第22話夏の終わり
朝の食卓を囲む俺たちの顔はどこか固い。
涼音と並んで食べるのはまだ恥ずかしくて、さっきの事がフラッシュバックしてきてしまう。
心なしか朝食の味も薄く感じられる。
涼音はどうなのだろうか。
そう思って、隣に座る彼女の顔を見ると、目が合ってしまった。
「どうした......?」
「ううん。なんでもない......」
お互いの顔さえ見れないほど、緊張してしまっている。
「つ、つかさ?」
「なんだ?」
「そ、その、さっきの事は忘れてくれないかな?」
「うん......忘れることにする」
って忘れられるわけないだろおおおお!!!!
忘れるとは言ったもののいきなりキスだぞ!?
普通忘れられるか?
俺には無理だ......
だから、心のうちに秘めておく程度にはしておこう。
俺はそう心に決めた。
「忘れたからこのぎこちないのは無しな」
「う、うん分かった」
これだけでこの気まずさがなくなればいいんだけど......
俺の舌も少しづつ味を感じるようになったし、緊張感も取れてきた。
涼音の箸の進みも早くなっているし、少しずつ緊張も取れてきているのだろう。
そして俺も、空腹感が増しているのを感じて、箸を進めた。
◇◆◇
「二日間お世話になりました」
「いえいえ〜涼音も楽しそうだし良かったわ。またいつでも来てね?」
「ありがとうございます。それじゃあ」
「気をつけてね」
「おう、涼音もまた学校でな」
「うんっ!」
朝ごはんを経てある程度のぎこちなさが取れたが、ずっと居座っている訳にもいかないので、すぐに家を出た。
「お邪魔しました〜」
と手を振り、駅の方面へ歩いていく。
振り返ると、涼音の家は既に小さくなっていて、俺はまた、前を向いて歩き始めた。
賑やかだった二日間も終わって、家に帰ったらまた一人で寂しくなるなと思いながら、俺は歩くペースを少しだけ遅くした。
家に帰ると、何もない簡素な玄関が俺を迎える。
何か置いてみようかな......
あまりインテリアとかには気を使った事がなく、必要最低限の物しか置いていない。
部屋もそんなに広いわけでもないし。
でも、玄関ぐらいは物を置いておくべきなんじゃないかと思い始めた。
あまりに簡素すぎる部屋を見てそのうちインテリアでも買いに行こうと心に決めた。
それから一週間も経たずに新学期が始まった。
皆の話題は宿題に関するものばかりだ。
後は恋バナとか。
そして、俺の後ろの席にいる人を中心にその話が行われていた。
相変わらず花音は人気者のようだ。
その事に少しだけ寂しさを感じつつも短く感じるロングホームルームを終えて、そこで話された文化祭という単語に皆心を奮わせていた。
俺もその中の一人で高校初めての文化祭に興味が出てくる。
どんなことをするのかな......
「司!!久しぶりだな!!」
「風季かよ......久しぶり」
「なんだよつれねぇなぁ。なあ、司この高校って『告白祭』なるものがあるらしいぜ?」
「なんだよそれ。俺はやらねぇぞ?」
「まあまあほう言わずに......後ろのお姫様に告っちまえよ」
こんな小心者の俺に大観衆の前で告白出来るわけないだろうが......
「私......それ出て見ようかな......」
俺と風季は一斉に横を向く。
「「涼音?マジで言ってる?」」
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