第124話:バブルバスタイム After
楓さんとのお風呂は甘くて刺激的なひと時でとても癒されました。
「普段の優しい勇也君も素敵ですが、狼さんモードになった勇也くんも素敵です。特に耳元で囁く意地悪な言葉zem―――」
「言わせねぇよ!!?? 寝る前になんてことを言うんですかね!?」
寝る準備を終えてベッドに入ろうというところで、またしても俺のモノローグを楓さんにぶち壊された。どうしてわざわざ思い出させるようなことを言うんですかねぇ!?
「だって……勇也君がイケボで『ねぇ、楓さん。顔真っ赤だけど……どうして?』とか耳元で言うのは反則だと思うんですよ! しかも私が困るようなことばかり聞いてくるなんて……勇也君はオニ畜さんです!」
「お、オニ畜!? そこまで言う!?」
そもそも耳元で囁きたくなるのは楓さんの反応がものすごく可愛いのがいけないんですよ? いやいやと首を振りつつも、顔を熟れたリンゴの様に真っ赤にしながら小声で答えてくれるからつい楽しくなるんだよね。
普段は俺のことをからかってきたり、積極的に密着してくるのに、こういう時になると途端に子猫の様に大人しくなって可愛い声で鳴くものだから理性が利かなくなる。
「や、やっぱり楽しんでいたんですねっ! もう、勇也君の鬼畜! エッチ! イケボで言葉責めとかやめてください!」
「……わかった。楓さんがそこまで言うならもうしないよ……ごめんね」
「え……? や、やめちゃうんですか?」
だって楓さん、嫌なんだよね。楓さんが嫌がるようなことはしたくないからさ。俺としては楓さんの可愛い声が聞けなくなるのは残念だけど、耳元で囁くのはもうやめるよ。
「え、あの……その……も、もう少し手加減と言いますか……わ、私としても勇也くんに耳元で囁かれるのは好きと言うか、むしろ大好きなので……や、やめないでほしいです……」
「最後の方、ぼそぼそ言っててよく聞こえなかったんだけど……楓さんはどうしてほしいの? やめてほしいの? それとも……やめないでほしいの?」
うぅうとうめき声をあげる楓さん。限界まで朱に染まった頬を膨らませて葛藤している姿は申し訳ないけどすごく可愛いです。
「や、やめないでください! もう、勇也君の意地悪! 寝る前になんてことを言わせるんですか!? そ、それに私は可愛い声で鳴いたりなんてしていませんよ! 記憶を改ざんしないでください!」
「いやいや、楓さん。お風呂でのことをもう忘れたの? あんな蕩けるような声で『勇也くん、好きです』なんて言われたら俺の理性君は一瞬で絶滅だよ」
「きゃぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?? 勇也くんのバカ! 恥かしんですから思い出させないでくださいよぉ!」
楓さんは悲鳴を上げながら枕でバシバシと俺のことを叩く。地味に痛いからやめてほしいけど、顔を真っ赤にして照れるのが可愛いから差し引きゼロかな。
「勇也くんが変なことを言うからいけないんです! ほら、もういい時間ですから寝ますよ! お布団の中に入ってください!」
もとはと言えば楓さんが思い出させるようなことを言ったのが原因では? と思ったが口にはしないで大人しく一緒に布団の中へと入った。すると当然のように楓さんが身体を寄せてきて俺の胸にぽふっと頭をくっつけた。
じぃと上目遣いで見つめてくる楓さん。無言の主張の内容はわかっている。ご要望通りぎゅっと優しく抱きしめた。
「えへへ。やっぱり寝るときはこうでないとダメですね。勇也君の腕の中は温かくて……ぽわぽわで……とても幸せです」
蕩けるような表情に言いながら楓さんも俺の腰に腕を回して密着度を高める。先ほどのお風呂で身体に沁みついたシナモンの甘い香りに癒される。
「おやすみなさい、勇也君。大好きです」
「おやすみ、楓さん。大好きだよ」
今夜はぐっすり眠れそうだ。
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