第454話 気になる人気……あ、順位
「どんどんぱふぱふっ」
「わ〜わ〜」
パチパチパチ
拍手だけ一拍遅れたが、ぴょんの言葉に応える俺たちに、ドヤ顔を見せるぴょん。
ちなみに拍手をしたのは俺なのだが、何だって大和とゆめは事前打ち合わせでもしてたかのように反応出来たのだろうか?
さては……
「えー、今大会エントリー者は総勢7名という、ギルド内の半数以上が参加する血で血を洗う戦いとなりました」
そして俺の脳内一人ボケを置き去りに、ドヤ顔からキリッとした表情に切り替わったぴょんが静かな声音で語り出す。
そうか、俺たちそんな壮絶な戦いを繰り広げてたのか。……たしかに週明けの出勤はちょっと怖いもんな。いや、これはただ俺が血を流しただけのものだけど。
「戦いに破れ散った戦士、志半ばで倒れた賢者、まだまだ舞台に立つには及ばなかった無謀な村人、多くの参加者が傷つき、涙するであろう結果に、小生も胸が痛みます」
そして淡々と続く語りに、大和とゆめがわざとらしくめそめそした素ぶりを見せたので、俺もそれに合わせてとりあえず俯いてみせる。
でもいいかい? 一人称「小生」は男性しか使えない書き言葉だからな? 国語科ぶってるけど、今使うのは適切じゃないからな?
変に口を出してこの口上を止めるのもあれなので、言わないけど、と思ったら——
「おいツッコミ班! 小生は使い所違うってツッコめよ! 怠慢だぞ!」
「ええっ!?」
「あたしは女なんだから小生は使えねぇだろうがっ」
「あ、そうなんだ〜。勉強なるな〜」
「ちなみに歴史的に女性の方が地位が低い時代が長かったから、敬語の体系に女性の謙譲語の一人称はないんだぜ」
「ほほ〜。さすが歴史の先生だね〜」
と、まるで教育番組かのようなやりとりが生まれ、ゆめは対面に座る二人へ感心するような目線を送っていた。
ちなみにこれも諸説あるが、女性のそういった一人称としては「
勉強なったね!
【Teachers】がお送りしました☆
「とりあえず続けてくれよ……」
そんなこんなでもう色々疲れてきたので、俺は横道だらけの話の軌道を整えるべく声をかけた。
ほんと逸れると長いのは、お家芸だなぁ。
授業の様が目に浮かぶぜ。
そしてようやく俺の言葉に頷いてくれて——
「まずは、獲得票数0票の、次回に期待したいメンバー!」
ぴょんの進行が再開した。
「3人います!!」
そしてさらに出て来たワードに、ゆめと大和が緊張の面持ちを見せる。
たしかに頑張って撮った写真なのに、0票は悔しいか……。
ん? いやでもそもそも頑張ったか?
……これは個人差あるよな。
先ほどの俺が撮ったゆめの写真を思い返し、そう思う。たしかに可愛かったんだけど、あれはゆめが好きにポーズをとってただけじゃないか?
まぁもう何でもいいんだけど。
きっと一位はだいだから。
あの美しさだからな、揺るぎないだろう。
そんなことを考えながら、俺はぴょんの発表を待つ。
そして——
「あーす! ゆっきー! そしてなんと、ゆめだーーーー」
「ぴえ〜ん」
発表された3人の中に入っていたゆめと、入っていなかった大和で、浮かべた表情が異なった。
って言っても、ゆめはそこまで悲しそうってこともないんだけど。
つーか大和も大和で、ぴょん票が確定してあったはずだから、不安になる必要はなかったのではなかろうか。
雰囲気に合わせる二人だなぁ。
「続いて獲得表数2がせんかん!」
「えっ!? 溜めとかなし!?」
で、即座に票数と共に名前を告げられた大和が、喜びよりも驚きの表情でツッコミをいれる。
でも2票って、ぴょんと誰だ?
「ちなみにせんかん票いれたのはあたしとリダなー。リダはゼロやんとのコンビ票だけど」
「お〜。さすがリダ。メンズの味方だね〜」
「なんか、俺と大和が完敗しそうだから優しさ見せてくれたんじゃないかって感じるけどな」
俺の心を読むかの如く、ぴょんが内訳を教えてくれたけど、なるほどね。
でもあれだろうな、リダはだいの写真に反応なかったから、きっとだいの写真を見てなかったんだろうな。
見てたら間違いなくだいに変えてただろうし。
でもこれで俺が1票以上は確定……って、あれ? 0票の次が2票ってことは、俺はそれより上、なのか?
「ちなみにあーすも最初はせんかんたちの写真派だったんだけどなー。ゼロやんのピン写真あげたら、そっちに票変えてたぞ」
「あ、そうなんだ」
「さすが男女問わず人気だね〜」
ふむふむ。ってことは、俺にはリダとあーすと、それ以外の票があるのか。
……まぁだいが入れてくれて、3票か?
なんか、割と接戦だったんだなー。
とかね、そんな風に考えていると。
「そして1位の発表の前に、審査員特別賞!」
「なにそれ〜?」
「今作ったやつだなきっと!」
「審査員特別賞が与えられた者には100票が贈呈されます!」
「いやおい!? どんな暴君だそれ!? 昔のクイズ番組かよ!?」
急なぴょんの思いつきが告げられて、速攻で俺は自分の
「100票入ったらその人が1位確定だよ〜?」
「じゃああたしが1位!」
「いやさっき自分で1位の前にって言ってたぞ……」
「あ、ミス!」
しかしさすがぴょん、適当の権化だなー。
そんなぴょんのノリにみんな笑ったり苦笑いしたりで応えるが、つまり1位は、俺かだい、ってことらしい。
そうなると、これはもうだいの圧勝間違いなしだろう。
だいの写真を見たメンバーみんな、惚れ惚れしてたわけだもんな。
ここにいないだいが王様権獲得、なんて平和な世界なのだろうか……!
「ちなみにぴょんは何票だったの〜?」
「途中まで4票で1位だったはずだし、そのくらいか?」
「あ、わたしはだいに変えちゃった〜」
「いやぁ、だいの写真はたしかに強かったからなぁ」
「ちなみに俺もぴょんとゆめに投票してたけど、だいに変えた」
「む〜けち〜」
「倫は愛の人だもんなぁ。ちなみに俺も愛の1票を入れたけどな!」
「ん〜……? ……途中まで4票だったけど、2票減って、でもせんかんと同数じゃないってことは……あ」
「「あ」」
自分に100票とか言い出したぴょんの発言から、俺たちの投票分析が始まり、そしてゆめが気づいたことに、俺と大和も揃って気づく。
そして俺たち3人揃って、ちょっと申し訳ない気持ちでぴょんを見れば——
「うっせーな! どうせあたしはせんかんの1票だけだったよ!!」
と、見事なプチ逆ギレを見せて、ぴょんがガーッとビールを仰ぐ。
そんなぴょんへ大和が頭をポンポンと慰めるが、まぁ不正はダメだし、大和の愛は確認出来てんだからいいだろう。
さて。
「1位はゼロやんかだいだね〜」
「女神か、ギルドの人気者か、たしかに考えてみりゃこうなるのは予想出来たか」
「それじゃあぴょん、発表よろ〜」
それでは気を取り直して仕切り直し。
そんな空気へゆめが話題を転換し、真っ赤な顔のぴょんが手元の紙を見ながら、ゆっくり口を開いていく。
だいの美しさの前に全ては後塵と化すだろう。
でもなぜか、ちょっとドキドキする俺もいたのは、秘密である。
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