第12話 ダブルアップ
「俺の切り札ダブルアップは俺の身体能力を2倍にしてくれる技だ!!!だが、自分の意思で強くなれるわけじゃない!!!では、どう強くなるのか?その内容を決めるのがあんただよボード!!!」
「何をわけのわからんことを!!!」
「あんたが選んだカードがその条件を決めるのさ!!!この技の発動条件は、発動させたい相手がその条件を示すトランプを選ぶこと。ここでいう選ぶとは、相手に触れることを意味するんだ!!!そう、1番最初に触れたカード!!!それが、俺のダブルアップの詳細を決めてくれる。これを見な!!!」
そう言うとバンプは、手元のカードをボードへ見せた。
「ダイヤの5だ!!!」
「それが何になるというのだ?」
「これがさっきあんたの手に触れたカードだ!!!マークは、どこが2倍になるかを決める項目だ!スペードは腕力!ハートは忍耐力!クローバーは視力!そして、ダイヤは脚力だ!!!そしてカードの数字はその持続時間。だから、このカードの内容は、俺の脚力が5分間2倍になるっていう意味だ!!」
「ふんっ!!!バカバカしい!!!そんなことがあるわけ・・・」
ザシュッ!!!
「ないと思うでしょ?」
ボードは決してバンプから目を離していたわけではない。しかし、瞬間ボードの視界からバンプが消え、次の瞬間には、目の前に現れ、さらに1撃を食らっていたのだった!!!
「ウグォォォォォォォッ!!!」
ボードが初めてうめき声をあげた!!!
「やっと綺麗に一撃決められたな。じゃあ時間も限られているわけだし、どんどんいくよ!!!」
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
先ほどは2撃しか当たらなかった十一波突砕が今度は全てヒットした!!!バンプの速度が上がったことにより、もはやボードの大剣は追いつけなくなっていたのだ。そこには一方的にボードが攻撃されるという、さっきまでとは真逆の光景が広がっていた。
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
尚も反撃の手を緩めないバンプ。
「グォォッォォッ!!!」
ボードは、痛みと悔しさの入り混じった叫び声を上げた。
「許さん!!!許さんんんんんんん!!!」
ボードはやけくそになり両手を振り回した。そんなボードから少し距離をとるように、バンプは後ろへ跳んだ。
「ちょこまか、ちょこまか、鬱陶しいヤツだ!!!貴様は俺を本気にさせてしまったようだな。知らんぞ!もう、俺は知らんぞ!ハァァァァァァ!!!!!」
ボードは力を溜めだした。ボードの大剣が禍々しいオーラをどんどん身にまとっていく。
「まぁそんなことをしても無駄だけどね。最悪避けちゃえばいいんだから」
「ハァァァァァァ!!!」
ボードはさらに力を溜めている。
「ほら、早く打ってきなよ〜」
バンプが挑発する。
「お望み通り打ってやるとも」
「くらえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
そう言うと、ボードはバンプに対して背を向け。禍々しいオーラをまとった衝撃波を放った!!!
「どこに撃っているんだい。こっちだよこっち!!」
そう言って挑発するバンプ。
しかし・・・
「えっ?」
ボードが突然振り向き、自分の方へ攻撃してきたことに驚いた一人の少女がいた。タマである。タマはずっと草原の草の中に隠れるようにして2人の戦いを見ていたのだった。そんなタマにバンプは今まで気がつかなかったのだ。では何故ボードは気が付いたのか?ボードが気がついた理由。それは身長差である。バンプが約180cmなのに対し、ボードは約230cm。この50cmの身長差が、ボードにタマを見つけさせ、バンプにタマを見つけさせなかったのだ。
「タマッ!!!!そこで何している?早く逃げろ!!!」
バンプは大声で、タマに叫んだ。
「わ、わわ、わ、わ、わわ」
しかし、タマは驚きと恐怖のあまり身動きひとつ取れない。
(ダブルアップ中の今なら、間に合うはずだ)
バンプは心の中でそう思い、タマの方へと飛んで行った。
「残念だったなマジシャン!!!少女は今日この場所で、この世から消えてしまうことが決定したのだ!!!」
「間に合え俺!間に合ってくれぇぇぇぇ!!!」
バンプは自分自身を奮い立たせるように大声で叫んだ!!!
ズゴガガガガガガガズーーーーン!!!
ボードの放った衝撃波は、山々を削り取りながら遠く見えなくなっていった。その進行方向をマーキングするかのように、地面が深くエグれていた。そして、衝撃波の巻き起こした煙が長い間あたりを包み込んだ。
「ほう!!」
ボードは感心した。
晴れた煙の中に見えたのは、息も絶え絶えのバンプとそのバンプに必死に声をかける無傷のタマの姿だった。
「バンプ様っ!!バンプ様っ!!!バンプ様っ!!!」
「うぅ、ぐっ、うぅ」
タマの問いかけにまともに答えることのできないバンプ。すでに5分が過ぎダブルアップの効果も切れてしまっていた。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
2人にゆっくりとボードが近づいていく。
「やめて!!!」
近づくボードを遮るように、タマがバンプの前に立ち両手を広げた。
「小娘!お前のおかげでこの男を倒すことができた。礼を言う」
ボードの皮肉な一言にタマは涙を零した。
「私のせいで、こんなにバンプ様を傷つけてしまったんだから、今度は私がバンプ様を守るの!!!」
「フフフ!!!ハハハハハ!!!何を言い出すかと思えば。面白いぞ小娘!!!できるものならやってみろ!!!」
そう言うとボードはタマへ右手を伸ばし手のひらを向けた。
「とは言っても、俺も暇ではないのでな。10秒やろう。その間に俺を倒して見せてみろ!!!ハハハハハ!!!」
そう言うとボードの手のひらにドンドンと力が集まっていき、それはエネルギーの塊となってみるみるうちに大きくなっていった。
「10」
「9」
「8」
何をすれば良いかもわからずにタマは真っ直ぐにボードへと向かっていった。
「このバケモノぉーーー!!!」
タマがボードを攻撃する、もちろん効くはずがない。エネルギー弾の膨れていく音の方がタマの攻撃が当たる音よりもよっぽど大きかった。
「7」
「6」
「5」
「やめてよぉ!!!やめてよぉ!!!お願いやめて!!!」
バキッ!!!
「キャァァァァァァァ!!!!!」
タマはボードの右手に弾き飛ばされた。
「やっ、や、め・・・・ろ」
誰にも届かぬ声量でバンプは叫んだ!!!
「4」
「3」
「2」
バッ!!!
吹き飛ばされた痛みを振り払い、タマはまたバンプのところへと駆け寄り、そしてバンプの前に立ち両手を大きく広げた。
「タ・・・・・、マ・・・・・、に、げ・・・・・ろ」
「1」
ボードのエネルギー弾は先ほどタマへ向けられた時のように大きくなっていた。
「最後まで諦めぬその姿、気迫、素晴らしかったぞ!!!しかし、それでも貴様が無力であることに変わりはない!!自分の行動、自分の非力さ、あの世で存分に後悔しろ!!!」
「0ォォォォォォォォォォ!!!!!」
ドギャァァァァァァァァァァンンン!!!!!
ボードの手のひらからとてつもなく大きなエネルギー弾が発射された。
「バンプ様、ごめんなさい。あの世で私のことを好きなだけ恨んでください・・・」
「タ・・・・・、マ・・・・・」
バンプの声はあまりにも小さくてタマには届かなかった。タマは両手を大きく広げたまま、迫り来るエネルギー弾になす術なく目をつむった。
「フハハハハハ!!!!!さらばだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
バギャァァァズギャァァァァァァァァ!!!!!!!
草原に爆音が響いた。
大きな爆風が起きた。
あたりは爆煙に覆われた。
そしてまた、先ほどのようにゆっくりと煙が晴れていく。
「フフフフ、ハハハハ、ハァーッハッハッハッハッハッ!!!」
少しずつ晴れていく視界に合わせて、ボードの中に自然と勝利の喜びが込み上げてきた。
「おいっ!!」
静かになった草原に響いた声。それはボードへ掛けられた声だった。
そして、そのことに1番驚いたのはボード自身だった。
完全に晴れた視界の中でボードは目を疑った。
バンプの前に、目を瞑ったまま両手を広げて立つタマ。
そしてその前に紙袋が杖を持って立っていたのである。
「なぜだっ!!!なぜそいつらがまだそこにいる!!!なぜ消し飛んでいない!!!」
ボードは動揺を隠せずに大きな独り言のように叫ぶ。叫びながらバンプの後ろに広がる綺麗な景色を見て、先ほどのエネルギー弾がバンプの手前で焼失したという事実を目の当たりにしていた。
「何なんだ貴様は!!!一体何をしたんだ!!!」
ボードはかつてないほど取り乱していた。
「構えろ!!!まず1発いくぞ!!!」
ドバガギャァァァァァァァァァァァァァァンンンンンン!!!!!!!!
モカの杖殴りがボードに炸裂し、ボードは吹き飛んだ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます