ようかい学園物語~ペルくんのお姉ちゃんは妖怪ぬらりひょんである~

@mikamikamika

第1話

 いつからだろうか、人間と妖怪が共存する世界になったのは。妖怪の生態系は未だに不明だ。振り返ればそこに生まれていた、という誕生の仕方が通例である。


 例えば、竹藪で光っている竹を見つけた人が警察に通報。警察はその竹を国立の研究施設に持ち運ぶ。X線で竹の光る部分を調べてみたところ、人のような影が映ったので、竹を切ってみたら、中から女の子が出てきた。川にどんぶらこどんぶらこと、普通の方法では育たないくらいの巨大な桃が漂流しているのを発見した人がこれまた警察に通報。巨大な桃ゆえに流れの速い川の道中では引き上げる事が出来ず、海へと流れついた後、海上保安庁が桃を回収。船上で桃がパカリと割れて、オギャーオギャーと赤ん坊が現われた……等々。


 北海道では町にヒグマが現われたという通報を受け、山へと追い戻そうと、猟友会が駆けつけたところ、ヒグマ背中に赤ん坊がマサカリを担いで乗っていたりもした。まさに人智の及ばない形で妖怪は誕生し続けた。


 ペルも妖怪である。妖怪には特殊能力のようなものが備わっていることが一般的だ。そしてペルの特殊能力は『人間と同じように成長し、人間と同じような力を得る』という能力だそうな。それって、まんま人間じゃーん! とツッコミを入れるも、やはりそれでもペルは、妖怪だ。


 妖怪名は『ドッペルゲンガー』。この世の中に誕生した、とある人間の赤ん坊と対を為すように発生したのがペルである。でも、まあ、世の中には、3人は同じ顔の人がいるというので、ペルのような存在は特に珍しいわけでないのかもしれない。ただの一般人のそっくりさん。ただし、ドッペルゲンガーが本物の人間と出会ってしまえば、本物の方が死んで、ドッペルゲンガーはその人物を『背乗り』するという言い伝えがある。その時、『人間と同じように成長し、人間と同じような力を得る』以外の、他の特殊能力が発揮される可能性もあるが、ペルは特に本物を探そうとはしていない。ペルにはペルの生活がある。養子として引き取って育ててくれている人もいる。本物の方の人間と出会い『背乗り』する事で、現在のペルの生活が変わってしまう可能性があるとしたら、それは積極的に回避しなくてはいけない事だ。


 なお、妖怪には失業保険者のように政府から支給が出ていた。妖怪たちを集めている専門の学園に無料で通わせて、勉強もさせてもらっている。一ヵ所に集めた方が、管理しやすいという政府の思惑もあるのかもしれないが、まあ、知っている限りの妖怪で、こうした現状に不満を抱いている者は特にはいない。


 これからするのは学園生活で、とある心理学に関する『本』を作るまでの物語だ。学園には人間を研究するという活動内容の部があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る