碧い空にはきっと爽やかな風が吹く。

たなまる

第1話 プロローグ


「俺は広井良太。よろしくな!」

 高校生。

青春と呼ばれるもののほとんどはこの時期を指す。

ぼっちはやだなぁとか、そんなくだらないことを考えながら入学式をやり過ごしていたところ、左から急に話しかけられる。

 彼が、俺の高校生活最初の友達となりそうだ。

 いきなり話しかけてくるのには驚いたが変なやつではないみたいで安心する。

「ああ、よろしく。俺は星野爽だ。」

 校長の長い話をBGMに良太と雑談を始める。

 しかし、こいつムカつくくらいにイケメンだな。

「おい、聞こえてるかー?」

くだらないことを考えていたら見透かされてしまった。

「悪い、聞いてなかった」

「聞こえてない、じゃないのかよ」

「悪気しかない」

「ほんとに酷いな」


「なんの話ししてんのー?」

 反対の席からまた話しかけて来たのは堀江優太というらしい。

良太が答えるようだ。

「部活どうするかって話」

 大嘘じゃねえか。

「良太と爽は何部に入るの?」

「俺は野球部はいるぜ!」

「へぇ、良太は野球部なのか。」

 部活か...考えてなかったな

「俺はまだ考えてる」

「そっか。ちなみに俺は帰宅部。」

「めんどいから?」

「違う違う。親が共働きで、小さい弟がいるから、面倒見なきゃ行けないの。」

 想像の10倍は真面目だった...!しかも結構重い。

 良太も同じことを思ったようで、本気のトーンで謝っている。

「あ、校長の話し終わった」

「え、むしろまだ話してたのかよ」


 〜30分後〜

「俺がこのクラスの担任になった須川晴彦だ。」

 パッと見は30後半だが、渋い大人の雰囲気が出ていて、それなりに人気そうだ。

「広井。お前あとは任した。学級委員と副委員決めてくれ」

「は?なんで俺?」

「1番前にいたから」

 良太はしばらく考えると後ろの席を、つまり俺の方を向いた。

「爽、よろしく〜」

 え、想定外すぎる。

「何すればいいんだよ?」

「とりあえず前出ればいいって」

(お前後で覚えとけよ)

 小声で囁くと、前に出る。

「えー、星野爽です。1年間よろしく。とりあえず学級委員やりたい人ー?」

 ここまでは良かったのだ。だがしかし。


「爽がやったらいいと思いまーす!」

「おい優太黙ってろ」

「いいねそれ!」

「良太ー?全部俺に押し付ける気?」

「うん。何か悪い?」

「星野に学級委員やって欲しい人ー?」

 進めんなよ。

「はい、賛成多数で可決ねー」

 はぁ、わかったよ。やればいいんだろやれば。

「じゃあ、副委員やる人ー?」

 皆の視線が、一点に集中する。

 1人の女の子の手がスっと上がっている。

 腰まで伸びた黒髪、ぱっちりとした目。控えめに言って超絶美少女である。

 俺は彼女を知っている。何故なら同じ中学だったから。そして、春休みには1番多く会っていたと言っても過言ではない。

「はーい!私副委員やりまーす!」

 そのまま前に出てくると、

「宮崎碧でーす!みんなよろしくー!」

 その場の空気と宮崎の見た目にみんなが圧倒されていると、

「他にやりたい人ー?」

 体面だけは須川先生が聞くが、もう宮崎の独壇場である。

 そこでチャイムがなり、休み時間となった。


「よろしくな、学級委員!」

「おい、お前らのせいだぞ。しっかり手伝ってもらうからな。」

 軽く叩こうとすると、大げさに避ける優太と良太。

「いいじゃん、あんな可愛い人と一緒に委員ができて。」

「ああ、宮崎か。」

 あ、しまった。この言い方だと─

「え、爽あの子知ってんの?」

 やっぱな。食いつくよなぁ

「あぁ、ちょっとな。」

「おいなんだよ、気になるじゃんか」

「なんでもないって。同じ中学だっただけだよ。それ以上でもそれ以下でもない。」

 完全に嘘だが、中学時代のことはあまり触れたくない。

 幸い、2人は他のことを話し始めたので、周りを見渡してみる。

 大きな声で話しすぎたようだ。周りの注目を集めてしまったようだ。

 すると、宮崎と話していたらしい女の子2人と宮崎、更に大柄な男の子が近くに来た。

 驚いたのは、良太と優太が2人の女子と親しげに話し出したことである。

 何となくもう1人の男子に話しかけてみる。

「どしたの?なんか用事?」

「おお、自己紹介するか。マイ、ネーム、イズ、オガーワ、ショウターロ」

 まさかのカタコト英語に吹き出すと、

「どうだ?俺の英語。上手だろ」

「ヘッタクソだよ。よろしくな」

「ひでーな。よろしく」

 一段落したのでみんなの話を聞いてみる。

 良太と話しているのが近江海。

 優太と話しているのが北村優菜。

 1、2、3、ポカン!爽は、家族の名前を、すっかり忘れた!代わりに、クラスメイトを覚えた。

 じゃなくて。

そのまま7人で話し出す。

「このクラスは楽しくなりそうだねー!」

 高校では、開幕ぼっちは防げたようである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る