俺のかわいい許嫁は犬猿の仲の振りができない
二歳児
第1話 俺の許嫁はかわいい
俺の許嫁、如月愛美は可愛い。
前は、美しいや綺麗などの言葉が似あうと思っていた。でも、そんなことなかった。めちゃくちゃ可愛い。愛らしい。
冬の寒さも厳しくなってこようかという、一月初め。俺たちはテーブルを挟んで話をしている。
俺たちの間柄の事情は複雑だ。親はかなり大きな会社の社長、しかもライバル同士だ。
ある時いきなり婚約が決まった。子会社同士で衝突があったらしく、そのことで親同士が、社長として会談したらしい。
それを知らされた時に、親には相手を堕とすか無視をして興味をかけるなと言われた。
それは愛美もそうらしい。
「……私、あなたといるのは嫌なの」
愛美が苦しそうな顔をしながらそういう。
そして、テーブルの下で俺の手を、ぎゅうと握りしめた。
「………やっぱだめ……大好き…」
愛美が周りに聞こえないように小声でつぶやく。いつもこうやって、どこか体が触れていないと、愛美は俺に悪態をつくことができない。
すごく優しいから、こっちが分かっていても罪悪感で胸が痛くなるらしい。
「大丈夫……ゆっくりでいい」
「ありがとう……」
両方の両親に俺たちがこうやって愛し合っていることをばれてはいけない。表向きは和解した、などともいわれているが現在ちゃんとライバルだ。
攻撃の手段としてこのような形になったに過ぎない。直接的に手を下せるようにパイプを作っておこうとしたらしい。
ま、俺愛美のこと大好きだからそんなことに利用させはしないが。
こんなにかわいいのだ。利用したくもない。愛でたい。
俺はもともと愛美のことが好きだった。遠くからしか見たことはなかったけど、話を聞く限りで好ましいとは思っていた。
実際に会ったらかなり此方を気遣ってくれて、本当に天使みたいな人だなと思った。そして、自分でいいのであれば愛美を支えたい、と。
「……もう一度やるか?」
「……できない………もう、やだ…」
悲しそうな顔をして愛美が言う。
こうやって犬猿の仲を親にアピールしたくて、こんなことをしているのだが。愛美は結局慣れることができそうにない。
俺もほとんどできないが。
言うことなんとかできる。ただ、その言葉で悲しそうに笑う愛美を見て罪悪感でいたたまれなくなる。
「………大好きだ」
「私も…」
周りに聞こえないように思いを伝えあう。
こうやってしか、愛し合えない。自分や愛美の環境を恨んだこともあった。でも、今は利用しようと逆に考えている。
利用できるところまで利用して、いざとなったら逃げだす。
きっとそっちのほうが幸せに過ごせるから。
俺は、ずっと一緒に居たいと思っているから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます