第11話冷酷姫の看病

羊を何匹頭の中で思い描いただろうか。

百?千?そのくらいは数えていたように思う。


すると段々と意識が朦朧としてきて俺を夢の世界にいざなった。




◇◆◇




「東條くんの寝顔って案外可愛いなぁ」


その言葉の後にほっぺをつつかれたり、摘まれたりする。

姫モードに変化した黒瀬が俺の顔で遊んでいるらしい。


ちょっと触られてるのが楽しくて気持ちよかったからもう少しだけ、目を瞑ることにした。


黒瀬はほっぺを触るのをやめて耳たぶを弄り始めた。

弾いたりして、少しだけゾクッとした感覚が身体に走る。


その感覚に耐えれなくて俺は身体を起こした。


「おはよう、黒瀬」


「東條くん、おはよ」


窓から覗く日差しが背景になって煌々と輝いているように見える黒瀬は天使さながらだった。


あとは頭の上にリングがあったら天使としか思えなかっただろう。

俺は床に足をつこうとしたらグラッと視界が歪んでベッドに倒れ込む。


「あれ......」


「大丈夫?」


「多分、大丈夫だよ」


そう言ってもう一度立ち上がると身体には倦怠感があって、身体がだるく、鉛のように重かった。


「ごめん、やっぱり大丈夫じゃないかも」


俺は重い体を動かして体温計の入った棚まで移動して体温計を脇に挟んだ。

椅子に座って一分ほど待つとピピピと測り終わったことを告げる音声がなる。


「38度3分か......学校は休むしかないか......」


「その、ごめんね?私が来たせいで......」


「いや、別に黒瀬のせいじゃないよ。俺が昨日ソファで寝たのが悪いし、しかも風呂で冷水浴びちゃったから......」


「私なんか作るよ?」


美少女の手料理。ぜひ食べたい!!


「じゃあお願いしようかな」


「うんっ!東條君はベッドで寝てて!」


「ありがとう」


俺は大人しくベッドに入って、彼女の匂いが残っていることにドキドキしながら目を閉じた。




◇◆◇




「――じょうくん?」


肩をとんとんと叩かれる。


「ああ、ごめん」


「あ、起こしちゃってごめんね?お粥作ったよ」


「ありがとう」


そこには普通のお粥が出来ていた。

家があの惨状だったのでダークマターを持って来られるんじゃないかとヒヤヒヤしていたが料理は普通に出来るらしい。


俺は身体を起こして食べれる体制に移る。

受け取ろうと思ったが黒瀬はスプーンでお粥を掬ってフーフーと息を吹きかけて俺の口元に持ってきた。


「あ、あーん」


無理だよ!心臓が弾けとんじゃうよ!!


その言葉を実際に心臓が行おうとするように早く高く動き出す。

でも、黒瀬がこうしてくれているのを無下にしたくなくて、俺は心を決めてお粥を口に含んだ。


「おいしい......」


「良かった!もっと食べてね」


そう言ってまた黒瀬はお粥を口元に持ってくる。そのやり取りが何回も続いた。

俺はその度に心臓が高鳴って、緊張で早くなった。


血の巡りが良くなりすぎて代謝が良くなったのか、汗も少しずつ出始めてきた。


「黒瀬そろそろ行かなくていいのか?」


時刻は七時四十分。

すると焦ったように黒瀬は制服に着替え始めた。


「わぁぁぁ!!ここで着替えるなぁぁ!」


「ごめんなさいぃぃ!」


俺の目には完全に写って脳内に永久保存されてしまった。

すらりとしたくびれに綺麗なおへそ。白く透き通るような肌に蠱惑的な紫色の下着。

目を閉じても頭で考えてしまう。


――綺麗だった......


こんな様子で今週中ずっとやって行けるのだろうか......


俺は少しだけ余っているお粥を口に流し込んで、薬を取りに行こうと立ち上がる。

まだ身体は重たかったけど、お粥を食べたからが動くエネルギーは残っていた。

自分の部屋を出るとリビングで黒瀬と鉢合わせた。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい」


覇気のない声で送り出すと黒瀬は笑顔を浮かべて出ていった。

薬を飲んで、学校に電話をかけて休むという旨を伝える。


そしてベッドに入ると、甘い匂いと一緒に眠気も襲ってきて、目を閉じた。

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