魔王の激怒
「さてと…」
ダンジョンに無事にたどり着いたアスタルテとノレスは早速足を踏み入れる。
(とりあえず道中は普通に倒して経験値稼ぎ、ボスは魔法で凍らせてギルドへ売却かな)
「グルル…」
考えていたら早速魔物が出てきた。
ブルーウルフかと思ったのだが、どうも様子がおかしい。
「ブルーウルフ…じゃないのかな?ノレス知ってる?」
「あれは魔力量や環境によって希に生まれる突然変異種というやつじゃな。環境に適している分魔力の吸収が良いから物によっては数倍から数十倍強い元の個体より強いじゃろう」
そう言ってノレスは手を前にかざす。
「ウインド」
すると、手から豪風が解き放たれ、魔物の身体が一瞬でバラバラになった。
「まぁ、だからといって我々の敵ではないがの」
ノレスがばらばらになった魔物に近づくと、爪を手に取りこちらに投げる。
「ほれ、変異種の素材なら多少の価値にはなるじゃろう」
「…ありがと」
とりあえずアイテム収納でしまっておく。
(味方になってしまえばノレスはかなり頼りになるな…)
そう思いながら進むのであった。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「そういえば、なんでノレスは強い敵を求めているの?」
アスタルテはなんとなく気になっていたことを聞いてみた。
「ふむ、アスタルテよ。お主は我と戦ってどうだった?」
顎に手を当てノレスが問う。
(どうだったって言われても…とにかく強かったとしか…?)
「やっと全力で戦えると興奮しなかったか?」
「……!」
アスタルテには思い当たる節があった。
確かにその通りだ…
「お主もそうじゃろうが、行き過ぎた力を手にすると戦いという物はなくなる。そこにあるのはただの瞬殺あるいは蹂躙のみだ」
遠くを見ていたノレスがこっちを見る。
「世界から色がなくなった、完全にな。魔王の座を狙ってくるやつじゃろうがSSランクの冒険者じゃろうが相手にならぬ。一寸も満たされぬのじゃ」
ノレスがアスタルテの頬に手を添える。
「しかし、そなたと会うことができた。そなたと会ってから我の世界に色が戻ったんじゃ。」
ノレスに見つめられ、思わずその琥珀色の瞳に吸い込まれそうになる。
アスタルテも中身は男なのだ。
魔王とはいえ綺麗な人に迫られるとドキドキしてしまう。
「感謝しておるぞ、アスタルテ。我が愛しき人よ」
そしてノレスの顔がゆっくりと近づいてくる。
熱烈なプロポーズをされ、アスタルテの顔は真っ赤だった。
もう、このまま受け入れてしまっても良いのではないだろうか─────
そして、唇が触れ合おうとした瞬間─────
「グガアアアァ!!」
ノレスの後ろから魔物が現れ、ノレスに飛びかかる…!
「ノレス、危ない!」
我に帰ったアスタルテは叫ぶ。が、もうそこにノレスはいなかった。
見ると、先ほど魔物がいた場所にノレスがいて魔物の首を掴み持ち上げていた。
「貴様…よくも我とアスタルテの邪魔をしてくれたのう?んん?」
魔力を込めたのか、首を掴むノレスの手が淡く光る。
次の瞬間、魔物の身体が背中に向かって逆方向に曲がりだした。
骨が折れ、血管がちぎれる音が響く。
腹は引き裂かれ、そこから内蔵がただれ落ちた。
「消え失せろ、凡愚が」
ノレスがそう言い放つと、魔物の身体は内側から爆発するように木っ端微塵になった。
「ちっ、せっかくの良い雰囲気が台無しじゃ」
ノレスが魔物の肉片を踏み潰すと、こちらへ戻ってくる。
「思わぬ邪魔者が入ったが、続きを───」
「いや、しないわ!」
アスタルテは先に向かって歩き出す。
チラリと後ろを見ると、ノレスはわなわなと震えていた。
「あの魔物め…血族全て…根絶やしにしてくれる…必ずじゃ…潰す…」
(うわー…)
アスタルテは後ろから漂う尋常ではない殺気にビビっていた。
今もぶつぶつと一人で何か喋っている。
(ノレスは怒らせないようにしよう…)
心でそっと思うアスタルテだった……
その後、アスタルテはノレスに今まで気になっていたことを聞いた。
貨幣の価値や魔法やスキルについて等だ。
貨幣については、
銅貨1z
大銅貨10z
銀貨100z
大銀貨1000z
金貨1万z
大金貨10万z
閃金貨100万z
らしい。
金貨一枚でそれなりの宿に一泊できるらしいので、大体日本円の10分の1あたりだろう。
そしてスキルについてなのだが、自分のステータスやスキルを確認することなどできないらしい。
ゲームがないこの世界で考えてみれば当たり前なのだが、体力や攻撃力を数値化ってどういう事じゃ?と言われてしまった。
つまり個々のステータスを見ることが可能なのはアスタルテのみということなのだ。
といってもその人の戦闘経験や練度によってステータスには見えぬ数値が加算されるのであくまで基準値ではあるが。
(ということは皆残りのMPが把握できてないまま魔法スキルを放っているのか…)
考えてみればアスタルテが元いた世界では体力がどれくらい残っているかなんて見れなかったので、すごい疲れた、などの疲労感からしか体力の残りが分からなかったし、案外そういうものなのかとも思う。
(なんにせよ、
人でも魔物でも情報が知れるスキルがあると知られたら色々と調べられそうだし狙われかねない。
改めて自分の異質さに考えさせられるアスタルテであった。
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