第10話 いざ鎌倉へ

 鎌倉観光の当日、電話でお話できたとはいえ、直接会うのはやはり少し気まずい感じがするものだ。

 友里が携帯電話を持っていなかったこともあり、待ち合わせは鎌倉行の横須賀線の車内ということにしていた。

(今の時代では考えられないかもしれないが、これでどちらかが遅刻やトラブルがあったら、遭遇できないだろうなぁと思う)

 友里は千葉方面から来るので、私は品川駅から友里が乗っている電車に乗車することになっていた。

 時刻表を調べて乗る車両も決めていたので、指定の電車が来た時に、車内に友里が乗っていることが分かった。丁度、彼女の隣の席が空いていたのでそこに座ったが、やはりなんとなく気まずい感じもあり、会話もあまり弾まなかった気がする。

 そんな状況を過ごしながら、鎌倉駅に到着した。

 鎌倉では、お寺等を散策しながら、途中ご飯を食べたりして過ごしたが、途中でしりとりなんかを始めたりして、だんだん気まずい雰囲気も解消され、普通に話をするようになっていた。しりとりをしていた時に僕が繋いだ「つりがね」という言葉に対して、しりとりが終わった後の感想で何故か彼女から褒められたりもした。(余談であるが、長谷寺?にて、丁度結婚式を行っていたカップルが居て、新郎が何となく大学時代の友人-卒業後は疎遠になっていた-に見えたが気のせいだったかもしれない。)

 途中、ちょっとした山道みたいな場所にあった段差のところで、思わず彼女の手を取りそうになってしまった時は、彼女ではないから手を取ったりしてはまずいなと思って、自分で苦笑いをした後、手を引っ込めて彼女が段差を下りやすいように肩を貸すようなことはあったが・・・

 なんだかんだで、お互い楽しめたようで、帰りの車内では前のように楽しくお話ができた。そして、僕の降りる駅が近づいて来た時に彼女が「ごめんね」と言った。僕はとりあえず、苦笑いするしかなかったが、この”ごめんね”の意味は僕を勘違いさせてしまったということに対してだったのだろう。

 そして、次はお互いの友人を連れてきてスキー旅行に行くことを約束してしまった。しかし、このスキー旅行にて僕の醜い感情が露わになることをこの時の自分は知る由もなかったのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る