Sランクとの別れ、そしてSSランクとの出会い




「それじゃあ、行ってくるね」




レーネ、ゼル、コトハの3人が支度を済ませ、迎えの馬車に乗り込む。




「本当に行っちゃうんですね…」




そう長くないとはいえ、しばらく会えなくなると思うと急に寂しく思ってしまい、アスタルテは名残惜しそうに3人を見上げる。





「そんな顔をしないでおくれ、なるべく早めに戻ってくるさ」




レーネはそう言って馬車の扉を開くと、優しくアスタルテのおでこにキスをする。





「へ…?」

何をされたのか理解出来ず素っ頓狂な声を出してしまったアスタルテだったが、数秒経って理解した途端に顔が真っ赤に変わる。




「ちょ、レーネさん…!」

「あー!レーネてめぇ何しやがってんだ!」

「……ひどい…ずるい…恨めしい…」




アスタルテの言葉の後に、ゼルとコトハから怒りの声が上がる。




「しばらく会えないんだ、これくらい良いだろう?」

「……なら…私も…」





そう言うとコトハは馬車から降り、アスタルテの右頬にそっと口を付ける。




「こ、コトハさん!?」

「……ふふ…ゼルは…いいの…?」

「だあぁ!もう!」




コトハに挑発されたゼルが馬車から降りると、アスタルテに抱きつく。

猛牛の如き勢いだったので常人なら吹き飛ばされそうなものだったが、そんなゼルの不器用さにアスタルテは少し微笑む。




「ほら、アスタルテもこれで良いだろ!」

ゼルが顔を真っ赤にして叫ぶと、そそくさと馬車へと戻る。




その姿を見てレーネは小さく笑うと、アスタルテの方へと向き直る。




「アスタルテ君」

「?」




レーネがちょんちょんと、自分の唇を人差し指で指差す。




「お返し、欲しいな」

「「「!?」」」




それを見たアスタルテとゼル、コトハが驚きの表情を浮かべると、レーネは笑った。




「ふふふ、冗談だよ。お返しは帰ってきてからだね」

レーネは小さくウインクすると、馬車を発車させる。





一瞬の出来事に放心状態だったアスタルテだったが、ハッと我に返る。





「…お別れの挨拶、言いそびれた……」















▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲















アスタルテは久々に状態確認ステータスチェックで自分のステータスを見る。




すると、以前見たときよりもさらにステータスが向上していた。







○●○●○●○●○●○●○●○●









✩Lv - 45 -







✩ステータス




HP(体力) - 2300 -






MP(魔力) - 1750 -






STR(物理攻撃力) - 1150 -






INT(魔法攻撃力) - 980 -






DEF(物理防御力) - 920 -






RES(魔法防御力) - 1000 -






AGI(素早さ) - 550 -






LUK(運) - 65 -







○●○●○●○●○●○●○●○●









「おおお…」

もはや私はどこに向かっているんだろう…




そんな事を思いながら、次はスキルの欄を見てみる。




「あれ?」

すると、技が一つ増えていることに気付いた。




「カオスノック…?あれ…これってもしかして…」

そういえば、カヤさんの技がカオスだったような…




レーネさん達のもそうだが、何故か近しい人の技が自己流になって現れている。




「う~ん……だとすると、なんで最初から一緒にいるノレスの技が出てこないんだろう…」




アスタルテが唸っていると、家の呼び鈴がなる。





>ピンポーン<




「はーい」




>ピンポーンピンポーン<




「はいはーい」




>ピンポンピンポンピンポンピンポーン<




「ちょ、えぇ、分かったからちょっと待って!」





アスタルテは慌ててドアを開けると、そこには鉄が埋め込まれているドレスを着た女性が立っていた。

紅色の髪はくるくると渦を巻いており、その顔は凛としていて、腰には本のようなものがぶら下がっていた。





「えっと…どちら様でしょうか…?」

「遅いじゃありませんの!私が来いと言ったらすぐに来なさいな!」

「えぇ…」




アスタルテを見るやいなや、突然怒鳴り出す女性にアスタルテは軽く引いていた。




「まったく、そもそも何故子供が出てくるんですの?この家の主は何を考えているのかしら」

そう言うと女性は家に入っていく。




「え、ちょ!勝手に入らないで下さい!」

アスタルテが呼び止めると、女性が振り返る。




「貴方、誰に向かって言ってるんですの!?このアームレットが見えませんこと!?」

そう言って指さした先には、虹色に輝くアームレットがあった。




え、なにそれ…見たことないんですけど…




アスタルテがぽかんとしていると、女性が口を開ける。

「まぁ、子供は知らなくて当然ですわね。覚えておきなさいな、これは選ばれたSSランク冒険者の証なんですのよ!」




それを聞いたアスタルテはハッとする。

「もしかして…マギルカさんですか…?」

「あら?知ってるんじゃありませんの、ならさっさと家の主の所案内しなさいな」





私が一応主なんですが…




そう思いながらも、アスタルテはマギルカをリビングへ案内するのだった─────


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