中学から好きだった彼女とようやく恋人になったのに寝取られた俺…を救ったのは彼女の姉

こんぺいとう

第1話

 この夏、大学三年の俺は出入りしている研究室の助教授のお供で地方で催された学会に参加した。


 キャンパスに近いアパートを2日間留守にするけれど、世話焼きの彼女には「散らかしてる訳でもないし、掃除とかしなくてもいいからな」と言い含めてから出発した。それでもやりそうなんだよな。


 ***


 彼女との出会いは中学一年での入学式だった。同じクラスで、隣の席になったのだ。


 明るくて物怖じもしなくて、ちょっとぼけ…いやふんわりしていて、ウェーブのかかった髪の毛の印象と重なってとても可愛い人だった。彼女がいるとその場の雰囲気がとても柔らかくなった。


 俺は3月生まれで、早生まれな分小さな頃は同学年の他の子供たちとは体格の差もあり、引っ込み思案な少年だった。中学生になってもその性分は変わらずに内向的で、体格も小柄なままだったこともあってクラスでもなかなか友人は作れなかった。


 そんな俺にも彼女は区別なく話しかけてくれた。彼女のほんわりとしたペースに巻き込まれるうちに、周りの同級生たちとも仲良くなれた。男女とも気のいい連中だったのも大きいけど。そんな俺が彼女のことを好きになるのは時間の問題だった。チョロいともいう。


 とはいえ人気者の彼女とみそっかすな俺とは仲は良いとは言っても釣り合いはとれない、と自分自身がそう思っていたので告白なんて出来る訳もなかった。


 そのうち、彼女には小学校の頃からの初恋の片想いの相手が居ることを知ってしまった。二学年上の、バスケ部のキャプテンだった。幼なじみだそうだ。俺には彼女を応援するしかなかった。ぼっちになりかねなかった俺をすくい上げてくれたのは彼女なのだから。


 彼女はそのことを周りには隠していたが、俺には一目瞭然だった。一年生のバレンタインデイの前に思い切って彼女に「告白しないの?」と話してみた。「なななんで知ってるの」と驚かれた。「だって見てたらわかるじゃん…」と言うと「マジで…」とショックを受けていた。ずっと見ていれば判るよ。まあ俺くらいしかわかってなかったけど。先輩が卒業したら、幼なじみとはいえなかなか会えなくなるだろうし、今告白しなくてどうするの?と告げると、彼女は告白を決意した。そして彼女の恋は実った。俺はこっそり泣いた。


 中学二年も、そして三年も彼女とは同じクラスになれた。


 一年生の頃の俺は彼女より背が低かったけれど、三年にもなるとさすがに少し追い越せた。少しだけど。彼女も結構背が高いのだ。変わらず彼女とは仲良いままで、親友ポジションになっている。俺は勉強は出来てほぼ学年トップを維持出来ていたのと、彼女との関係のおかげで女子に対して変に構えず且つ近寄りすぎず、そして下心だとかエロい目線とかも感じさせないおかげか、そんな余裕があるところが好感を持たれて地味だけどモテないこともなかった。ルックスは平凡なんだけど。


 とはいえ、俺が好きなのは彼女だった。諦められないというよりは、単にずっと好きだった。そのうち忘れられるだろうと思っていても忘れられなかっただけなのだ。だって、学校ではほとんど一緒にいるのだから毎日惚れ直しているような状態だったし。


 中学三年生にもなると体も大人になり始める。彼女もその例に漏れず出るところは出るようになる。ほんわりした彼女の事なので隙が多くて俺がフォローすることが多かった。脚をくずすな!とか。生理の悩みとかブラのサイズとかでも相談された。「彼氏に相談しろよ!」というと「は、恥ずかしいから…」と言うし。そして、高校二年の彼氏との初体験を済ませたことも知った。(これは様子を見てたらすぐわかった。俺は何も言わなかったが、俺の気まずそうな様子で俺が気付いたことに気付いて、なんでわかるの〜!と怒られた。)正直死にたかった。


 彼女も勉強は出来る方だった。彼氏の方は偏差値は低いけれどバスケ部が県内で強豪の私立校に進学している。最初は彼女はその高校に進学するつもりだったが、彼女の偏差値とはかなり離れているために教師や両親はそれを許さなかった。結局、市内で最も難関の公立校を受験して合格した。俺と同じ高校だ。俺は普通に成績に見合ったところを受験しただけだが。正直、もう近くで見ているのはつらいのでそっちの高校に行けよとも思っていたが、それでもやっぱり同じ高校に行けたのは嬉しかった。


 高校でも同じクラスだった。奇跡かよ。


 高校には、一学年上に彼女の姉がいた。もちろん中学時代も同じ学校ではあったけれど顔見知り程度だった。彼女の親友ポジションとはいえ彼氏がいる女子の家に遊びに行くのははばかられたので、彼女の家族とはほとんど面識はなかったのだ。


 彼女の姉は彼女とはそれほど似てはいなくて、彼女より結構小柄で髪型はもいつもひっつめ髪で眼鏡で、ほわっとした彼女と比べるとどちらかというとしっかり者だった。姉がしっかりしていたので妹がほんわりしたのかもしれない。あまり表情は出さない方だったが時々はにかむ様子は彼女と姉妹だなあと感じさせられた。


 彼女の姉とは部活が同じだった。数学部という部活で、数学検定の合格を目指したり大学レベルの数学を学んだりしていた。彼女はどちらかというと化学が好きなようで化学部に属していた。


 彼氏がいる女子の親友というポジションの男子に対して最初は「なにそれ…」と警戒していた彼女の姉だったがだんだん信頼してくれるようになった。そのうちどうも俺が彼女を好きなことを判ってしまったらしく、ぽんぽんと俺の肩を叩いてきたりした。だんだん俺を弄る事が面白くなってきたようで、彼女の姉とも親友というか師弟というかよくわからないけどそういう間柄になっていた。


 彼女に「お姉ちゃんが好きなの?」とか聞かれた時は死にたかった。


 高校二年に進級すると、クラスが文系理系に分かれる。俺も彼女も理系だし、三年生の彼女の姉も理系だ。彼女の彼氏はバスケの推薦で関東の大学に進学したそうだ。プロも視野に入れているらしい。俺は敵わないな…とあらためて思う。彼女の姉もその彼氏の事は子供の頃から知っているけれど、あまりウマは合わなかったようだ。これまで彼女の家に彼氏が来ても挨拶するくらいで。


 そして、事態が動いてしまった。


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