88.大晦日の挨拶

  仕事納めという言葉が飛び交っているが、今日も迷わず仕事である。寒い中、都会の中にある喫煙所で煙草を吸いながら書いている。

 先日、部長を筆頭にチームの殆どが年末年始出勤であることを告げたら、後輩たちが引いていた。「仕事納め関係ないじゃないですか」とか言うので、先輩として爽やかに言い放った。


「大体、なんで十二月に仕事納めしないといけないんだよ。年度末は三月だろ」

「おかしいな、一瞬正論に聞こえるんですよね」


 惑わされないで強く生きろ。お前の目の前にいるのは、年末年始の仕事に抵抗がないどころか、仕事がないと戸惑いを隠せない社畜だ。

 まぁでも、年末年始は手当が付くので結構良いと思う。街は静かだし、電車も空いている。飯を食う場所さえ確保出来れば、そう悪いものでは無い。基本的に寒いから徹夜をしていても目が冴える。

 そんなことを後輩に吹き込んでいたら、部長に怒られた。彼らは健全に明るく育てたいらしい。酷い。私だってこんなに健全で明るく生きているのに。


「明るいかもしれないけど、協調性ってもんがないだろ」

「そんなことないですよ」

「じゃあ大晦日の作業の件はなんて言われた?」

「時間を守ってくれるなら自由にやっていいって」

「そういうところだよ」


 誤解だ。協調性はある。あるけど、使うタイミングが少ないだけだ。作業の件だって、皆忙しいのと、私も一人で作業出来るから「勝手にやってて」みたいなことを言われただけである。冷静に考えると、なんだこの指示。私は放し飼いの馬か何かか。勝手に草食って走って帰ってこいと言うのか。


 だが今更誰かに口を出されても、それはそれで困る。一人でやる時と複数でやる時は段取りが違うので、直前に変わるとミスを誘発する。だからもう大晦日まで来てしまったからには、言われた通りに自由にやるしかない。


 そんなわけで煙草も無くなったから、諦めて仕事に向かう。寒いと一本吸うのも辛い。しかし煙草はやはり寒空の下で吸うのが美味い。今日は病院に入ったら暫く出てこれないだろうから、この味を噛み締めて向かうことにする。


 それでは、今年もお世話になりました。

 来年もエッセイは書いていこうと思います。皆様にもよい年でありますように。


2021.12.31 淡島かりす

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