プロローグ 麗side① 召喚される

騒がしい街の交差点をスマホ片手に通り抜ける。一人で渋谷を歩くときは、千思万考する。イヤホンをつけていると、自然と思考に集中できるしね。

 都会は人が多いな。人が多いとそれだけ多様な考えがあってぶつかることもある。

大事になってくるのは視野、つまり周辺視や、思慮や知識の及ぶ範囲を広げること。

皆は皆違うことを違う風に考えてる。ぶつかることだってある。それでも結局は素直だから大丈夫!!

なんて、結構テキトーだよね。本当は、素直じゃない人だっているのは知ってる。色々理由はあるけど、そのうち一つは『嘘』が現代の自衛の最たるものの一つだから。

 いやあ、これも結構いい加減だな。正直が自衛になることもある。でも、嘘の効力は幼稚園児でも知ってることだろうね。自分を守るために誰もが嘘を吐き、隠し、ごまかし、偽る。滑稽だと思う?俺はもうそういう風には思わないなあ。

 見慣れたアパートが見えてくる。いつもボケっと歩いてると家にたどり着くけど、改めて考えるとすごいよな。道を間違えたことも何かにぶつかったこともない。

 明日になると忘れるようなことを考えながら家に上がる。この辺は駅周辺と違って静かなんだよね。

「ただいまー。」

「お帰りー。」

 リビングに入ると父さんがいる。等身大の顔出しボード(勇者バージョン)から顔を出して、こっちを見ている。エプロンをつけているから、俺のただいまを聞いてわざわざ用意した感じかな。

「父さん、それどうしたの?」

「仕事でもらったんだ。どう?麗くん。」

「流石に脳みそを疑うかな。面白いけど。それより、ひざが震えてるし。背丈に合ってないんじゃない?」

 そう言い残すと、階段を上がる。

 家族との会話って大切にしなくちゃって思うけど、今日は疲れたんだよな。とりあえず早く寝たいと、自分の部屋に入る。

 本当はご飯の用意の手伝いとかも、するべきだと思う。でも、今日は仕様が無いと甘やかしているうちに、何とも気の利かない息子になってしまった。言い訳をすると、家族に対してだと、ついつい甘えてしまうんだ。

 だから今日こそやろう。でも眠い。テスト明けの疲れがどっと出てくる。最終日で時間あるし、もうちょっと満喫したかったけどね。まあいいや、食事の後片付けは自分でやろう。最近は勉強しかしてなくて、何もかも任せっきりだったしね。

 ベッドに寝っ転がる。そうして目を閉じる。

 あーあ。俺知ってるよ。このまま寝ちゃうんだ。ゆったりした呼吸の感覚が大きくなるたびに、意識がフェードアウトしていく……おやすみ……



 そしてもう一人の主人公もしかり、青色の光に包まれてこの世界から姿を消すことになる。

 これは二人の知らない世界でのストーリー。

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