第80話 またね
〈Zero〉『おーっす』
みんなと別れ帰宅後、仮眠どころじゃない仮眠を取った午後6時過ぎ、活動開始にはまだ早いが俺は久々にログインをした。
いや、なんか久々な気がするけど、ログインは木曜以来だからそうでもないんだけどね!
当然この時間ではギルドにはほとんど人が……おっつ。
お前だけかーい!
〈Daikon〉『あ、うん』
〈Zero〉『なんだよそれw』
もしこれが
極力軽口を意識しながら俺は
〈Daikon〉『みんな平気だった?』
〈Zero〉『あーもう超元気。なんだったら全員うちでシャワー浴びて、洗濯までしてったぞ』
〈Daikon〉『え!嘘みんな!?』
〈Zero〉『ああ、ゆきむらの作ってくれた朝ごはんうまかったし』
〈Daikon〉『・・・ふーん』
〈Zero〉『あ、なんだよ、食べたかったとかか?』
〈Daikon〉『別に』
〈Zero〉『なんだよ、何怒ってんだよ?』
〈Daikon〉『・・・楽しそうでよかったわね』
何々一体どうした!?
取り繕うと思っていたのに、それどころか何故かだいが明らかに怒っていく。
モニター越しの
何だ、どうしたんだ!?
〈Zero〉『えーっと、だいさん?』
〈Daikon〉『何ですか?』
敬語!!!
まさかの敬語!!!
突然できた心の壁に、俺の心がえぐられる。
〈Zero〉『す、すみません。私は何をしてしまったのでしょうか』
〈Daikon〉『別に。何も思わないならいい』
あーもう、どうしたのこいつ!
好きな人とうまくいってないのか!?
それで俺に当たってんのか!?
ブブッ
モニター越しに不機嫌なだいに戸惑っていると、近くに置いていたスマホの通知がきた。
土曜に誰だよって……あ!!
神宮寺優姫『昨日今日とたくさんありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしています』
Talkの通知は、ゆきむらからだった。
そしてゆきむらの通知の下には、
ああああああああ!!
うっわ、そうじゃん、後で返事しようと思って……忘れてた!!
ま、まさかこれか!?
このせいなのか!?
いや、でも別に俺のこと好きじゃないんだし、連絡返ってこないくらいであんなに怒るか……?
北条倫『どういたしまして。来週の試験、頑張ってな!』
とりあえずぱっぱとゆきむらに返事を送って、俺は意を決してだいへ返事を打とうとする。
……でも、うーん、そうだよ! 俺には失うものなんて、ないじゃん!!
打とうとして、やめた。
そして違うボタンを押す。
ちょっと、押すのは緊張したけど。
Prrrr.Prrrr.Prrrr.Prrrr
『何よ』
「あ、いや、そのごめん」
『何が?』
「ほら、返事……してなかったから」
『それで?』
「文字じゃなく、直接、謝りたくて」
『ふーん……』
「うん、ごめん」
『ねぇ』
「うん?」
あ、ちょっと機嫌直った気がする。
声の様子で何となくわかる、だいの様子。
あー、俺それが分かるくらいには、こいつのこと分かってきてたのか……。
うーん、なおさらこいつのこと、誰かに渡したくないな。
『今から行っていい?』
「はい?」
え!?
えええええええええええええ!?
何なにどうした!?
どこに行っていいってことですか!?
って、その流れは
え? え? 何がどうなってそうなった!?
『夕飯もう食べた?』
「ま、まだですけど……」
『作ってあげるわよ』
「え!?」
待て待て待て! いったいどういう風の吹き回しだ!?
わからん! だいの思考回路がわからん!
ゆきむらがご飯作ったからって、私も出来ますよアピールか!?
いやでも好きでもない男の家にきて、ご飯作ってあげるって、だめだよだい!
『ゼロやんちって、wi-fiとんでたわよね?』
「あ、あるけど」
『うん、ならよし』
いや、何がよし!?
え、何の確認!?
『じゃあ、19時半にご飯炊けるようにしておいて』
「は、はい……?」
『わかった?』
「わ、わかりました」
『じゃああと30分くらいしたら着くと思うから』
「お、おう」
『またね』
ガチャ
「またね、って……えええええええ!?」
昨日の夜、というか今日の未明にも聞いた「またね」とは意味が違う、今の「またね」。
いやマジでこれ何!? 何イベント!?
え、俺なんかイベントフラグ立てたっけ!?
ってああもう! これ
落ち着け俺! まずは深呼吸だ!!
不機嫌なだいからの、まさかの
だが、もう今さら止めることもできない。
しかしあの話を聞かされて、半日くらいしか経ってないのに、もう会わなきゃいけないとか……ちょっと拷問だろこれ。
マジで
とりあえず。
「米炊いて、掃除するか……」
朝までみんながいた部屋に一人でいるのは寂しかった気もしたが、やはり誰かが来ると思うと
しかもそれが
だいが来ると言っていた時間まで30分。
炊飯器をセットしてから、ちょっと念入りに掃除したのは、秘密だぞ。
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