第5話 最後

人間、最後を迎える機会というのは、一体何回あるのだろうか。


最後、なんて定義は曖昧だ。

好きな番組が終わるのも、最後。

お祭りが終わるのも、最後。

通っていたお店が閉店するのも、最後。

通っていた学校を卒業するのも、最後。

学生じゃなくなるのも、最後。

定年を迎えて、社会人じゃなくなるのも、最後。

そして、人生の、最後、最期。


始まりには、終わりがある。

最初には、最後がある。


わかってはいるんだ、わかってるんだよ。

でも、どうしても、その最後に一喜一憂せずにはいられない。


そして、今。

人生22年生きてきた中で、半分以上を占めていた「学生」という一時代に終わりを告げる。

そして明日からは「社会人」という時代が始まるのだ。


学生最後の日、なんだか、寂しいのとも違う。

いままで遊んでいたおもちゃを、唐突に取り上げられたような気分、とも違う。

きっと大人になりたくないんだ、と、思う。

今までが楽しすぎて、楽しすぎて、楽しすぎて……。

この最高な時代を終わらせたくない。

でも、時のが流れは止まってくれないから。


せめて、せめて、学生時代の「最後」くらい、きちっと見送らせてくれないか。


留めることができないなら、消えていくこの瞬間を、目に焼き付けておきたい。

次の時代を見るための、感光材にするんだ。


そして、最後の瞬間という、見えない線をイメージして。

せいので、飛び越えよう。

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