カースト最底辺の俺がカースト最上位の女を助けたら惚れられました
@kuooke
第1話 俺は勇者だ
いつも通りの場所。いつも通りの電車。いつも通りの混み具合。
俺は座ってスマホをいじる。
何も変わらなかった。
――あの人が来るまでは。
俺は誰もいない家を出て、いつも通りに駅に行く。
駅に着いたら電車に乗って、いつも通りの席に座る。何故かここはいつも空いている。
――そして、目の前に、同じ制服を来た女子が来た。同じ学校なのだろう。
スラリと伸びる足、モデルでもやっているかのような腰。そして徐々に上に目線をやると、殺人級のバスト。さらに上に行くととんでもなく可愛い顔。
顔を見てわかった。同じクラスの藤山沙羅 という名前の人だ。
同じ学年だったら誰でもわかるだろう。
というのも、最上位カーストの超絶美女という事で有名だ。
…まあ、最底辺カーストの俺がそういう目で見ても、どうしようもない。
その藤山沙羅は今、俺の前に立ってスマホをいじっている。SNSでも確認しているのだろうか。
――その時、藤山さんの手の指の動きがピタリ…と止まった。
何か衝撃な事をSNSで見たのだろうか?
すると、藤山さんの目が、涙で潤んでいるのがわかった。
…? どうしたのだろうか。
「…たっ…す――て」
口が動いて、目の前の俺でも分からないような小さな声で言った。
たすて?
「…た…たすけて」
…あれ?
確かに『助けて』と、聞こえた。
聞き間違いだろうか。何故か俺を凄く睨んでいる…なんか悪いことした?
ジロジロ見すぎたのだろう。そりゃ気持ち悪いよな。
――でも『助けて』とは一体…。
電車…助けて――
もしかして…いやでも…。
俺は確かめるべく、席を立ち、藤山さんの後ろに向かった。
すると、やっぱりおっさんが…藤山さんのスカートの中に…。
――あ、あれ…おれ凄く面倒な現場に立ってる?
俺はおっさんの手を掴み、こう言った。
「痴漢、ダメ…絶対」
おっさんに殴られるのではないか…と思って、物凄い緊張をしてしまったので、カタコトになってしまった。
すると、おっさんは俺のことをみて、物凄い睨んできた。
本日2回目。
やばい、殴られる…と思ったら、急におっさんが逃げ出した。
あれ?
「…あ、ありがとう」
声がした方を向くと、藤山さんが、今にでも泣きそうな声と顔で、お礼を言ってきた。
その顔させられると何もしていないのに罪悪感が…。
「そりゃ、目の前で痴漢が起こってたら誰でも…」
「ほんとに…ありがとう」
だからその顔やめれ。
その後、警察とやらに連れてかれ、事情聴取?みたいなことをされた。
無事、目撃者が多数いたので、あのおっさんは捕まったという。
いやぁ…痴漢なんかしたらダメよ。
それで、今は学校の校門前。
あれ?これ遅れて叱られるんじゃ?スマホの画面で時間をみたら、遅刻確定したことがきまった。
「おう…」
まあいいや。
「遅れました」
ドアを開けると同時に声を出して、謝罪をする。
「ん?ああ、梨乃川か。警察から事情は聞いてる」
その言い方俺が犯罪者みたいだからやめて。
ほら、みんなザワザワしてる。
「まあ…席に着いてくれ」
俺は大人しく、席に座る。
その途中、藤山さんが凄く睨んできた。
あれ?俺助けたんだよね?
「ふぅ…」
ため息を吐きながら自分の席に座る。
「おい、お前なんかしたのか?」
座ったら、どこからか声がした。
このイス座ったら声出るのか。
「おい?隼乃介?」
「ん?…なんだ、お前かよ」
隼乃介…とは、俺の名前だ。
前を見ると、友人が後ろを向いてこっちに話しかけていた。
「犯罪を止めただけ」
ドヤ顔でそう言うと
「…カッコつけやがって」
と、ジト目で見られた。
その後、俺は大人しく授業を寝ながら受け、昼休みに入った。やったーご飯だー。
俺は自分の席でご飯を食べようと、自分で作った弁当を広げる。
白米とシャケと野菜。うん、健康。
俺は小さくいただきますをして、早速食べ――
「ねえ、ちょっといい?」
…ボコされるパターンや。
俺は怯えながらカクカクと、頭を上げ、視線を上にあげる。
すると、今朝助けた藤山さんだった。
あれ?なんでボコされるの?助けたよね。
「ちょっと…来てくれる」
と、視線を逸らしながら、俺に言う。
ちょっと頬が赤くなっている。…きっとアドレナリンだろう。そんだけ俺をボコすのが楽しみなのか…うわぁん。
「はい…いいですよ」
そう言って、俺は立ち上がる。
「あ、弁当も持ってきて」
な、なにぃ…カツアゲだと?
い、いやだ…これは俺が作ったご飯なのだ。
「…早く」
…。
「ねぇ?どうしたの?」
…こ、怖い…仕方ない…弁当持っていくか。
俺は弁当の蓋を閉じ、藤山さんについて行く。
俺は勇者だ
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