第10話お呪い
ルチアたちが暮らす世界には、魔法と、その下位能力である『お呪い』がある。
魔法は魔力を使い、自然現象などに干渉する力。
お呪いは魔力を使い、人の人生を少し豊かにする力。
それが人々の認識。
ルチアが使えるのは『お呪い』だけであり、けれどその効力は確実だと、密かに令嬢たちの間では人気なのであった。
例えば、恋愛のおまじない。
例えば、幸運のおまじない。
例えば、金運のおまじない。
例えば、健康のおまじない。
お気に入りの小さな人形や、綺麗な石、アクセサリー。
様々なものにお呪いをかけてもらい、告白だったり、博打だったりをする。
お呪いがかかったそれらを身につけると、いつもより勇気が出たり、勘が冴えたりするのだそうだ。
効力が出るのはきっと、お呪いをかける者が純粋に、相手の願いが叶うことを祈っているからだろう。
______
____
__
「ルチアさんっ、お願いできる?」
卒業も近づいてきたこの頃。
学園では告白シーズンがやってきました。
私の仕事も増えるシーズンです。
仕事が何かって?
お呪いですよ。恋愛成熟のお呪い。
「えぇ、もちろんです。どれにお呪いをかければいいですか?」
「この…あの方がくださったペンダントに…」
ラブラブですやん。
お呪い無くとも行けそうですけど…心構えが違うんですよね。たぶん。
「今時間は平気ですか?」
「はい、大丈夫です!」
「では、かけちゃいますね」
ペンダントをそっと受け取り、両手で包む。
目を瞑って、祈る。
告白がうまくいきますように。
2人が幸せになれますように。
少しして、手があったかくなる。魔力が流れている証拠です。
ペンダントに淡い光が宿ったのを見て、はい、と持ち主に返す。
これでお仕事終了です!
「これで大丈夫ですよ。きっと、うまくいきます」
「わぁ!ありがとうございます!ルチアさん!」
「応援してますよ」
「はい!」
早足で去ってしまう女の子。
…ごめんね、私。
「あなたの名前、知りませんでした」
周りにあまり興味を持たないのが、裏目に出ましたね。
相手は気づいてないようにも見えましたけど…人の心内はわかりませんし。
「………まぁ、友達はいなくとも一応は生きていけますし。友達が原因で死んだら、元も子もないですし」
人間関係は浅いほうがいいのですよ。
そうそう。その方が
「ルチアさん!少し良いかしら?」
「…はい、何でしょうか?」
「お、お呪いをかけていただきたいの!」
このシーズンは嫌いです。疲れます。嫌いです。
______
____
__
お呪いは人それぞれ。
ルチアのように、何かを付与するような力もあれば、ラメアのように人の感情を読み取れる力もある。
あくまでも魔法の下位能力であるため、種類は様々なものがあるのだ。
フランチェスカやエドワードなどは魔法を使える者たちであり、彼らの仲間も、その中心にいるラリアもそうだった。
しかし、ルチアはどうしても、魔法を使える“選ばれた者”にはなれなかった。
彼らと共にいることで生まれる劣等感。
きっと、当時の彼らなら気にせず笑い飛ばしたであろうこと。
何かがあり、距離が開いてからは見下す際に言われた言葉。
彼らと出会い、関わることでまたそうなることを、ルチアは気にしていないように見えたが心のどこかでは怖がっていた。
だから、ルチアは正直、お似合いだと思ったのだ。
魔法を使えるラリアと彼ら。
愛し愛され、まさに相思相愛。
ラリアも可愛らしい綺麗な子だし、彼らもまた美形揃い。
誰にも批判されずに済む関係。
羨ましいとも、ルチアは思った。
彼女は、ラリアはルチアに無いものを持っていたから。
誰かを羨み、妬み、恨む。
そんな、人間なら持っていて当たり前の感情は
ルチアの心を呪いのように蝕んだ。
かってになやんで、しんだぜんかい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます