第4話:初めての共闘はモグラと
さあ、異世界転生してから初の戦闘である。
相手は、中々屈強そうな男二人。武器は、どっちも剣。
対する俺たちは、土を操れる俺に意外と戦闘能力の高そうなモグラ一匹。
「:@!::^@:」
「:@!::^@:」
人間が何か唱えると、二人の体が光る。
『何したんだ?』
『スキル、《身体強化》を使ったんやと。来るで』
モグリンがそう言うと同時に、一人がモグリンに切りかかる。
モグリンは、迫る剣をその頑丈な鱗の生えた手で弾き、相手の顔面にカウンターを入れる。その姿は、まさに戦いに慣れた獣と言うに相応しいほどである。
『お前、強いんだな』
『一応、この世界で一番恐ろしい森で修行したんでな』
頼もしい。
ただ、モグリンのその攻撃は命中したが命を奪うほどの傷は与えられていない。
『さすがに死んでねぇか』
『ちょいと手加減しすぎたみたいや、次は殺すで』
そう言うとモグリンは、両手を構えて爪を立てる。
かっけぇ。
完全に戦闘態勢に入ったモグリンを見て、再び男がモグリンに攻撃を仕掛ける。
――ガキンッ!ザクッ!!
モグリンも、先ほどと同じようにしてカウンターを入れる。
今度は、確実に死んだだろう。
モグリンからのカウンターを入れられたそれは、首を大きく抉られて倒れた。
『モグリン!』
相方を殺され少し動揺した素振りを見せるも、もう一方の人間がモグリンの背後から攻撃を仕掛ける。
『――グハッ!』
モグリンは、背後からの攻撃を咄嗟に振り返り防ぐ。しかし、その剣の勢いは止まらず、モグリンを壁まで投げ飛ばす。
壁に叩きつけられたモグリンは、そのまま壁をずり落ち、次の攻撃を躱すことも受け止めることも出来そうになかった。
俺がやらなければ、恩人を見殺しにすることになる。
『それだけは、出来ない!スキル、《土操作》』
俺は、モグリンに追い打ちをかけようとする男の体に植物の蔓のように土を巻き付かせる。
動きは止めた。だが、視界に倒れている人間の死体がちらつき、俺の判断を鈍らせる。
『鉱石はん、ナイスや!』
殺さなきゃ、殺されるんだ。そう思いスキルを発動させようとした瞬間、動けずにいたはずのモグリンが飛び上がり、拘束されている男の首を両手の鋭い爪で掻き切る。
戦闘が終わった。結果は、俺たちの勝利。
そう自覚すると、張りつめていた緊張が切れどっと疲れたような感覚が襲った。
『はぁ、疲れた……。ていうか、二人ともモグリンにやってもらっちゃったな』
『最後の一人は、鉱石はんの助け無しには出来んかったで?』
『ところで、こいつらなんだったんだ?』
『確かに、ここは廃鉱やから滅多に人間が来ることはないはずなんやけどなぁ』
ここで俺は、ここが洞窟ではなく廃鉱であることを知った。
『とりあえず、一件落着って感じか。――ッ!』
完全に安心していた。人間は、一度死んだら終わりだと思っていた。しかし、今俺の視界にあるのは、死んだはずの男とその男の剣に貫かれたモグリンの姿であった。
『モグリン?!』
モグリンはもう、動かない。即死だ。
『……そうだ、そうだよな。異世界で自分の常識に安心した俺がバカだったんだ』
モグリンが死んだ。その絶望よりも、殺したから死んだはずだ。そう思っていた自分自身に苛立っていた。
『俺たちが殺ったんだ、お前も殺るよな。じゃあ、次は俺の番だよな?』
目の前の男は、モグリンが刺さった剣を捨て鶴橋を持ち構える。
『スキル、《土操作》』
俺はまず、逃げ道を塞いだ。
『スキル、《膨張》《ボディーチェンジ》』
俺は、今度は躊躇無く殺すためにスキルを発動させた。
俺が発動した二つのスキルは、俺の体をモーニングスターの鉄球のような鋭いトゲの付いた球体にした。
複数のトゲが、人間の体に突き刺さる。
聞き取れない男の叫び声が廃鉱内を響く中、俺はしばらく何も考えられないでいた。
二人の人間と、恩人であるモグリンが死んだ。
俺がそんな出来事から立ち直るのに、あまり時間は必要なかった。
あのあと、俺はすぐにスキル、《土操作》で死体を埋葬した。
そして、今回の戦闘で得たスキルを確認した。
現在の所持SP126
取得可能スキル一覧
《身体強化》−7SP・自身の身体能力を上げる。
《効果倍増》−7SP・バフスキルの効果を上げる。
《エクセレントトークセンス》−5SP・人間な
どの言語が分かるようになる。
《墓掘》−5SP・土、岩を簡単に掘ることが出来る。
《アンチデス》−10SP・一度だけ死を免れることが出来る。
《アンチアンデッド》−4SP・アンデッドからの攻撃の耐性を得る。
《エフェクティブアンデッド》−4SP・アンデッドへの攻撃を強化する。
《聖光使者》−15SP・¥@@;・・。
《人化》−9SP・人間の体を得る。
俺は、適当に全部を習得した。
『ん?待てよ、《人化》!』
俺の精神は、どこかおかしい。そんな自覚とともに、今は前向きな気持ちになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます