第9話 与作、願望と希望をはき違える
4カ月前ステータスの存在、レベルの存在を知った後はとにかく俺が想像していた冒険者像で一旗揚げることを夢見て、武器を調達(農具屋の不良品)し、戦法を編み出し(斧でチクチク突く)午前中に商会の仕事をした後はドブさらいや清掃の仕事を止め、魔物退治(ゴブリン)を続けた。
悲しみ(ゴブリン)はいくつも乗り越えた。
これからもいくつもの悲しみ(ゴブリン)が俺を襲うだろ。
しかし乗り越える...乗り越えて見せる!
悲しみ(ゴブリン)の先にレベルアップが、あるっ!
本当の異世界生活が始まるんだっっっ...!!!
てなわけで、つらい日々の先にバラ色の異世界生活を思い描いたのだ。
しかし、肝心のステータスについてだが見方が分からん。
すぐにどうやってステータスを確認したらいいのか冒険者ギルドの受付嬢アリーチェに尋ねた。
えっ?そんなことも知らないの?って顔をされながら教えてくれたが、街の中央にある教会で教えてくれるらしい。
しかし、お布施が必要との事。
つまり、金だ。
しかも結構高い。
俺の現在の食費428食分もかかる。
しかし人間、都合のいい方に考えてしまうもの。
そんなお金、現状の俺にとってそう簡単に手に入れることはできないのは普通に考えればわかることなのだが希望と言う名の光に頭をやられてしまった俺には現実が見えていなかった。
頭の中は、いつもの食事のパンを4等分にして我慢して節約すれば何日でとか、2日に一回は野宿して宿代を浮かせば更に何日でとか、俺ならできるとか、都合のいいことばかり考えていた。
志高くやる気満々の当時の、俺。
しかしそんな俺はもはや過去の、俺。
辛く厳しい日々をさらに厳しく節制する俺の自制心は日を追うごとにしぼんでゆき、いつの間にやら4等分して分けて食べてたパンが2等分になり気づけば等分しなくなり、2日に1回の野宿は7日に1回、1カ月に1回となり...。
明日から頑張ろう!
今日ぐらい大丈夫だ!
自分へのご褒美だ!
の考えを繰り返し、気づけば全然お金はたまらず時間だけが過ぎていく。
最終的には、
一旦ステータスを見ることは保留にしよう!
という考えに落ち着いた。
ステータスなんか見なくても魔物(ゴブリン)をたくさん倒してきたんだから経験値は積んでいるはずだ。
それに初めてステータスを見たとき俺こんなにレベル上がってたんだって、感動できるじゃないか!
...のだが
「ゴブリン何匹倒したってレベルなんか上がるわけないじゃないですか」
えっ?そんなことも知らないの?って顔をされながら冒険者ギルドの受付嬢アリーチェは言い放った。
俺は膝から崩れ落ちた。
それがちょうど1週間前だった。
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