血を吸いたい!
目を覚ますと、寮の自分の部屋にいた。
「お嬢様!」
「大丈夫ですか!?」
メイドのマリーとサリーが飛びつく勢いで駆け寄ってくる。
「ええ、大丈夫……私はどうしてここに?」
吸血衝動に駆られて、倒れてしまった私。
一緒にいたロイはどこかへ立ち去ってしまったはずだけど。
ひょっとして彼が人を呼びに行ってくれたんだろうか?
マリーが答える。
「お帰りが遅いので心配になって探しておりましたら、庭にお倒れになっていて……」
ってことは、ほったらかしにしたのかよ、あの男!
信じらんない!
「ありがとう……二人とも。もう大丈夫だから、二人とも休んで」
「ですが……」
「お顔の色もそんなに悪くて……」
「本当に大丈夫。なにかあったらすぐ呼ぶから」
私がそう言うと、二人は頭を下げて隣の部屋に下がっていった。
二人とも優しくていい子だなー。
まあ、私になにかあったら叱られるってこともあるんだろうけど。
それを差し引いても、いつも私のことを気にかけてくれて。
とても感謝してる。
しかし……あの二人は普通の人間で、吸血鬼じゃない。
だから彼女たちには相談できない。
この問題は自分で解決しなきゃいけないのだ。
とりあえず、私はマリーが用意してくれたブラッドスープを飲み干す。
スプーンなんて使わず、皿に直接口をつけて一気に流し込み、喉を潤して胃を満たす。
「ふー……」
美味しゅうございました。
ようやく落ち着けた。
全身にエネルギーが染み渡って、思考もクリアになった感じ。
満たされたことで、さっきのがどういう状態なのかわかってきた。
私が活動するのに必要な魔力量が急に増加したのだ。
吸血鬼は魔力で活動している。
そしてその魔力を血液から手に入れる必要がある。
成長するにつれて、活動に必要な魔力の量は増える。
そして今の私は成長期なのだ。
だから、これまでと同じ量の血液スープでは足りなくなって、ロイの前であんな状態になってしまった。
しかし……。
じゃあなんでロイの血を吸おうとして、あんなに気持ち悪くなってしまったんだろう?
と考えていて、思い出すことがあった。
領民の皆様から徴収させてもらって製造している血液スープ。
あれも、ごくまれに飲めないときがあった。
保存技術もまだ半端な世界だし、悪くなってたのかなってあのときは思っただけだったけど。
もしかして、私、飲めない血がある?
うーん。
たしか血液スープは、人間の血と動物の血を混ぜて作っている。
動物は人間より魔力が少ないけど、新鮮な血液を手に入れられるので、その分血液中の魔力が多くなる。
保存しておくことで魔力が減った人間血液に、新鮮な動物の血液を足すことで魔力量をアップさせてるわけだ。
そう考えると、可能性が見えてくる。
私、人間の血液が苦手?
飲めなかった血液スープは、人間の血液の割合が多いやつだったと考えられるんじゃないだろうか。
そして、まさに純粋な人間の血を吸おうとして、さっきの私は具合悪くなってしまったとか……。
そして、それはきっと吸血鬼シルフィラの中身が、現代日本の普通の人間なことが原因だ。
そう考えると、これは単純に精神的な問題って気がしてくる。
つまり、慣れるしかない。
そうでもしないと、私、死んじゃうわけだし。
仕方ないな。
これは特訓あるのみってことでしょうか。
……まあ、後々これも大きな勘違いだってわかるんだけど。
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