第3話 与作、斧で突く

ゴブリンは俺の住む街ルサカから歩いて一時間位の所にある草原によく出没する。


多分草原のどこかに巣があるのだろう。


巣を叩けば当分繁殖しないらしいがゴブリンの巣を叩くのもかなり大変らしく、しかも全然割に合わないとどこかで聞いた。


やり方は知らないし知りたくもない。


草原は俺の腰ぐらいの高さの青々とした草が一面に悠々と広がっており壮観だ。


草原には草が刈り取られ踏みしめられた道が何本か伸び、道は遠くの方にある山や森に続いている。


商人であろう馬車がいくつか行きかうのが見て取れた。


初めてここに来たときは壮大な景色に感動したが、今では赴くのが億劫になり、足取りが重くなった入社2年目の職場の雰囲気によく似ているように感じる。


この半年の大半をここでいやいや仕事として過ごしているからだろう。


そしてこれからもここに通うことになるのか...と考えるとだいぶテンションが下がる。


溜息を付きながらもそろそろ現れそうだなと背中のベルトに吊るした斧を両手で構えた。


俺の唯一の武器。

それが斧だ。

なぜ斧なのか、ちゃんとした理由がある。


決して『与作』だから斧にしたわけでは断じてないっ!



ガサガサと少し前の方で突然草が揺れ音を立てた。


ゴブリンだろう。


あー嫌だなぁ、嫌だなぁ、と心の中で呟いているとギャギャと鳴きながらゴブリンがこちらに近付き正面から飛びかかってきた。


俺はいつものように飛びかかってきたゴブリンを交わしすぐさまゴブリンの背中をとった。


がら空きの背中。


チャンス!


俺は斧を振りかぶ...らずにいつものようにゴブリンの背中を突いた。


斧口の角のとがったところをぶつけ素早く引く。


ぐぅ!くさい!


斧の金属部分がゴブリンの緑血で少し濡れ悪臭を放つ。


ゴブリンは怯んだがすぐに振り返り悪臭に顔をゆがめる俺に飛びかかった。


かわす、また突く、かわす、また突くを繰り返し、ダメージで瀕死のゴブリンを確認しふらついて足の止まっところを思いっきり突いた。



倒れたゴブリンを足で蹴り、反応がなく死んだのを確認して一息ついたのも束の間、ガサガサと周りから草が揺れる音がし、悪臭漂う中、次の戦いが始まる。

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