留加事変――巫女兵たちの反乱
居木井 丈晴
第1話 3月の午後
午後2時半になって、ようやく
「ただいま、お母さん」ドアを開けた
「お帰り。テストどうだった?」
景子の
「まあまあ。
「そう。登ちゃん。お久しぶり」
団地の玄関はとても狭い。景子の運動靴、よそ行きのサンダル、おばさんのサンダル、景子の
登は自分のローファーを脱いで、整えると、すき間にそっと置いた。
「登、そういうところ偉いよね」
「バカにしてんのか?」
「お父さんは、そういうところいい加減だから」
「オレは、クソ親父に、さんざん言われてるからな」
「軍隊式ね」
「そうだよ」
高校1年の学年末テストの最終日だった。テスト最終日はいつも学校は、13時に終わる。最終日の午後には、先生たちが全校生徒の答案を採点するため、授業も部活でも、生徒の面倒をみられないからである。
「おばさん、今日パートはないんですか?」
クラスメートの
「大丈夫よ、豪ちゃん」
景子の母親は週4日、スーパーのパートに入っている。
だが水曜日だけはお休み。この家には何度も来たことがある。だから、登はそのことを知っていた。
「あー、お腹減った。お母さん、何かない」
「外で食べて来なかったの?」
「お金かかるでしょ」
「そうね。あ、戸棚の中にカップラーメンがあるわよ」
キッチンの戸棚を開けた景子が、げんなりした。
「袋麺じゃん」
「同じでしょ」
「違うわ。作り方が。袋麺じゃ、お鍋使わないと」
そう言いつつ、鍋を取り出すと、景子は水を入れ始めた。
「登、豪太、手伝わないとメシなしだよ」
登は笑った。
「インスタント麺の何を手伝うって言うんだ。お鍋に麺を入れて、スープを入れればいいだけ」
「だから、それをセルフでやるんだよ」
「へいへい」しゃーねーな。そう思いつつ荷物を置くと、床に腰を下ろした。
豪太は、登よりも素直だった。
「うん、わかった。おばさん、洗面台借りてもいいですか。手洗いとかしないと」
「いいけど。コップいる?」
「いえ、手ですくえば、大丈夫です」
「景子、登ちゃん、手洗いした? インフルエンザ、まだ流行ってるのよ」
「いけね」
景子は、キッチンのシンクで、あわてて手を洗った。
最後にインスタント麺(みそ味)をセルフで作った登が、どんぶりをリビングまで
持って行った時、時計の針は午後2時45分を指していた。
「登、コップとお箸、そこに置いてあるから」
景子の家には、小学6年生の頃、何度も泊まったことがある。それ以来、青のくじらが描かれたマグカップが登専用、そしてキリンの描かれた黄色のお箸が、登の“マイ箸”となっている。
塗装がやや剥げている黄色いお箸を取り、ちぢれたインスタント麺をつつき始めた時、おばさんがテレビのスイッチを入れた。
豪太がみそラーメンを食べながら、「登、今度のテストは自信ある?」と聞いた。
湯気を吹きながら、「まあ数学とかは」と答えた。
「現代文は?」
「無意味さ、あんなモン」
勢いよく、インスタント麺をすすった。
「現代文なんかクソだ。作者でさえ答の分からんような聞き方をするんだから」
「それな」
豪太が同意した。
いつもの口癖で、登が「無意味さ」をもう1度繰り返そうとした。
そのとき、警報音が鳴った。
全員の視線がテレビに集中した。
「
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