3.断捨離を試みたが駄目だった話
SNSを眺めていると、「これを機に断捨離しました」みたいな内容が多かった。なので私も断捨離というものを試みた。
開始五分で気がついたことは「あれ、ドライヤーとアイロン捨ててないじゃん」だった。二年ぐらい前に買い替えたのだが、前のを捨てていないことを思い出した。断捨離どころじゃない。捨てなきゃいけないものが捨てられていない。
埃まみれの電化製品を棚の隅から取り出して、一先ずゴミ袋に入れた。世の断捨離本も「まずは袋とか箱に入れとけ」って書いてあるので間違いないはずだ。でもこれは断捨離ではない。普通にゴミ捨て。
服を捨てる人も多いようなので、それに倣ってクローゼットを開けてみた。開ける時に気がついたが、部屋に桐箪笥が鎮座していた。これは一年ほど前に着物を入れるために買ったのだが「そのうちクローゼットの中にいれよー」と思ってそのまま放置したのである。
とりあえずこれをクローゼットの中に入れよう。目的を持てば人は前に進める。
服の量は、そんなに多くはないと思う。だが仕事用とプライベート用が分かれてしまっているので、それなりに量はある。一つ一つ吟味しながら捨てていくと、ゴミ袋一つ分になった。
プライベート用の服は知人曰く「個性の塊」なので、間違っても仕事用と併合出来ない。多分捨てたところで新しいものを買ってくるだけなのは想像ついたので諦めた。あと仕事用の衣類については、ネットでは「三着で着回し!」とか書かれていたが、出張のある身では無理なので諦めた。
つまり捨てたものは「捨てたくないけど着れなくなったもの」である。酔っぱらった勢いで買ったゴス服とか、新人の頃のブラウスとか。悲しいのであまり掘り下げないことにする。あと揃ってない靴下も結構出てきたが、怒らないので帰ってきて欲しい。私は君たちの帰りを待っている。
なんとか箪笥をクローゼットにぶち込むと、次に趣味のものが目に入った。本とかゲームとか、それに付随するグッズの山である。
これが捨てられるぐらいなら、そもそも買ってない。私にとっては生きる糧みたいなものだ。絶対捨てない。これを捨てるぐらいなら三万円のベッドを窓から投げ捨てる。
というわけで丁寧に整理するだけに留めた。十年掛けて集めたゲームのなんと美しいことか。特に初回限定版の愛くるしさは例えようもない。
結果として断捨離は失敗した。断捨離するには雑念が強すぎた。欲望も多すぎたし、万物への愛が溢れすぎた。仕方ない。これも私の持ちし運命である。
ただ、捨てなきゃいけなかった物は結構捨てたので、部屋の整理という意味では成功だ。アイロンは不燃ゴミ。覚えた。私はもう五号のブラウスは着れない。これも悟った。悟ったので反省はしない。人は食べて生きていく生き物である。
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