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次々と旗を取り、最後の1本。ここまで順調。順調すぎて怖いくらいだった。相手が練習不足なのか相性がよくなかったのか、それとも……。
防衛のためにヒメと玲音を残し、最後の1本目指して大型液晶モニターのあるエリアを一人目指した。
『最近調子悪いね』
聞き覚えのある声とセリフがする。声のする方にはモニター。
『調子悪いっていうか、やる気が無ぇんだろ』
モニターには、あの時の玲音とヒメが映っている。なんでこのシーンが? まだ癒えていない傷が痛む。急いでこの場から立ち去りたい衝動に襲われた。しかし非情にも映像は続く。
『俺たちは優勝するためだけに組んだチームだ。もともと仲が良いわけでもねぇ』
(その通りだ。僕は、それなのに迷惑をかけて……)
僕は静かに次の言葉を待った。けれどモニターから返ってきた言葉は意外なものだった。
『けどな、練習が疎かになるくらい気掛かりなことがあるなら相談しろよ』
「あれ……?」
『一応聞いてやる』
一言目で勝手にいっぱいいっぱいになって、二人の言葉を僕は、ちゃんと聞けてなかったんだ。
背後から足音がして振り返ると、同じようにモニターを見る相手チームのメンバー、いや……"僕"がいた。それもさっきまでのやる気が出ない僕。僕の姿を見てもうひとりの僕はボロボロと涙を流し始めた。
「僕、みんなと大会に出たいんだ。決勝を諦めたくない」
僕は最後に残った青いフラッグを握り、もう一人の僕に手渡した。
「諦めなくていいよ」
―――次はちゃんと皆に自分の気持ちを話そう。
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