第45話 サブリミナル効果
日曜日。
特に予定もいれてないし、こんな日は何をするかというと。
〈Zero〉『うぃーっす』
LAだよね!
MMOユーザーのたしなみっていうか?
時間があれば、自己研鑽に励むのです。
〈Jack〉『うぃーーーーw』
〈Yukimura〉『こんにちは』
この時間にログインしていたのはジャックとゆきむらだった。
二人とも、ダンジョンにいるからなんかしてるのか。
さて俺は……とやってきたのは中央都市コンフォルセ。目的は高レベル帯スキル上げパーティの募集を探すためだ。
まぁやってきたっても、転移魔法で一瞬なんだけど。
この街は海上都市ワラザリア同様、プレイヤータウンではない。2回目の拡張データで実装されたエリアだが、設定上は魔国に対する4つのプレイヤータウンの代表たちが集い、有事に備えるための都市ということになっている。
この街の最大の特徴はパーティ募集掲示板があること。
さすが日曜、人が多いぞ。
中世ヨーロッパの街並みを意識したような街並みの中に溢れかえるプレイヤーたち。
サーバー内にいる全プレイヤーサーチをかけると、現在は3500人がログインしているらしい。
そしてこのエリアには700人ほど。
みんな何か募集はないかと、探してるんだろうな。
まぁ俺もだけど。
最近は新情報の影響もあってか、銃や弓を鍛えだしたやつが増えた。
すれ違うプレイヤーの5人に一人は銃や弓を装備している気がするレベルだ。
うん、その情報発信源は、俺だぞ。
鼻高々だな!
と、そんなことを思いながら掲示板をチェックすると、おあつらえ向きにスキル320~の募集を発見した。
えーと、主催者は……〈
〈Zero〉『こんにちは。募集みたんすけど、銃でもいいですか?』
〈Yakiniku〉『応募ありがとうございます!ぜひともw』
直接メッセージを送って、パーティに誘ってもらう。
既に先客が……って、マジか。
〈Moco〉『あら、ゼロやんじゃん』
〈Zero〉『どーもっす』
〈Taro〉『まさかゼロやんがくるとはw』
〈Yakiniku〉『噂の方と会えるなんて、嬉しいっす!』
〈Zero〉『噂?』
〈Moco〉『あ、やきにくは
〈Zero〉『え、そうなんすか?』
〈Taro〉『もこさんの名前じゃ、みんな緊張して応募してこないからw』
〈Zero〉『あー、たしかに』
〈Moco〉『あとは盾欲しいねー』
〈Yakiniku〉『あ、ちょうど応募きましたよ』
〈Taro〉『おー』
〈Cecil〉『やっぴー☆』
〈Zero〉『はあ!?』
〈Cecil〉『わおwゼロくんじゃーんw』
〈Cecil〉『よろしくねーw』
マジかよ。こいつ、こんな野良の募集とか入ってくんのかよ。
っていうか、【
もしや……|もこ《義姉》さんが呼んだか!?
いろいろあったせいで、俺はこの段階で疑心暗鬼だ。
〈Moco〉『格闘、大剣、銃、錫杖、メイスか。完璧じゃん?』
〈Cecil〉『うわ、もこさんとゼロくんからタゲキープとか、しんどー』
〈Taro〉『やきにくがサポートするからw』
〈Yakiniku〉『がんばるっす!』
うっわ、みんなやる気満々だけど帰りてー。
いや、今いるの家だけど、帰りてーーーー。
〈Moco〉『じゃ、場所は噴火口ねー』
〈Taro〉『取引所前でよろー』
〈Cecil〉『はぁい』
俺の日曜が……なんて日だ!!
もこさんが噴火口と言った場所は、ギヌン山脈から昨日俺らが行ったダンジョンの入口側ではなく、別ルートで進んだ火山エリアの頂上部のことだ。
スキルキャップを目指すプレイヤーが狩りをする場所としては、現在最もメジャーなエリアだった。
ちなみに以前にだいたちと素材狩りに来たのは、火山エリアの序盤ゾーンだぞ。
〈Zero〉『噴火口付近って、レア出るんじゃなかったっすか?』
〈Moco〉『まーでるけど、出たらやっちゃえばいいじゃん』
〈Zero〉『え、そんな簡単にいいます!?』
〈Taro〉『ゼロやんがいなくなったあとの加入だから知らないかもだけど、やきにくは04サーバーではけっこう有名だった
〈Yakinikku〉『自分、移転組っす!』
〈Zero〉『あ、そうなんすか』
レア、と俺が言ったのはレアモンスターのことで、通常モンスターを撃破していると、一定の確率でポップする上位個体だ。
だいたいは珍しい装備を落とす可能性があるが、俺らがいくエリアはただでさえ雑魚も強いエリア。
そのレアなど、5人で倒せるのか正直不安だったのだが。
〈Cecil〉『
〈Moco〉『サドンリーデスの連撃なんて贅沢だねーw』
〈Taro〉『
〈Zero〉『はぁ、そうですか』
どうやら俺だけが不安らしい。
この焼肉……じゃない、やきにくさん、それだけ頼れる人なのか。
移転組かー。やっぱなんだかんだ、古参も多い01サーバーって人気なのかな。
道中の移動はそれぞれが移動支援魔法を自分に使い、モンスターから俺たちを見えないようにして移動する。
なので
あ、ちなみにやきにくさんは、犬型獣人だった。嫁キングと違って、顔に傷があるタイプの見た目だったぞ。
焼肉ってより、生肉食ってそうなイメージである。
〈Moco〉『じゃ、がんばろーw』
結局パーティから抜けることもできず、俺は廃人たちと共演をすることになったのは、もちろん言うまでもない。
狩り開始から2時間。1体当たり2000ほどの経験値をくれる2足歩行の各種武器を持った恐竜型獣人の雑魚を、1体約1分の間隔で倒し続け、おそらく110体ほどのモンスターを倒したと思う。
このエリアの雑魚をこの速度で倒せたのは、正直驚きだ。
無論支援メンバーがいたことも大きいが、やはり個々の装備とプレイヤースキルが際立っていたように、思う。
普通だったら、1分半~2分半くらいは倒すのにかかるからね。
取得経験値は、連続撃破ボーナスも込みで30万ほど。
俺の銃スキルは始める前に332だったのが、333まで上がっている。
ちなみに334にするまではあと90万だ。
うん、ほんと鬼畜だよな。
〈Moco〉『そろそろ終わるかー』
〈Cecil〉『あ、あと2匹でスキルあがる!』
〈Taro〉『おお、じゃあやりますかー』
〈Cecil〉『ありがと!』
亜衣菜、というか〈Cecil〉の格闘武器姿は新鮮だったが、まぁやはりというか、見事なプレイヤースキルを見せていた。
格闘のカウンターは刀よりも発動コマンドを押す許容時間は長いものの、タイミング次第で成功する確率が変化するなかなかシビアな仕様なのだ。が、ほとんど成功させていた。
うん、見事としか言いようがない。
というか俺以外は全員メイン武器じゃないんだよな。それにもほんと、驚きだよ。
そんなこんなで追加で1体目を撃破したとき、次に倒す予定だった、先ほど倒した雑魚モンスターがリポップ……しなかった。
〈Yakiniku〉『ここできますかー!』
〈Moco〉『
〈Taro〉『回復はするよー』
〈Cecil〉『やきにくさんよろしく!』
〈Yakiniku〉『お任せを!』
不意に現れた上位モンスターだというのに、メンバーたちに慌てた様子はない。
俺は武器変更の必要はないから、やることをやるだけだが。
自分にできることを考え、俺は
〈Cecil〉『ゼロくんまだ攻撃しなくていいよーって』
〈Cecil〉『おお』
〈Moco〉『やるぅ』
〈Taro〉『やっぱうちにほしいなーw』
自身のヘイトをあげないようにスキルを使いつつ、安全に3分を過ごすために俺が取ったのは、レアモンスターが両手に構えたサーベルを狙撃すること。
当然ここも、この前【Vinchitore】が検証したエリアなのだから、銃による行動阻害は発動するはずだ。
モンスターが振り下ろした左腕のサーベルが俺の銃撃を受け、吹き飛んだエフェクトとともに消滅する。
〈Cecil〉『けっこう的ちっちゃいはずなんだけどなー』
〈Cecil〉『あたしもうちたーい!』
〈Taro〉『セシルさんはスキル使えないからダメっすw』
俺が
〈Yakiniku〉『うわ、めっちゃ楽なったw』
左手の攻撃がなくなった分、モンスターの攻撃は単調になる。
だがまだ亜衣菜たちがスキル使用可能になるまで、80秒はあるだろう。
俺は再使用可能になったサイレントショットを発動させ、右腕のサーベルも消滅させる。
〈Taro〉『敵がかわいそうw』
〈Cecil〉『あたしもうちたーい!』
そんなこんなで亜衣菜が喚いているうちに、3分が過ぎ。
やきにくさんががっつりヘイトを上げた後、もこさんの
〈Moco〉『じゃ、またよろしくーw』
狩りを終了した俺たちは各々プレイヤータウンに戻った。
主催はやきにくさんだったが、事実上はもこさんだったため、もこさんの合図でパーティが解散する。
思いのほか亜衣菜が何か言ってくることもなく、思ったよりは楽だった。
さらにやきにくさん、いいプレイヤーだったなー。覚えとこう。
うん、やきにくさん、か。
プレイヤーホームで俺が一息ついていると。
〈Cecil〉『おっつかれー』
噂をすればなんとやら!
〈Zero〉『おう、おつかれ』
〈Cecil〉『久々に組んだねーw楽しかった!』
〈Zero〉『さすがのテクニックだったな』
〈Cecil〉『えへへwでさ、あたし、思ったんだけどさ』
〈Cecil〉『何か、食べたいものはありませんか』
こ、こいつ……!
思ったことは、一緒だったみたいだ。
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