第20話 する? しない?
布団を出してもらうのも美岬に悪いし、気持ち的に面倒くさいので、このままこのソファで寝ることにした。やはり疲れているんだと思う。
美岬が、あちこちのスイッチ類の確認だか、操作をしているのが非現実的だけど、それでも、同級生と同じ建物で泊まるなんて、なんか、ちょっと修学旅行みたいだよな。
あ、慧思、何考えてる?
なんで、三人掛けのソファを独占して、自分の寝る支度をさっさとして、枕を俺に渡す?
やめろ、そういう気の使い方は……。
美岬、君もだ。なんだ、その覚悟を決めて、吹っ切った表情。
「二人とも聞いてくれ。そういうのは、まだ早いからな。だから、慧思のことを邪魔だとも思っていないからな」
「ふーん、早いんだ? で、そういうのって何?」
しまった。美岬が基本的にSなのを忘れていた。敢えて聞きやがったな。一瞬、どう仕返ししてやろうかとまじめに考えた。
で、仕返しはやめて、真面目に話す。
バディの慧思もいる前だからな。ふざけないで、きちんと話そう。
「TXαも飲まないんだろ? ならば、無茶しなければそういう日は必ず来る。でも、今、それしちゃうのは卑怯な気がするんだ」
「それ? 卑怯?」
「ええい、かたっぱから全部、つっこむんじゃねーよ。
聞けよ、とりあえず……。
『した』から待っていられる、とか、『した』から待っていなきゃ、とかじゃない。そういう言い訳になること自体が不純じゃないかと思うんだ。
それにさ、生きて帰れないかもしれない、好きなように体を弄ばれてしまうかもしれない、そんな可能性も、もうない。
それなのに、美岬は覚悟を決めた表情になっている。
そうじゃないだろう?
状況に迫られたからではなく、もっと自然にそうなるべきだと思う。状況に追い込まれたから、『する』ってのは違う気がするし、それに便乗したみたいで、なんか卑怯なような気がするんだ。
そして何より、今、『した』って悲しいだけだ。
きっと、終わった後、美岬は泣く。
まちがいなく、俺も泣く。
そんなの、きっと、正しくない。
未来が続くことを確定させてから、それからでいいじゃないか。
それに……、身体や状況でというより、美岬とは魂で繋がっていると思ってるんだけどな、俺は……」
返答はなぜか慧思からきた。
「馬鹿野郎、邪魔だから消えていろ、と言われる方がまだマシだ」
あ、慧思、その言い方、なんだよ?
ああ、お前からしたら究極にのろけられたのと同じか。
すまないな、いつも。
大体な、そもそもなんで俺、こんな羞恥プレイに嵌め込まれているんだ?
そうだ、こんなこと言わせる美岬がすべて悪い。
思いっきりジト目で睨んでやると、あれ、馬鹿に神妙な顔しているじゃねーか。
「面影ぞ なほ忘られぬ あだなりし 契りは夢のうちになしても」
「ん?」
今なんて言った?
「おやすみなさい!」
あ、走って逃げやがった。体を軽く感じてそうだな、その走り方。
あー、なんか、俺一人がバカみたいだな。
寝るか、もう。
寝よ寝よ。
床だって仕方ねー。
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