24.手抜きは正義

 世の中、冷凍餃子とか唐揚げとかが話題である。手間をかけたほうが良いものが出来るという謎理論だ。正直さっぱり理解が出来ない。そもそも世の中の親が総じて料理が得意だという前提であの話は進んでいると思う。

 手間を掛ければ良いものが出来るというのであれば、うちの母親の作った料理はそれはそれは手間がかかっていた。何しろ製作期間が三日である。畑で育てた自家製ほうれん草を三日三晩とろ火でコトコトと煮詰めたポタージュ。大変手間がかかっている。

 これで味が良いか、一日だけ出されるか、あとは一緒に食卓に出されたのが白米と味噌汁でなければ、まだよかっただろう。美味しくないポタージュを三日間白米と共に食べたことを忘れはしない。「これでフランス風よ」とか言われて掛けられた生クリームがトドメを刺したのも覚えている。


 舌にはまぁまぁ自信があるが、料理は非常に苦手だ。苦手なのにこの前オーブンを買った。電子レンジが光る間接照明になってしまったからである。クルクルと光りながら回る冷たいご飯を見て、何となくオーブンレンジを買おうと思い立った。

 安いオーブンレンジを買って、ちゃんと白米が温かくなるのを確かめて、さて困ったのは次の使い道である。これでは電子レンジを買うのと何ら変わらない。オーブンで何が出来るのか調べてみたら、お菓子とかグラタンとか出てきた。他にも「適当に野菜敷き詰めてチーズかけて焦げ目がつくまでオーブンで温めます」みたいなのも出てきたが、これは後回しだ。なんだ、焦げ目がつくまでって。どのぐらいで焦げ目が付くんだ。そもそも焦げ目って何だ(錯乱)。

 数量とか時間とかが決まっているほうが楽なので、お菓子に挑戦することにした。こういうのは妹が得意なので、気になったクッキーのレシピと共にメッセージを送ってみると、数分後に返答が来た。


「お前みたいな不器用天元突破には難しいので、犬でも出来るレシピに作り替えてやる(要約)」


 レシピに「初心者でも簡単!」と書いてあるものを選んだのに、妹の判定ではNGだったらしい。そんなに不器用じゃない、と反論しようと思ったがオーブンレンジの入っていた段ボールを解体するときに出来た指の傷が痛かったので甘んじて受け入れた。決して認めたわけではないが、より簡単なレシピがあるならそっちのほうがいい。

 というわけで、近々クッキーとやらに挑戦する。何事も挑戦(と他力本願)が大事である。


 

 

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