第20話 放課後のカフェにて①

 音ゲーを終えた後も、しばらく俺達はゲーセンを満喫した。


 UFOキャッチャーで猫のふかふかのぬいぐるみを取るために理乃が三千円を使ったり、格ゲーをやって理乃をぼこぼこにしたらその後十分は拗ねて口きいてもらえなかったり、機嫌直しにレースゲームをやればさっきの仕返しとばかりに俺の妨害ばっかりしてきたり……。


 色々やったが、とても楽しい時間を過ごすことができた。

 デートスポットしてはイマイチなチョイスだったが、それでも楽しかったことに変わりはない。……次は下調べもして、ちゃんとしたデートをしようとは思ったが。


「……で、次はどうする?」

「うーん……特にやりたいことももう無いからなぁ……雅宣は何かやりたいことない?」

「やりたいこと、ね……」


 やりたいものと言われても、とっさに思い浮かんでくるのもはない。

 かろうじて思い浮かんできたのは映画だが、今の時間は三時過ぎ。映画館まで行くのに時間がかかるので、それも考えると微妙だ。

 

 趣味が少ないせいで外出するのも本屋に行くくらい。それ以外の場所に興味が無いことが、こういう風に影響してくるとは……まあ、誰も予想何でできなかっただろうからしょうがないんだけど。


 となると、やりたいことではなくやらなければいけないことを考える方が得策だろう。

 やらなきゃいけないこと……あ。


「理乃、今朝俺の友達が俺ら二人といつか遊びたいって話したよな?」

「うん、聞いたよ」

「それを、今日やるってのはどうだ?うちの学校そろそろ終わるだろうし、どっかカフェとか行く感じで。ほら、理乃だって明日からまた忙しくなるんだろ?」


 涼太達も早い方がいいだろうし、急すぎるのは……ま、あいつなら大丈夫だろ。千春には申し訳ないけど。

 

「確かに、早い方がいいからね……わかった、今日にしよう!」

「ごめんな、折角の息抜きデートだったのに」

「ううん、全然大丈夫だよ。いつも雅宣がお世話になってますって言わなきゃだし」

「理乃は俺の母さんか」


 理乃には本当に申し訳ないなと思いつつも、スマホを取り出して涼太に『今日の放課後なら、俺の彼女の予定が合うぞ』とメールを送る。偽の彼女なので、「俺の彼女」と打つときは指が震えた。しかも本人の目の前だから、余計に恥ずかしかった。……涼太、恨むぞ。


 そんな風に八つ当たりを心の中でしていると、返信が来た。この時間はまだ六時間目の授業があるはずで……あいつ授業中にスマホいじったってことかよ。涼太には勇気ある者という意味の「勇者」なる称号を与えよう。もちろん不名誉な意味での。


 返信の内容は、『お前風邪ひいてんだろ? また今度でいいから今日は安静にしとけ』。思ったよりもあいつだ友達思いのようでびっくりだ。ってか、俺風邪ひいてるって設定だったな。またもや罪悪感が押し寄せてきた。


 俺は『もう元気になった。だからこっちは大丈夫だぞ』と嘘を重ねる。流石に「幼馴染がアイドルで、デートしたいがために俺をズル休みさせた」というのを伝えるわけにはいかないからな。


 その数秒後に涼太から『それならいいが……本当に大丈夫なんだな』と来る。しつけぇ。


 『大丈夫だから!』と返し、俺は溜め息をつく。悪いやつではないのはわかるんだが……心配性すぎるのはちょっとだな。いや、単に友達思いなだけであいつは正常なんだろう。おかしいのはズル休みしてる俺だ。ズル休みしてよかったと思えるくらい楽しかったからいいけどさ。


「……どうしたの?」


 俺が溜め息をついてたからか、心配そうな表情でこちらをうかがってくる理乃。


「いや、単に友人が心配性すぎるなって思ってただけだから、気にすんな」

「そっか。雅宣風邪っていう設定だったもんね~」

「理乃のせいでな。……まあ楽しかったからいいんだけどよ」

「私も楽しかったよ。ありがとうね、付き合ってくれて」

「こちらこそ、楽しませてくれてありがとうな」


 そして涼太から返信が帰って来た。『わかった。それで、俺達はどこに行けばいいんだ?』。

 

 そこまでは考えていなかったので、理乃と相談する。


「あ、今涼太――俺の友人な――からどこ行けばいいのか聞かれたんだけど、どこにする?」

「さっきの喫茶店でいいんじゃない?……あそこのパンケーキ、ちょっと食べたいなって思ってたから丁度良いし」

「まだ食うのかよ……」

「むぅ……お腹すくのは仕方ないでしょ!」


 拗ねたように口をとがらせる理乃が可愛く、思わず頭に手をポンと置いて「はいはい」返す。……うわ、何やっちゃってんだろ俺。

 だが理乃は怒ることなく顔を真っ赤にさせてそっぽを向いた。いや、これ怒ってるのか。


「あー、ごめんな」

「べ、別に怒ってるわけじゃないから」

「ならどうして……」

「なんでもいいでしょ! ほら、友達に返信しなくていいの?」


 やっぱ怒ってんじゃん……と思いながら、理乃に言われた通り店の住所を検索して、店名とともに涼太に送った。





☆あとがき

近況ノートにも書きましたが、しばらく活動休止します。

理由は、公募に応募しようと思っているため、応募用の作品に集中するためです。

ですが今回のように気分転換に更新することがあるので、更新した時は今までと変わらず読んでいただけると有り難いです。

その時に星や感想をもらえれば大幅にモチベーションが上がると思うので、是非よろしくお願いします。


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