一夜
ささくれを千切って膿んだ痕。
痛みに安堵しながら、
腫れた指を少しずつ押し潰す。
眼の下の隈、刻まれた皺。
日に日に深くなるそれを、愛おしく想う。
眠れないのか、眠らないのか。
今となっては、わからない。
夜に酔うのか、過去に酔うのか。
どちらだって、構わない。
取るに足らないことを問うて、
幻影に自己を沈めるように。
暗闇の中、瞼の裏側だけが白く光っている。
僕は詩人か、哲学者か。
奇人、狂人、あるいは白痴でもないとすれば、
きっとただのひと。
一房の葡萄が枯れゆくように、
その実が一夜ごとにもがれてく。
それを厭うて荒れゆく嵐、
青きこころも廃れてく。
この身がすべて朽ち果てた時、
こころがすべて朽ち果てた時、
その夜は心地良く眠れるだろうか。
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