じだ。
「えっとまず今回、勉強するのはずばり帰宅部の指針だ」
え? こんな部活にも指針なんてあったんだ。
「まず鳩としいたけに聞こう、帰宅部の目的とはなんだ?」
そんなの一択しかないだろ!
「エロ本を売りさばく!」
「エロ本を設置する!」
いい終わったあと、しいたけと目が合った。
エロ本って設置してたの?
この時僕はそのことを初めて知った。
そしてしいたけも売っていることを初めてしっただろう。
「お前ら、そんなわけないだろ、そんな理由だったら確実に創部の許可もらってないわ!」
「じゃあ他に何があるのですか?」
「そうだそうだ!」
昨日来た時はここは帰宅部じゃなくてエロ本部じゃね? と思ったくらいだ。他に何があるのか教えて欲しい。
「帰宅部の目的とは、ずばり、みんなが安全に帰れるようにする。だ」
えー! 全く想像つかなかった。
僕は椅子から倒れ落ちそうになった。
エロ本設置したら逆に寄り道して安全じゃなくね?
警察に見つかったら間違いなく署に連れてかれるし、
「じゃあここでお前らに質問だ。小学生のころ、いつも誰と帰っていた」
「いつも、しいたけともう1人の男の子と一緒に帰ってました」
僕としいたけは見つめて頷いた。
「じゃあこの僕は誰と帰っていたと思う」
帰宅部の部長のイメージとして、やっぱりこれしか、
「ぼっち」
「1人ですね」
「参加者は、誰一人、来ま·····」
「アルト、やめろ! それ以上言うと僕が泉●イオンに来たみたいになるじゃないか」
アルトさん、ナイスボケっす。
一方女性陣は部長を、哀れな目で見ていた。
「気を取り直して、僕はみんなの言う通り、ぼっちだ」
結局ぼっちだったんですね。
「ぼっちという人種は基本、帰宅時が一番地獄なんだ。なぜなら登校時は集団登校なので、ぼっちを回避できる。休み時間は保健室やトイレで引きこもって本とかを読んでればなんとかなる。しかし帰宅時はそういうことが出来ないんだよ。隠れたくても、早くゲームしたいし、みんなより早く帰りたくても疲れるのは嫌だし、それを解決させてくれたのが、ずばりエロ本なんだ」
辺りに沈黙が続いた。
「部長、何か聞いてくると悲しくなってきます」
姫流之が引き続き哀れな目で部長を見る。
「私も」
「俺も」
「僕も」
「僕も」
そして、
「僕も」
聞いてくると悲しくなってくる。
「みんな、ここからのお話が重要なんだ、そんな哀れな目で僕のことを見るなよ、しょうがないだろ、3年生のときにクラス全員のリコーダーの上の部分舐めたらそれがバレて一気に友達減ったんだから」
「部長、それ以上は、もう」
「まあ、とにかくだな、エロ本というのは娯楽、ゲームをするのと同じくらい楽しいんだ。だから早く帰りたいけど、ぼっちだと思われたくない人には打って付けなんだ」
「それ? どこで読んでたんですか」
「木陰とかかな?」
今日は部長の余りにも悲しい話で部活が終わった。
「てか鳩としいたけ以外のお前らはみんなその話知ってるだろ」
「いや、何回聞いても哀れだなって、思って」
「俺も」
「僕も」
「私も」
「とりあえず今回の勉強会のまとめとして、帰宅部の指針はどんな人も楽しく帰宅できるようにする。だ、では解散」
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僕は家に帰った後、明日行ったら休日かと、気合いを占めた。
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