Same as you are
りんゆ
0章 プロローグ
第1話 プロローグⅠ
人の気持ちとは酷く不確かなものだ。もちろん目に見えるものではないし、表情に出たとしても、ポーカーフェイスだったら分からない。
しかもその場の気分や状況によってコロコロ変わるものだ。予測しろ、と言われても無理があるだろう。なんたら心は秋の空、とはよく喩えたものだ。
「どうしてウチで働こうと思ったんだい?」
おそらく40歳中盤くらいと見られるここのコンビニのオーナー、
このオッサンは何を考えながら面接してるんだろう。僕はどう思われているかな......。
「え、えっと、家から近いので来やすいですし、人と話すことが得意になりたいから応募しました」
酷く震えた声だ。緊張し過ぎ。オーナーはクスッと笑って気遣ってくれた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ深井くん、ウチはゆるくやってるからね。
あ、もちろんやる事はちゃんとやってもらうよ」
「も、もちろんです、はい......」
ここは、とある田舎町のコンビニエンスストア。田舎と言っても、ご飯時や休日には駐車場がいっぱいになる、それなりに繁盛したお店だ。
自慢はなんと言ってもアイスクリームとかき氷。他のコンビニの追従を許さないだろう。
「いらっしゃいませ!」
事務所の外から、聞いただけで笑顔が伝わってくるような、とても明るい挨拶が聞こえた。
「ウチは若くて活気のある奴が多いから。
深井くんもぜひ、みんなに溶け込んで楽しくバイトができるように、頑張ってね」
「は、はい!ありがとうございます!」
どうやら合格が決まったみたいだ。まさかこんなに早く決まるとは思っていなかったが、好都合。
「じゃあ、シフトを組もうか。一番早い日で、いつ入れるかな?」
「あ、次の月曜日から大丈夫です」
オーナーは一瞬目を見開いて、シフト表を確認した。
「おお、ちょうどいい!知里ちゃんが入ってるから、教育はバッチリだな。
よし、じゃあ月曜日からよろしく頼むよ」
「わ、分かりました。こちらこそよろしくお願いします」
僕はオーナーに一礼すると、事務所を出ていった。人の良さそうな笑顔を浮かべながら、オーナーは僕が扉を閉めるまで僕を見つめていた。
店を出る前に、レジに立っている女の子と目が合った。
女の子はどこか遠慮を含んだ微笑みを浮かべながら、僕に手を振ってくれた。
「!?」
面接後でガチガチに緊張していた僕は、引きつったままのぎこちない笑みを浮かべながら会釈することしかできなかった。
(ダサいな......)
これからのバイトの日々に心を踊らせつつも、可愛い女の子に無様な姿を見せてしまったことに肩を落としながら、帰宅の途につくのであった。
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