第68話 戦いの果てに

「みんなで写真撮ろ~」

「お、いいな! ゼロやんよろしく!」

「お、おう」


 変にドキドキしてしまった俺を現実に戻してくれたのは、ゆめの言葉だった。

 それに続いたぴょんの言葉で俺がカメラマンに指定され、俺はスマホのカメラを起動し、4人のコスプレ集合写真を何枚か撮影した。

 俺のアルバムに保存されるみんなの写真。


 あー、これ永久保存だな。


「あ、今度はわたしとツーショットも撮ってね~」

「あ、私も撮りたいです」

「じゃああたしも!」

「はいはい」

「私が撮るわよ」

「あとでまとめて送ってね~」


 続いて今度はだいに俺のスマホを渡し、だいがカメラマンとなり、俺と腕を組んだゆめ、同じく腕を組んできたゆきむら、そしてなぜか肩を組んできたぴょんとのツーショット写真をそれぞれ撮っていく。

 俺のアルバムに増えていく、幸せな写真たち。


 うん、なんていうかね。たまにはこういうおいしい思いしてもいいと思うだよね、俺。


 でも、だいは撮ろうとは言ってこないか……。

 しょうがない、集合写真で我慢するか……!


「だいはいいの~?」

「わ、私は別に!」

「ほんとかー?」

「だいさん、素直に言えばいいじゃないですか」

「え?」

「だって、顔に私も撮りたいって書いてますよ?」

「な、はぁ!?」


 え!? どこをどう見たらそう書いてるの!?

 でもいいぞ! みんな頑張れ!!


 顔に出さないように、心の中で全力で応援してるのは秘密だ!


「いいぞゆっきー!」

「いけいけ~」


 そして。


「あーもう! 撮ればいいんでしょ撮れば!」


 ついにだいの牙城を崩したHPを0にした


「うっわー」

「相変わらずツンデレだね~」

「ほら、早くしなさいよ!」


 ツンツンしてきながらも何だかんだと俺のそばにやってくるだい。そして俺の左隣にだいが立ち、カメラマンはゆきむらだ。

 あー、やっぱこいつのチャイナ、可愛い……。


「だいさん、もっと笑ってください」

「べ、別にいいでしょ!」

「ほらゼロやん、もっと近づいたれー」

「お、おう」

「わたしみたいにしちゃえばいいのに~」

「あー、もう! わかったわよ!!」

「ええ!?」


 ゆめの言葉に何を思ってそうなったのか、だいが俺の左腕を抱くように、寄り添ってきた!


 え、やばい、やばいって!!!


「撮りますね」

「あ、まっ」


 やばい! 絶対変な顔してた!


「おお~」

「これはこれはー」

「いい写真ですね」

「う、うるさいわね!!」

「え?」


 ゆきむらが撮った写真を覗くぴょんとゆめ。

 写真を見てはいないのだが、だいは何でか照れている。

 ちなみにまだ、俺の腕にくっついたままで。


 つかこの状況やばいな。でも俺から離れたくは、ないし……。

 でも早く写真は見たい……!


「おいおい、いつまでそうしてんだー?」

「あ」

 

 ぴょんの言葉に慌てて離れるだいに、俺は思わずそれを惜しむような声を出してしまった。

 あー、あとで怒られる予感……!


「あ、あとでちゃんと送りなさいよ!」

「は、はい」


「じゃ、着替えてくるかー」

「楽しかったね~。ゼロやんお留守番よろしく~」

「よろしくお願いします」

「お、おう」


 そしてゆきむらからスマホを返され、俺は再び一人取り残された。

 こうしてまた一人になると寂しいが、こればかりはしょうがないよな。


 とりあえずみんなに写真送るかと、俺はスマホのアルバムを開く。


「あー、マジで幸せ者だなこれ」


 みんなの集合写真はみんないい笑顔で可愛いし、ゆめとの写真は言わずもがな、完全に人に見せたらアウトな写真になっている。

 ゆきむらとの写真は、あ、さっきの笑顔じゃなくてまたいつものぽーっとした顔か。

 ぴょんとのツーショットは、うん、なんか仲間って感じだな。

 そしてだいとのツーショット写真は。


「え?」

 

 半分、俺の予想外だった。


 そこに映っていたのは、思った通りの俺の間抜けな焦り顔と、予想外の……可愛らしい笑顔のだい。


「うっわ……めっちゃ可愛い……」


 元々が抜群に美人なのに、その美人が浮かべる笑顔。

 しかも俺の大好物の恰好である、青チャイナに猫耳。


 俺はみんなに写真を送信するのも忘れて、無意識ににやけながら、時間も忘れてその写真を眺め続けていた。



 こうして急遽始まったコスプレ大会は、優勝ゆきむら、失格事実上の不戦勝1名という形で決着し、最後にご褒美の写真大会を行って、幕を閉じるのだった。

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