帰宅

 帰ってきた、目の前にあるのは薄暗いではなく、鬱蒼と生い茂った草木が見えている。


後ろを振り向くといつも通っている通学路がある。ふと時間が気になりカバンから携帯を取り出そうとすると


「あれ?服が直ってる……てか戻ってます?」


 化け物に食われた右腕、もちろん制服ごと食べられたはずだ、溟? に切られた箇所も全部直っている。スカートも膝上まで折っていたのが元の長さになっていて、スカート越しに触るとパンツも履いている。


「夢?」


 いや違う、目の前の風景が鮮明に見える、いつも見ている遮蔽物が無いのだ、溟は顔に手を当てると


「前髪が戻ってない?」


 疑問に思い、神社の手水社に向かい水面で顔を確認する、そこに映っていたのは眉毛あたりまで斬られた前髪、溟? に斬られた横一線の傷跡、あわてて化け物に食われた右腕、スライムに溶かされた左手首、溟? に斬られた体、すべて確認すると


「全部傷痕残ってる、ということは夢じゃない?」


 あわててステータス確認すると





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

桜井溟


レベル5


職業:無職


状態:健康


HP:100/100


MP:10/10


STR15


DEF7


DEX15


AGI10


VIT10


LUK7





SP40


スキル


痛覚耐性 恐怖耐性 鑑定 悪食 武器庫 修復 アイテムボックス 再生魔法


ユニークスキル





称号


βダンジョン攻略者 自身に打ち勝つもの


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「出てきた……出てきちゃった、夢なんかじゃない」


 洞窟での出来事は夢ではなく現実だったという事に眩暈がする。


頭を押さえ携帯で現時刻を確認する、1時間以上洞窟に居たのだ親も心配しているだろう、そう思い携帯を見ると


『11:25』


「え?」


(今日は卒業式でしたので午前中で下校、確か学校を出たのは11時過ぎ、歩いて神社までは約15分という事は)


「時・間・が・経・過・し・て・い・な・い・」


 どういう事なんだろうか、体に傷を負った、溟? の首を斬った感触はまだ残ってる、それなのに時間が経過していない


(まぁ、いいでしょう。どうせ4月1日に分かることですし、お参りしようと思いましたけど暫くはひかえましょうかね)


 そう自分に言い聞かせ溟は帰宅した……自分の現状を忘れたまま





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「ただいまー」


 玄関を開けて帰ってきた事を伝え靴を脱ごうとしていると


「おかえり、姉さんまたボロイ神社のお参り行ってきたn……だれだ?」


「ただいま、優ちゃん早く帰ってこれたんだね」


「あ……あぁ、俺は卒業式終わったらすぐ下校したからな……って! 姉さん!?」


 驚く弟、溟は靴を脱ぎ優に近づき笑顔で


「はい、優ちゃんのお姉ちゃんですよー」なでなで


 優の頭を撫でていると振り払われ肩を掴まれる


「なんだよその顔の傷跡! 前髪切ってるし! 朝はそんなんじゃなかったじゃないか!」


 怒った顔だが心配するような声で聞いてくる


「優ちゃん怒った顔はだめよ、眉間にしわが寄っちゃう、大丈夫お父さんとお母さんが帰ってきたらちゃんと説明するから」


 そう言い、優の顔掴み胸に埋め頭をなでる


「モゴモゴッ!! ングー!」


「あん! もう! 優ちゃんあまり動かないで、撫でにくいでしょ」


 優の頭を撫でていると


「ぬぐぐぐぐ! っぷはぁ、はぁ……はぁ……はぁ……、死ぬかと思ったぁ。聞きたいことはあるけど父さんと母さんが帰ってきた時に全部聞いてやるからな!!」


 そう言い顔を赤くして2階の自分の部屋に走って行った……少し前屈みなのは気になったが


「優ちゃん、ご飯はー」


「いらない!!」


 バタン!! と扉が閉まる音が聞こえた


「もう優ちゃんったら、照れちゃって顔真っ赤にして可愛いんだから」


 と笑顔でキッチンに向かい自身の昼食を作りに行くのであった

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