経営者の悲劇part2

「田辺さん、あなたに交渉する余地があると思っているんですか?もう出資してくれる先が無いのでは?だから、あなたの会社規模なのに私のようなエンジェル投資家に会いに来ているのではないのですか?」

榊は一切、妥協点を見出すつもりは無さそうだった。


「榊さんは何故、そこまで経営権を欲しているのですか?経営権が欲しいだけなら、私の会社じゃなくても経営権を取得できるような会社はいくらでもあると思うのですが。」

田辺は榊が経営権に固執する理由が検討つかなかった。



「あなたの会社の経営権を欲する理由ですか?あなたがムカつくからですよ。若い時にヤンチャしてたって言っても所詮は補導される程度の事でしょう。その程度のヤンチャなのに、さも自分は悪ガキから更生して成り上がったかのような振る舞いが、ただただムカつくだけです。」

榊からの返答に田辺は驚きを隠せなかった。



「榊さんは昔、優等生だったとかですか?私のことを、そういった形で批判する人たちは大抵、優等生だったので。」

田辺は注目されてから耳にタコが出来るくらいに言われて来たことを、今更ここでも言われる事に苛立ちが隠せなかった。


「私がイラついているのは、若い頃に自分勝手に遊んでいたくせに社会に出て成功している事をひがんでいる訳ではありません。私がイラっとしているのは、補導程度の悪さで『ヤンチャ』と称している点です。」

榊からの予想外の返答に、田辺は思わず口を開いた。


「じゃあ、榊さんは若い頃に何か悪いことされた事があるんですか?」

「そうですね。個人的には悪いと本心では今も思っていますが、社会的には悪いと言われている事はしましたね。」

「それを具体的に教えてください。」

「殺人です。」


榊があまりにも平然と反省もしていない発言に田辺は言葉を失った。

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