2.不景気なニュースが多いけど
「最近不景気だよな~。なんか、今度うちの会社も派遣切りするとかで騒いでたわ」
月(るな)
「派遣が切られても、私は只野さんにブーストしますよ」
とりちぃ
「暗いニュースばっかで気が滅入るよね~」
ななか
「FORKに不景気なんて言葉はないよ~」
麗華
「ただのんも最近配信時間バラバラだけど、仕事忙しい?」
Kiki
「ただのんの声を聞かないと寝れないんだから、配信してくれなきゃ嫌だよ」
ぴよち
「疲れている時は思い切って休むことも大切・ヨ」
紺野という彼女ができたことはFORKの住人には言ってはいなかった。彼女持ちだとバレると、遊べる女リスナーとブーストしてくれる女リスナーが減りそうだったからだ。
「まぁ、俺は正社員だから安定だけどさ~、バタバタはしてるよな~」
適当に話を合わせておく。
たっちゃん
「男は稼がなきゃならないからな~正社員うらやま」
ふーみん
「ふーがブースト頑張って、ただのんを元気にしてあげるね!」
アヤメ
「次のお休みの時でも、また遊びます~?」
呑兵衛@酒に呑まれる全ての人に愛を
「そんな時はお酒を呑んで忘れてしまうのがいいって、おじさんから君に教えてあげよう!」
黒夜/低音系ボイス
「おいおい、今日は覇気がないねぇ、楽しもうぜ!」
「疲れてるんかね~。明日の配信ではまた元気な姿見せるから、短いけど今日はこの辺でお開きということで。また明日の配信、来てくれよな~」
今日はだいぶ適当な配信をしてしまった自覚がある。派遣切りのニュースを選ぶあたりが相当だと、自嘲気味に笑ってしまった。
紺野とのデートやスケジュールを考えると毎日配信するのは結構きつい。今までは仕事が終わって、帰ったらすぐ配信ができたから時間はたっぷりあった。
今では、紺野とデートした日はかなり遅い時間の配信になってしまう。お泊りがないだけ、まだ助かってはいるがそれでも随分変則的な配信になってしまった。
だが、これが俺のもう一つの収入源だ。これをやっていないと、紺野とのデート及びFORKの女と遊ぶ金が捻出できない。それだけはなんとしても回収しなければならない。
いくら正社員とは言え、俺は安月給の内勤だ。仕事が大変だということもないが、やっぱり遊ぶには少なすぎる。今までの俺はこの給料で、一体どう生活してきたんだろうか。
「ま、でも派遣よりはマシか」
冷たくなった焼き鳥をかじりながら、ぼんやり考えた。
派遣切りに怯える気分はどんなだろうか。通帳に入っている金額と毎月振り込まれる一定の給料を考えて、遠い国のことのように思う。
俺にはなんの関係もないことだ。こうやって、毎日が過ぎていくに違いない。
硬い肉がひどく飲み込みづらかった。
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