第16話 旅人の授業:魔法編②
まずは、基本のキと言えるようなところから始めましょうか、知っている人も多いでしょうが確認の意味も込めて。
魔法は、大別すると『属性魔法』と『無属性魔法』にまず分けられます。『魔法を勉強する』といったときに思い浮かべられるのは前者の事が多いですね。今回話そうと思っているのも属性魔法についてです。
……できれば、無属性魔法についての話もしたいんですけどね、特に身体強化魔法なんかは基本となる魔力操作の練習に最適ですから。
少し話が逸れましたね、属性魔法についてもう少し詳しく話していきましょう。
属性魔法の筆頭として挙げられるのはやはり四元素魔法でしょう。火魔法の火炎属性と爆破属性、水魔法の流水属性と氷結属性、風魔法の突風属性と真空属性、土魔法の土塊属性と錬金属性、この四魔法八属性を特に『四元素魔法』と呼び、学術的には特別な扱いを受けています。……その理由に関しては学者に聞くなりしてください、結構複雑なので。とりあえず、四元素魔法に関しては使える人が多いのが特徴の一つです。
後は、それ以外の属性魔法についても話しておきましょう。とはいっても数えきれないほどには多いので有名なものをいくつか、ですが。
まずは雷魔法、電気を操る魔法です。四元素魔法と比べて使える人が少ないこと、そして適性があっても扱いの難しさから使い手が少ないことが特徴と言えます。
次に光魔法、……あー、ええっとですね……、『聖なる力』である光を生み出す魔法です。経験則から言うと若干語弊のある説明な気もするんですが……、まあ、それはいいでしょう。
あとは、闇魔法についても話しておきましょうか。暗殺者とかそういった後ろ暗い職業に使われているイメージがありますが、強い日差しを弱めたり、手荷物を軽くしたりと、意外と便利な魔法です。砂漠を越えるキャラバンでは使い手がとても重宝されていましたよ。
―*―*―*―
「基本的に、魔法は自分の魔力の属性にあったものを使うものです。なので自分の属性をしっかりと把握しておくことが大事なのですが……」
「あ、それならみんな分かっています。私が【魔力眼】を持っているので……」
ミリアが小さく手を挙げて言った。聞くと既に属性の同じ人が近くになるような席順にしてくれているらしい。
「そうでしたか、それなら話が早いです、次の説明に移りましょう。とはいっても俺が話せるのは初歩的な教科書に載っているようなことまでですが……。とにかく、今回の本題である属性魔法の初級魔法について話していきましょう」
一呼吸、教室を見渡す、みんな話を聞いてくれるいい子たちだ。
これからする説明だけは絶対に聞き流してほしくない、……ちゃんと話せるだろうか。
小さく、本当に小さく息を吐く。弱気になってどうすると自分に喝を入れ、気を引き締める。そんな様子に気づいたのか全員が姿勢を正す。
「……まずは皆さんに質問です。そもそも『初級魔法』とはどのような魔法でしょうか?」
突然の、そして意味の分からない質問に全員が首を傾げる。その中でリーリエが手を挙げた。
「えっと、簡単な魔法、ですか?」
「はい、正解です」
正解だったことが嬉しかったのか、リーリエが顔をほころばせる。
それを見てみんなが次々に手を挙げようとするのを手で制した。
「……ですが、それだけだと生活魔法も初級魔法の一部ということになります。でも実際にはそういう風には扱われない。つまり初級魔法には同じく簡単な生活魔法とは違う点があるということです。その『違う点』、思いつく人はいませんか?」
今度は誰も答えない、おそらく待っていても予想や答えは返ってこないだろうと口を開こうとした、
「…………、」
だが、そっと手が挙がった。
「…………ミリアさん」
「―――っ、」
口を開き、閉じ、また開いては閉じ、悩むように視線を泳がせる。
ただ自信が無い、というわけではないのだろう。
「……無理はしなくていいですよ」
「…………いえ、大丈夫です」
深呼吸を一回、そしてこちらの目をしっかりと見て答える、
「……殺傷能力があること、でしょうか?」
「……はい、その通りです」
誰かが、息をのむ音が聞こえた。
「生活魔法と初級魔法の違い、それは殺傷能力の有無です。生活魔法はせいぜい蝋燭に火を点けたり、ハンカチを湿らせる程度の水を出すのが関の山です。
それと違って初級魔法は、火の玉を打ち出す、真空の刃で攻撃する、土の槍を生み出す、……どれも小動物程度なら容易に殺せる威力を出せます。
それだけの威力、人相手に直撃させたらどうなるかは簡単に予想がつくでしょう、大怪我で済めばいい方です」
教室はしん、と静まり返っていた。
「……と、ここまで脅すようなことを言いましたが要は料理で使う包丁と同じです。あれだって振り回せば危ないでしょう? それをみんな知っているからそんな使い方はしない。
魔法も同じです、使えると便利で同時に危険でもある。違うのは目の前にあるわけじゃないから危険性が分かりずらいこと。そこに関しては今の話でみんな理解できただろうから、これからちゃんとその使い方を学んでいきましょう」
……脅かしすぎてしまったかな、さすがにこの空気の中で次の話題に触れるわけにはいかないし、何より俺が疲れた、少し休憩にしよう。
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