温もりをポケットに詰めて
青赤河童
プロローグ
プロローグ
まだ日も昇っていない時間。
薄暗い無人駅のホームに一人のおじいさんがやってきました。
後ろに手を組み、えっちらおっちら歩いてきます。
つるつるの頭部に白い立派な顎髭。
まるで昔話に出てくる仙人のような出で立ちです。
遠くのほうから光輝く黄色い点が二つ近づいてきました。
おじいさんは電車が来ると決まって先頭車両に乗り込みます。
景色がよく見えるから? そうではありません。
では、運転手の姿が見たいから? いえいえ、それも違います。
おじいさんは先頭から順繰りと車内を見て回りたいからです。
なぜかって?
おじいさんは乗客の皆さんにささやかな温もりを与えたいのです。
そして自らも温もりを感じたいのです。
そのために気になる乗客がいれば話しかけます。
話しかけられた乗客はそれを拒んだりはしません。
おじいさんの柔和な笑顔の虜になってしまうのです。
電車に乗る理由は十人十色、千差万別です。
通勤するのか、はたまた旅へ出るのか。
都会へ行くのか、はたまた田舎へ行くのか。
そんな皆さんにおじいさんは、別れ際四葉のクローバーを渡します。
行く先で幸運が訪れるようにと――。
さあ、今日も乗客を見つけました。
おじいさんは揺れる車内をえっちらおっちら歩いて行きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます