向日葵が揺れた夏
@9mvGF
プロローグ
「それじゃあ、写真撮りますね」
「女将さんの顔固いですよ?」
「そうですか?とにかく、もっと集まってください」
「ウェーイ」
「シュウうるさいって。ちゃんと女将さんの言うことを聞いて」
「いいじゃねえか。楽しくできれば」
「ミワももっと寄って」
「私は端っこでいいのに」
「ダメ!ほら、みんなで撮らないといけないんだから」
「かと言って、どうして向日葵なんだ?凡庸だろう」
「そうやって、人は真理を見失っていくの」
「そんな話してないって……」
「ほら、ケイコもそんな辛気臭い顔しない」
「だってえ。暑いんだもん」
「暑くないったら暑くない!」
「そうは言っても……」
「とにかくさ、早く撮ろうぜ。グダグダ言ってたら、死んじまうよ」
「コウタは良いこと言うね。ほら早く」
「仕方ねえな」
「はい。それじゃあ行きますよ、ハイチーズ」
……。
「如何ですか?」
「あー良い感じ。向日葵も綺麗に取れてるし」
「しかし、こんなん撮ってどうするんだよ?」
「またいつかここに集まった時、こういう写真があると楽しくなるでしょ?」
「その気持ちは一生わからんね」
「ええ。ミワはわかるよね?」
「さあ……」
「えー。なんかノリ悪いなあ」
「ふふふ」
「女将さんにまで笑われた!」
「もう暑いし、帰ろーよー」
「そうだそうだ。ケイコの言う通りだ」
「わかったから、とにかく私の言うことを聞いて。私は絶対ここに戻ってくる。そして、絶対にこのひまわりのようにその時も私は輝いてる!」
「……」
「なんで反応ないの」
「そんな未来のことわかりっこないって」
「……夢がないなあ」
「ねえ、帰ろうよ」
「そうだね。ごめんごめん。よし、それじゃあ、帰ろうか。第一回、サーカスライオン慰安会の始まりを祝して」
「もう二日だけどね……」
「ミワ!それは言わないお約束だって〜」
あの日、向日葵は大きく揺れていた。あれが私が見た、最後の向日葵だったのかもしれない。
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