第22話 結局かぶるんかーーーい

コローーーーーン!!!


ゴーレムが消え、COFFEE BEANS《コーヒービーンズ》が地面に落ちた。それをゆっくり拾うモカ。


「これで2個目だな」


モカは微笑んだ。


「モカ様!!!ゴーレムを倒しました!!!」


ペットボトルマンが敬礼しながらモカに報告した。


「ご苦労!!!」


モカもまた敬礼をしながら答えた。


「それでは私はこれで!!!」


「うむ。ご苦労であった!!!」


シュワワワワァァァァァァァァンンン★


ペットボトルマンは自分の役目を全うし晴れやかな顔をして消えていった。ありがとうペットボトルマン!!!カッコ良かったぞペットボトルマン!!!!忘れないぞペットボトルマン!!!


「モカ!!!頼むコンロの傷を癒してやってくれ」


バンプが間髪入れずに言った。バンプは自分のことよりもコンロのことが心配で仕方なかった。


「薬草の精霊よ、我に力を与え給え」


ポワワワワァァァァァァァァンンン★


モカの魔法によってコンロの傷がどんどん癒えていく。


「ううううんんんん!!!」


「目が覚めたか?」


「あ、あれっ???俺は気絶していたのか?」


「まぁ、そうなんだろうな。あのゴーレムにボコボコにされてたからな」


「それでなんで今無傷なんだ???」


「それは、そこの大魔法使いが治してくれたからさ」


「大魔法使い・・・・・???」


クイクイクイ!


モカは俺!俺!俺!と言わんばかりに自分を指差してコンロにアピールした。


「マジかよ!!!お前、バンプの修行用リュックサックじゃなかったのかよ???」


「ハハハ!!!だってよモカ!!!今まで色々言われてきただろうけど、リュックサックは初めてなんじゃねぇか???」


「確かにそうかもしれん。それよりもお前たちも治さねぇと色々不便だろ」


「ありがとう。助かる。地面のひんやりさには飽きてたところだ」


ポワワワワァァァァァァァァンンン★


バンプ、ロボ人、キツネ、マキ、ネギマ全員の傷が癒えた。


「スゲェ!!!!!!スゲェよ!!!!!」


キツネが飛び跳ねながらモカの凄さを讃えた。


「全くいつもいつも規格外な強さを見せやがって!!!努力しているこっちが霞むんだよ!!!」


「なら、もっと努力しろ!!!世界一の剣豪になるんだろ!!!俺は世界一の剣豪という称号に興味がない!!!と言うことは、俺がお前のライバルになることがないってことだ。なら成れるだろ」


「お前サラっと、優しさと自慢と説得力をミクスチャーしてくんなよ」


「お二人とも楽しくお話ししているところすまぬでござる」


モカとバンプの会話にロボ人が割って入ってきた。


「拙者ロボ人というでござる」


「あぁ知っている。バンプが何度もお前の名前を呼んでたからな?」


「はっ???」


バンプがモカの言葉に疑問を抱いた。


「モカ、お前もしかして結構前から起きてたのか???」


「さぁ〜、結構前かは知らないが。第16話でそこのネギマって子供がたまたまマーキングをしていたことを、さも自分で考えてやったかのように言った時、(絶対たまたまだ!!!)って、俺も思っていたからな。よく見てみろ!!!その場にいた全員がそう思った。って書いてあるだろ。当たり前のことだが全員には俺も含まれているからな。俺も同じようにそう思っていたんだ。ってことは起きてたってことだ」


「こいつは本当に好き勝手やってくれるよな」


「それよりも村人たちを助けに行くんだろ???」


「そうだ!!!急ごうぜみんな!!!」


キツネが先頭をきって走り始めた。


「バンプ!!!」


キツネを追って走り出そうとしていたバンプをコンロが呼び止めた。


「助けてくれてありがとう」


「助けたのは俺じゃない!!!モカだ」


「いや、俺がゴーレムに襲われている時、自分に注意を引きつけようとして叫んでいるのが、薄れていく意識の中で見えたんだ。あれがなければ俺は助かってなかったと思う」


「別にそんなつもりでやったんじゃない。恩なんて感じなくていい!!!それより、これからどうするんだ?」


「チッキ様のペットを亡き者にしてしまったからなぁ。相当な罰が待っているだろうなぁ。でも、まぁなんとかやってみるさ」


「そうか、あまり無理はするなよ!!!」


「俺はかつてないほどに満足している。こんな充実した時間を過ごしたのは何年ぶりだろうか。このまま一人で旅に出るのも面白そうかもしれねぇなぁ。どっちにしても、ここに連れてきた部下たちをチッキ様のところまで連れて帰らなくちゃいけねぇからな」


そう言うとコンロは指笛を鳴らした。


ピィィィィィィィィィィィィ!!!!!


洞窟の奥へと向かうモカたちとすれ違いながら、コンロの部下たちが奥から出てきた。


「コンロ様、今、村人たちの元へ向かっているっぽい輩が数人いましたが・・・」


「気にするな!!!行かしておけ。それよりも俺は疲れたから帰る。お前たちも一緒に帰るぞ!!!」


「あれっ???コンロ様、サーティは???」


「逃げた!!!」


「そうなんですね。チッキ様カンカンだろうなぁ〜」


「だな!!!」


「じゃあ、帰りやしょう!!!」


(こいつしたわれてんなぁ〜)


バンプは心の中でつぶやいた。


「バンプ!!!村人たちの事はすまなかった」


「気にするな。全員無事なら大丈夫だろ」


「お詫びになるかわからねぇが、この金貨を村の人たちに渡してくれ」


「わかった。元気でな!!!」


「お前もな!!!」


バンプとコンロは固く握手をした。


「チッキ様がお前たちを許さんと襲ってきたは気をつけろよ!!!あのお方はメチャクチャ強いから」


「わかったよ。肝に銘じとく!!!」


「じゃあな!」


「じゃあな!」


コンロと部下たちは洞窟を出るために上の階へと進んでいった。バンプはモカたちに追いつくべく走って洞窟の奥へと進んだ。


「オーーーーーーーーーーーーーイ!!!!!」


捉えられた村人たちを見つけたキツネが遠くから声をかけた。


「キツネーーーーーーーーーー!!!」


「ネギマーーーーーーーーーー!!!」


「マキーーーーーーーーーー!!!」


捉えられていた村人たちは、しりと・・・ではなく、子供たちの無事と助けに来てくれた喜びに沸いた。


「父ちゃん、母ちゃん!!!」


キツネは両親に飛びついた。


「パパ、ママ」


マキは両親に飛びついた。


「親父、お袋」


ネギマは両親に飛びついた。


「みんな無事で良かった。もう、それだけが心配で心配で・・・。うっ、うっ」


キツネの父ちゃんはキツネの無事に心から安堵した。


「マキ!!!あんた勝手にはぐれて。ママ心配したのよ」


「ごめんなさい。ママ」


「でも本当に無事で良かったよ・・・。うっ、うっ」


マキのママはマキの無事に心から安堵した。


「ネギマ!!!全くお前はそんな洋服をボロボロにして!!!でも体には怪我がないようだね。良かったよ本当に・・・。うっ、うっ」


ネギマのお袋はネギマの無事に心から安堵した。


「みんな聞いてよ!この人たちがあいつらを追っ払ってくれたんだ!!!」


キツネは嬉しそうにモカ、バンプ、ロボ人を紹介した。


「人にロボットに紙袋・・・。何かの劇団かね???」


「プクククククク」


マキのパパの言葉にバンプは笑いをこらえた。


ドンッ!!!


「痛ぇっ!!!」


「どうなさいましたかな?マジシャンの方?」


「いえ何でもないです」


モカが八つ当たりに近い感じでバンプの背中を殴ったことは内緒のまま、村人たちとのしばしの歓談の時間が続いた。


「モカ様、この度は私共トツペ村の住民を助けていただき本当にありがとうございました。ささ、一緒に村へ戻りましょう。そして盛大なパーティーを開こうじゃありませんか!!!」


トツペ村の村長がノリノリでモカに言った。


「イイねパーティー!!!」


バンプもノリノリで言った。


「マジシャンの兄ちゃん、あとでマジック見せてくれよ?」


「イイぜ!!!お前たちも頑張ったもんな!!!ご褒美だ!!!飽きるまで見せてやる!!!」


『ヤッターーーーーーーー!!!』


キツネとネギマとマキは一斉に喜んだ。


「そうと決まれば、急いで帰ろうぜ!!!」


「全くあの子は本当にお調子者なんだから。全く誰に似たのですかね。ねっ?お父さん???」


「知るかそんなこと???お前じゃないのか???」


「かもしれませんね」


キツネのお父さんとお母さんは我が子の成長をとても嬉しく思った。


「みんな遅ぇぞ!!!急がねぇと!!!もう日が暮れ始める頃だぞ!!!」


キツネが村人達とモカ一行を急かした。そしてみんなでワイワイ話をしながら、大人も子供も一緒になって、遠足のような雰囲気で村へと帰って行った。




「えぇ〜、それでは改めまして、トツペ村の安全と私たちの命を助けてくださったモカ様御一行。そして、ロボ人様にカンパ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イ!!!!!!」


『カンパ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イ!!!!!!』


みんなの元気な声が満点の星空の下でキラキラと輝いた。


「なぁなぁ、紙袋様!!!あんた本当に強ぇ〜〜〜んだな。びっくりしたぜ!!!」


「私も洞窟に行く前に、バンプ様にコイツがいるから安心と言われた時は、冗談だとばかり思っていました。ごめんなさい」


マキは心の底からモカに謝った。


「俺はマキの魔法しか見たことがなかったから・・・・・、本物ってあんなに凄いんだな!!!」


「私ももっと魔法を練習しなきゃ」


キツネとネギマとマキはモカとさっきまでの戦いの話で盛り上がった。


「おい!!!そろそろマジックはじめるぞぉ〜〜〜!!!」


そして、バンプのマジックショーがはじまった。


「えぇ〜!!!何で俺の選んだカードがわかるんだヨォ〜!!!」


「本当にこの剣をこの箱の穴に突き刺してもよろしいのですか?」


「そんなに身体中に鍵つけて縛って、本当に脱出なんて出来るんですか?」


子供たち3人はバンプのマジックを大いに楽しんだ。


「えぇ〜続きましては、ロボ人様による火渡りでございまぁ〜〜〜す!!!」


「おいおいマジかよロボ人!!!・・・そっかぁ!!!あいつ火が効かねぇ〜んだった!!!」


うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!


顔色ひとつ変えずに炎の中を渡るロボ人に会場は沸いた。


「なんか俺の時より盛り上がってね?」


バンプはその声援にちょっとジェラシーを感じた。



「さぁ!!!!それでは本日最後のイベントになります!!!!!モカ様による秘密の出し物で〜〜〜〜〜す!!!!!」


「おいおいおいおいおい!!!!!モカまで何かすんのかよ!!!!!一体何やるんだ?????」


「それではモカ様、張り切ってどうぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


モカはパーティーのMCにあおられた。


「では、いきます!!!!火薬の精霊よ、我に力を与え給え」


モカは魔法を唱え始めた。


・・・・・すると。


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

ドォォォォォォォォォォォォンンンン!!!!!!!


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

ドカァァァァァァァァァァァンンンン!!!!!!!


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

バァァァァァァァァァン!!!

パラパラパラパラパラ!!!


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

ズドォォォォォォォォォォォンンンン!!!!!!!


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

ボゴォォォォォォォォォォォンンンン!!!!!!!


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

ドォォォォォォォォォォォォンンンン!!!!!!!


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

ドカァァァァァァァァァァァンンンン!!!!!!!


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

バァァァァァァァァァン!!!

パラパラパラパラパラ!!!


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

ズドォォォォォォォォォォォンンンン!!!!!!!


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、

ボゴォォォォォォォォォォォンンンン!!!!!!!


いくつもの花火がトツペ村の夜空に上がった。


「わぁ〜キレイ★」


「素晴らしい★」


「最高の夜だぜ★」


「生きててよかったぁ★」


「美味い酒に合うなぁ〜★」


モカの花火に村人全員が見とれていた。


『たまやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!』


キツネ、ネギマ、マキも花火に向かって大声を出した。


モカの花火を最後に盛大なパーティーは幕を閉じた。今日1日満身創痍で頑張ったみんな、特にバンプとロボ人は村の宿屋に帰りつくやいなや爆睡した。あれだけ寝ていたはずのモカもつられて眠った。


そして次の日。


「さぁ、行くか次の場所に」


バンプが気持ちを切り替えるかのようにモカに言った。


「ところでロボ人はこれからどうするんだ???」


バンプがロボ人に問いかけた。


「モカ殿、ご迷惑でなければ拙者も一緒にお供させてもらえぬでござるか?」


「えっ?別にいいけど」


「軽っ!!!!!!」


「そう思うよなぁ〜。普通はよ」


バンプにはロボ人が過去の自分とダブって見えた。


「本当にいいのでござるか?」


「いいに決まってんだろ!!!!!仲間は多いほうがいいもんな!!!!」


「かたじけないでござる!!!」


「よし!!!じゃあ出発するか!!!」


すると村の入り口には、出発するモカたちを見送ろうと全村人が集まっていた。


「命を助けていただいたうえに、こんな大金までいただいて・・・、もったいなくて使えませんわ。もう、なんとお礼を言えばいいのかわかりませぬ。本当にみなさまありがとうございました。どうかご無事で」


「村長!!!そのお金は俺たちじゃなくて、昨日あんたらを誘拐したやつらが、悪いことしたって反省の意味を込めてくれたやつだ。だから遠慮なく使ってくれ。その方があいつらも喜ぶと思う。そして村をもっとも〜〜〜っと豊かにしてくれ!!!」


「ありがとうございます」


村長の瞳は潤んでいた。


「紙袋様!!!マジシャンの兄ちゃん!!!ロボットの兄ちゃん!!!元気でな!!!」


「俺たちもっと強くなってみせまーーーーーーす!!!」


「いつまでもお元気で!!!」


キツネとネギマとマキが出発するモカたちに声をかけた。


『またねーーーーーーーーー!!!!!』


キツネとネギマとマキは声を揃えて言った。


『ありがとうございましたーーーーーーーーー!!!!!いってらっしゃーーーーーーーい!!!!お元気でーーーーーーーーーー!!!』


村人たちもみんな声を揃えてモカたちを見送った。


「じゃあなーーーーーーーーー!!!!!みんなバイバーーーーーーーーーーーーイィィィィィ!!!!!!」


バンプは後ろ向きで歩きながら村人たちへ向けて手を振った。それにつられるようにして、モカとロボ人も手を振った。


「いつもそうだけど、別れって辛ぇ〜なぁ〜」


「本当でござるぅぅぅぅぅぅ。うっ、うっ、うっ」


今までならバンプが泣いて終わるはずだったのだが、実はロボ人もめちゃくちゃ涙もろかった。


「そこが俺とかぶってんのかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


ある意味、武器がかぶってしまったバンプとロボ人であった。

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