君の全てがいらない。

雨乃原風花。

第1話

 その日の君は、まるでたった今人を殺してきたかのような私の見たことのない目をして言った。


「君の全てがいらない。」


 1章 ひとりごと。~立川愛乃編たちかわあのへん

 新級して約1ヶ月いつもと変わらぬ日々。

愛乃あの聞いてるか」

 深井蒼空太ふかいそらたは、3年間同じクラスの親友今は、一緒に学級委員をやっている。

 顔も良いし、優しいし頭も良くて人気者だ。

「愛乃ちゃ~ん」


「はっ!なごみ!どした?」


蒼空太そらた君がお困りですよ」


 横を見ると、困った顔をした蒼空太がこちらをじっと見つめていた。

 私ったら、学級委員の事で話していたのにぼーっとしてしまっていた!


「ごめん。蒼空太。」


「気にしないでいいよ。それより学年企画についてだけど‥」

 と蒼空太は続けた。

 いつもはヘラヘラしてるくせに時々こういう真面目な顔を見せられると、


「困るんだよな。」

 思わず口に出た本音に、驚いていたのは蒼空太‥

 ではなく


「あのちゃん。」

 静かに私の名を零した和だった。


 2章 帰り道にて。


 私と和は、学校の帰り道一緒の時間あまりないので別れ道寸前の信号機前でいつも立ち話をする。


「ねえ、和」


「なにー」


「和はさー。好きな人とかいないの」


「‥‥!」

 え!いるの!

 にしても、いつも考えてる事を全く表情に出さないのにどうしてだろ。


「そっか~」


「なっなに!突然!愛乃ちゃんこそいる‥の?」


「自分でも分からないよ。」

 和は多分、分かっていて聞いてる。

 和は、私の事を私自身よりも知っているから。


「そう、そうよね。」

 それだけ言い放った和は何かを確信したように俯きながら手を強くにぎっている。それが何故なのか私には分からなかった。


「帰ろっか」

 そう言うと和は、こちらに向けて笑った。


「うん、また明日」


「また明日」


 和は、恋愛の話が得意でなかったのだろうか。

 いや、そんなのは聞いたことがない。口に出さないだけだろうか。

 とにかく今日の和は、変だった。


 3章 自分なんて。


「ただいま」


 家に帰ると、やっと本当の自分に戻れる。


学校での私の評判は散々なもので、

「死ね」やら「ブス」

やら耳が痛くなる。


まあ、和や蒼空太含む何人かは良くしてくれるし、それ以外の人に対して偽善を重ねれば味方には困らない。

しかし、偽善というものは自分を偽る訳で相当に疲れてしまう。


別に、誰も嫌いじゃないから仲良くしていると言いたいが正直私は嫌いな人ともなんとか上手くやれている。


だけど本当は、

「こんな自分が一番嫌いだ。」




1話 あとがき

1話いかがでしたでしょうか。

きゅんきゅんするよりドロドロした刺激を求めている人向けです。

短めに書いた作品なので沢山の方に読んでいただけたら幸いです。

登場人物全員ピュア過ぎる!

という恋愛作品を書こうと思いましたが、作者の不得意分野なので諦めました。m(__)m

未定ですが、近日中に2話を出したいと思っております。

よろしければ、そちらもお読みください。

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君の全てがいらない。 雨乃原風花。 @Amenohara001

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