121.主人公の要素
数ヶ月前にノートパソコンがとうとうギブアップしたので、思い切ってWindowsからMacに変えた。色々と動きが違う部分があって面倒である。キーボード周りはカスタマイズすれば良いのかもしれないが、そういうのはあまり趣味ではない。とりあえず慣れるためにこうしてエッセイなど書いている。
最近会社から「リーダーとして部下をまとめあげろ」的なことを言われた。どうするんだと具体的に聞いてみたら「個人の進捗を細かく管理して、必要に応じて報告する」という、具体的って言っただろうがよ、みたいな返事が戻ってきた。大体、それを私に求めるのは人選ミスなのではないか。部下を手取り足取り優しく導いて進捗一つ一つを管理するなんて方法、今まで取ったことがない。そもそも細かい進捗というのは場合によっては遅れの元である。現場でも「はいはい、これを五時までにやればいいんですね。オッケー、やってやるけど静かにしてろ」というノリでやっている。
そもそもプロジェクト毎に「色」というのは違うので、会社も具体的な例は出せないのだろう。だからなんとなく世間一般で求められるものを私に言ってきたに過ぎないことはわかっている。多分私も同じ立場なら部下に「なんかこう、全体的な進捗を取りまとめて、場合によっては上に報告してくれ」と言う。「リーダーとはこうあるべき」みたいなぼんやりした理想像というか、そういうものが世間にはあるのだろう。
最近、某配信サイトの動画を見ていた。芸人が好きな相方を選んで、即興コントを繰り返してどれが一番優れたコンビかを決める、という内容である。先に言っておくと私はお笑いが好きである。コントでも漫才でも数分の間でとんでもない設定やドラマがあるので、見ていて面白い。
その動画もおすすめに出ていたので軽い気持ちで見た。そうしたら物凄かった。面白いとか面白くないとかそういう次元ではなく、「主人公」がいた。ベテランのハイテンション不思議系芸人に指名された堅実なツッコミ。最初に組み合わせを見た時は「なんだよイロモノ枠か」ぐらいの冷めたテンションで見ていた。
コントが始まるたびにベテランの無機動なボケに振り回され、ギブアップすらしようとするツッコミ。ステージ毎に観客により投票が行われ、最下位が消えていくシステムなので、これは早々に消えてしまうのではないかと思っていたが、なんとか勝ち上がっていった。そもそも好き勝手やっているように見えるベテランが凄かった。天才すぎた。泣きそうになりながらそれに食らいついていくツッコミを見ていたら、「逃げたい」と言っていたのが「俺のせいで負ける」みたいな悔しそうな感じになってきた。途中で物凄く追い詰められるシーンがあったが、そこではもはやMCもライバルも観客も応援モードになっていた。
主人公だ。これは間違いなく主人公。
自由奔放だけど百戦錬磨のベテラン傭兵と組まされた新人傭兵が、最初は文句を言っていたのに戦いの中で成長していくやつだ。それに違いない。異論は認めるが意見は覆さない。
では「主人公」とはこの場合なんだろうか。普通の小説や漫画であれば、最初から主人公にはスポットライトが当たっている。華があるとかそういうことではなく、そもそもの世界観が主人公を中心にして展開されている。しかしこの場合はそうではない。彼は最初から主人公だったわけではない。十数名のうちの一人である。そして当たり前だが、動画だって彼を主人公と言っているわけではない。受け取り側が勝手に解釈しているに過ぎない。
しかし彼は主人公の要素を持っている。持っているので主人公であると認識できる。実際、観た後にネットを調べたら「彼が主人公だった」という旨の投稿がたくさんあった。
彼を主人公たらしめる要素は色々とあったが、やはり決定打は「観ている人が応援したくなった」というところだろう。主人公というのは基本的には読者や視聴者の応援を受ける身である。世の中の創作には色々な主人公がいて、善人だったり悪人だったりするが、応援できないようなキャラは主人公にはなれないのだと思う。失敗しないスーパードクターも、審査員に毒キノコを食わせる中華料理人も、制拳こぶし割りする学ラン日本刀も。
と、ここまで書くことによってMacの変換などにも少し慣れてきた気がするので、駄文は打ち切ることにする。
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