第3話:ヒーロー!その名はモグリン

現在、時刻不明。

 俺は、広いのか狭いのかも知らない洞窟内を走っていた。それは何故か。

 思い出すこと10分前、俺は隠れる場所もなくただ見つからないようにと祈っていた。

 すると、俺が通ってきた方からだんだんと声が近づいてくる。そして、案の定見つかった。俺は、いつかに見たゲーム“アカオニ”のトラウマシーンを思い出し、不意にベルトコンベア式移動法で走り出していた。そこからは、追いかけてくる鶴橋を担いだ二人の人間と、俺のいつかくるかも知れない限界に怯えながら走りまくり、今につながる。

「@::¥@@!!」

 おそらく、「まちやがれ!!」的なことを言っているだろう人間は、俺のスピードに今にも追いつこうとしている。

『このままじゃ埒があかない!やるしかねえか?』

 俺には今、一つ案があった。

 それは、土操作で通路を塞ぐこと。しかし、この状況下でそれをやって、タイミング悪くあの人間に当たってしまわないか。そう考えると、俺の思いつく唯一の案が躊躇われた。

 

 ――ガンッ!


 急に全身に衝撃が走る。

 行き止まりだった。

 俺が優柔不断に考え事をしながら走っていたため、唯一の分かれ道のはずれを引いたらしい。

『終わった……』

 鶴橋を構えた男が迫る。

『せっかくの異世界、ここで終わるのか……』

 男が鶴橋を俺めがけて振り下ろす。


 ――ガツーンッ!

 

 その瞬間、全身に今までに体験したことのないほどの激痛が走る。

『――ッァ゛アアアアアアア!!』

 あまりの痛みに、念話で悲鳴を上げる。

 痛すぎる、これは死ぬ。

 そんなことを思っているうちにも、目の前の男は二撃目を打ち込もうとしている。

 次にまたあの痛みが来る、絶対死ぬ。

 俺はもう、死への恐怖で二撃目を防ぐ術も逃げることさえ思いつかない。

 男が、鶴橋を振り下ろす。


 ――ガキンッ!


 死を覚悟した。

『いッたく……ない?』

 予想外の出来事に、視線を男の方へ向ける。

 そこには、男と対峙するモグリンがいた。

『ワシの硬さ、なめたらアカンで?』

『モグリン?!』

『もの凄い悲鳴が聞こえたんで来てみたら。鉱石はん元気そうで!』

『元気なもんか!でも、助けてくれてありがとう』

『縁は大事にするのが、ワシの人生のポリシーやからね。それよりも、あちらさんやる気みたいやで?』

 モグリンの言うとおり、人間の方を見ると二人とも鶴橋を置き、腰の剣の柄に手をかけている。

『鉱石はん、戦えますか?』

『ああ、大丈夫だ』

 殺されかけたんだ。もう俺の中に、この人間たちを殺すことに躊躇いはない。

『反撃だ!』

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