第245話 選ばれたのは

「お~~3人分かれたね~~」

 

 ジャックの声が示す通り、3人が指差した相手は三者三様。


「ま、情報を制すのは戦いの基本だからな!」

「ちょっとずるい気もするけどね~」

「でもこのデザインは俺好みなんだよなぁ」


 嬉しそうな声を出しつつ堂々と胸を張るぴょんだが、まず1票を獲得したのはぴょん。そのぴょんを指差したのは、大和だった。


 正直俺も本人に聞くのありだったのかよと思うけど、自分の趣味と合致し、見た目もカッコいいサングラスは嬉しかったんだろうな。

 そのサングラス、今ぴょんがかけてるんだけど。


 ちなみに胸を張っても相変わらずすらっとしてるなーとか思ったのは、絶対口にしないぞ。


「お選び頂き光栄です」

「迷ったんだけどね~、可愛さと実用性とでゆっきーの勝ち~」


 そして少しだけ嬉しそうな目をして、ぺこっと小さく礼をするゆきむらに1票を投じたのは、実用性という言葉を出したことからも分かる通りゆめ。

 迷ったっていうのはぴょんのとなのかな? でもゆきむらのプレゼント見た時の反応、ほんとに嬉しそうだったの印象的だしな。

 納得の結果だ。


「え、私でいいの?」

「勝因はタイミングだなー」

「タイミング?」


 そしてよく分からない勝因を告げるぴょんに少し驚いた様子を見せるが、二人に続いて1票をもらったのはだい。

 タイミングだったらジャックじゃないのか? とか思うけど、料理系のものもらってちょうどいいって、なんだろう?

 自炊に目覚めた……わけじゃないよな? ぴょんだって一人暮らし歴、もう長いわけだし。


 でもこれで優勝候補は、ぴょん、ゆきむら、だいか。

 俺が0票なのはまぁ分かっていたとして、驚きの気配りを見せたジャックのポイント高そうだと思ったけど、感性に触れるようなものじゃなかったかな?

 うーん、この3人の中だと、誰が勝つんだろ。


「っしゃ、じゃあ第2位指名といくか!」

「おっけ~」

「もう決めてるぜ!」


 そして仕切り役のぴょんが決着をつけるべく大和とゆめに声をかけたので、俺たちは静かに決着の時を待つ。

 でもゆめはたぶん2位がぴょんだろうし、大和がだいに、ぴょんがゆきむらに入れない限り、優勝はぴょんになるのかな。

 でもたしかにあの青バラは綺麗だったなぁ。


 と、何となく決着の予想をする俺だったのだが。


「せーのっ!」


 ぴょんの合図で3人が指差したのは。


「マジか!」

「ん~、迷ったんだけどね~」

「とはいえ、感謝度が高いからなっ」

 

 指差した側もその結果に少し驚いている様子だったが、その結果に驚いていたのは指名された側も同様のようで。


「え、ええと、これはどうなるのかな~~?」


 3人の指名を受けたジャックは、珍しくちょっと困惑した様子を見せていた。

 ジャックとしても1位指名をもらった誰かが優勝すると思ってたんだろうな。


「んだよー、考えること一緒かよー」

「一人の1位取るより、3人の2位取る方が難しい気がするね~」


 予想外の展開にルールを考えたぴょんがお困りの様子を見せるが、たしかにゆめが言う通り特定の相手の1位を取るより、満遍なく全員の票を集める方が、こういうセンスバトルでは難しい気がする。

 何かしらのステータス特化型キャラより、バランス型のキャラのが安定して使いやすい的な、そんな感じだよね。


「3位発表するかー?」

「あ、じゃあさ、見てる側は誰が1位だと思ったか発表してもらうのはどうだ?」

「お、冴えてるな大和くん!」


 そんなお困りのぴょんに救いの手を差し伸べたのは大和だった。

 しかしぴょんよ、急に大和くん呼びて、大和は助手か何かかよ。


「じゃああたしら以外のみんなで、総合的に1位だと思ったやつ決めて!」

「むむ、迷いますね……」

「そうね、ちょっと待ってね」

「総合判断か~~。誰かな~~」


 そして大和の提案を受けたぴょんが、早速俺たちに伝えてくる。

 みんな迷ってる様子だけど、うーん、3人の受け取った時の反応、意外性、実用性、もし自分だったら……ここらへんの基準で総合的な1位を考えると……アレだよな。


「じゃあいくぞー」

「え、もう?」


 そして考えさせてくれること15秒ほど、早くも指名させてこようとするぴょんにだいが少し焦るが、他のメンバーは決まった感じっぽいな。


「せーのっ!」


 そんな焦るだいを気にすることもなく、選択を迫るぴょんの掛け声が発せられ、俺たちはそれぞれ自分が1位だと思った相手を指差すと……。


「むむ! これは!?」

「また並んだね~」

「となると、今度は4人に2位指名してもらうのか?」

「なんかややこしくなってきたなー」


 獲得した票はジャック1票、ぴょん1票、だい1票、俺1票と、てんでバラバラの結末に。

 ちなみに俺が選んだのはジャックで、だいがぴょん、ジャックがだい、そして俺を選んでくれたのがゆきむらね。

 今日の展開を想像し、みんなが困らないようにという配慮を見せたジャックに俺は票を入れたんだけど、だいはゆめがもらった青バラがいいなって思ったのかな?


 この状況にややこしくなってきたとぴょんがちょっと頭抱えてるけど、ここまでのを集計すると、俺が1位1票、だいが1位2票、ぴょんが1位2票、ゆきむらが1位1票、ジャックが1位票・2位3票、ゆめと大和が得票0、か。

 だいとぴょんが同率だけど、ジャックは1位票だけでなく2位評価を3人分集めてるし、なかなかジャッジが難しいな。


「主婦だからね~~、自分で買わない調味料とか、使ってみたい気はするよね~~」

「あ、それなら今度お邪魔する時買っていくわね」

「え、いいの~~?」


 考え込む様子を見せるぴょんをよそに、結局誰が1位なのか決まらない状況の中、だいに投票したジャックがのんびりとだいを選んだ理由話してるけど、やはりジャックは既婚者故の発想だったみたいだな。


「私はゼロさんの欲しいなって思いました」

「あー、ありがとな」


 そして俺は俺で隣に座るゆきむらからちょっとしたどや顔でそう告げられたけど……それ本当にあげたプレゼントで選んだのか……?

 人で選んでない? 


「よし決めた!」


 そしてしばしの間この決着をどうつけるべきか、頭を抱えていたぴょんがばっと顔をあげて大きな声を出す。

 同率1位で決着が、平和的かな? そんなことを考えつつ、各々会話をしていたメンバーも、一様にぴょんへ視線を送ると。

 

「ゆめとせんかんが0票だから罰ゲーム!」

「なにそれ~?」「なんだとぅ!?」


 なんですって!?


 ここでまさかのぴょんクオリティ。

 こうも決着がつかない展開を予想していなかったからか、優勝者を決めるでもなく、獲得票がない二人に罰ゲームを言い渡すではありませんか。

 その言葉にさすがのゆめも少し慌てた様子を見せ、大和も大げさに驚いていた。


 いや、何その展開、雑すぎない!?


「せめて2位投票くらいしたら?」

「そうですね、なんか不公平な気もしますけど……」

「主役二人が罰ゲームはなんかちょっとね~~」


 だが、罰ゲームを言い渡された二人の様子を見てか、ぴょんの無茶ぶりに苦笑いを浮かべただい、ゆきむら、ジャックが苦言を呈すると。


「しょうがねーなー、じゃあ2秒と決めろよー?」

「えっ、いきなり?」


 一応可哀想という部分を汲んでくれたのだろう、とはいえ考える隙などほとんど与えられる暇なく、ぴょんが俺たちに2位を決めるよう急かしてきて。


「せーのっ!」


 その合図とともに、急なことに慌てつつも再び俺たちは誰かを指差すことに。


 そして。


「さっすがゼロやんっ、分かってるね~」「くあー、マジかー!」


 弾んだ声と笑顔を俺に振りまくゆめと、頭を抱えて叫ぶ大和とまさに天国と地獄みたいな構図が出現。

 ちなみに咄嗟だったからみんな考える暇もなく感覚的に2位を選んだんだろうけど、だいが選んだのはジャック、ジャックが選んだのはぴょん、ゆきむらが選んだのはだいだった。

 ジャックのプレゼントは万人にとって実用性が高かったし、ぴょんの青バラは誰が見ても綺麗だった。そしてだいのプレゼントを選んだのは、みんな料理するメンバーだな。

 投票する側も、それぞれの個性が出てるなぁ。


 ちなみに俺が2位として選んだのは、ゆめの反応からも分かる通りゆめ。

 これはさっき、大和とゆめが0票だから罰ゲームって話になり、2位投票するってなった瞬間にゆめしかないって思ったから。


 いや、だってね?

 罰ゲームってなるんだったら、大和一人で十分だろ?

 いやぁ、悪いね大和くん!


 ゆめに笑って答えつつ、内心では大和にニヤニヤの俺ですよ。


「結局2位票もだいさんとぴょんさんが同率ですね」

「あ、そういえばそうだな」

「ってことは、せんかん罰ゲームで決定だな!」

「ゆめちゃんは脱出成功~」

「ぬおー、祝われる会のはずなのに!」

「うるせえ男がごたごた言うな!」


 そして冷静に結果を分析したゆきむらの言葉に俺が同意するや、同じ結論に至ったのか、改めてぴょんが大和に罰ゲーム宣言。

 それに大和がちょっとごねるけど、有無を言わせないぴょんの前にあえなく撃沈。

 いやぁ、この二人が付き合ったりしたら、尻に敷かれるんだろうなぁ。


「罰ゲームって何するの~?」

「今決めたから、何も用意とかないと思うけど……」

「一気飲みとかは危ないからダメだよ~~?」

「デコピンとかですか?」


 そして女性陣から誰一人擁護がこない大和くん。

 何だかんだ、みんなちょっと期待しつつ悪ノリしてるとこもありそうだけど、ゆきむらよ、デコピンって小学生かっ。


「そうだなー、何にすっかなー」

「いや、決めてねーのかよ!」


 だが、みんなが気になる内容も、実は未決定だったようで。

 

 思わずツッコんだ俺だけど、まぁ対象が俺じゃないから気楽なもんだよね!


「え、えっちなのはダメだぞ?」

「変態かよっ」


 そして恐る恐る尋ねた大和に、すかさずぴょんのパンチが飛ぶ。

 いや、うん、今のは大和が悪いよね。


 というかそれおっさんが言うな。

 女の子が言うんだったらちょっとS心がくすぐられて可愛いセリフだけど、お前もう28のおっさんだからな。自重しなさい。


 って、あ、俺もか。

 すみません、自重します。


「よしっ、決めた!」


 そして考えること十数秒、すっとサングラスを額の方にずらしたぴょんは、まるで悪戯を思いついた子どものように、わくわくの好奇心満載の目をしながら笑い、高らかに声をあげる。

 みんなの視線も、ぴょんが何を決定したかに首ったけ。


 さぁ、大和の運命やいかに!!






―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―

以下作者の声です。

―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★― 

 綾〇でした。

 あ、いえ、なんでもありません。タイトルのせいです。


 ナンバー1にならなくてもいい、元々特別なオンリー1ですからね!


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本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。3作目となる〈Yuuki〉が本編と隔日更新くらいのテンポで再開しております。

 本編の回顧によろしければ~。

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