725.無限の岩山
ザンザスの第1層は特に問題なく、通過し終えた。ときおり遠くから『ぴよー!』と鳴く声が聞こえたくらいだな。
ステラが補足してくれる。
「ここのぴよちゃんはハグが大好きですからね」
「なるぴよ。どこどこ聞こえる地響きはそれぴよね」
「激しいハグなんだぞ」
「ウゴ、力を抜いていれば大丈夫だよ」
そんな会話をしながら第2層への門へと到着する。草原の真ん中に、ツタの門が立っている。その向こう側に岩山が見えるな。
「よくあるダンジョンのゲートだな」
「ええ、行きましょうか……!」
「よし。せーの……!!」
というわけで俺たちはゲートに入り、第2層へと向かう。ちょっとした魔力の流れを感じたものの、すぐに荒れ地へと足元が変化した。
青空に、無骨な岩山。草さえもほとんどなく、どこまでも同じような景色が続いている。
「ここが【無限の岩山】か」
「はい、ここからが冒険者としての能力を試されますね」
ステラの言う通り、第1層は観光客にもツアーによる見学が許されている(もちろんザンザスの冒険者が同行するが)
しかし第2層からは原則として冒険者以外に開放されることはない。
レイアが周囲を油断なく見渡す。
「どうやら転移先は当たりのようですね。恐らくさほど苦労せず、次のゲートまで行けるかと」
「そうだねぇ。運が悪いとボールがぽんぽんいるところに出ちゃうし」
この第2層はアスレチックのような場所だ。ぶつかると転移させられるワープボールが点在している。
ぽよーん。ぽよーん。
「これがワープボールの跳ねる音ぴよね」
「気が抜ける音なんだぞ」
「そうだな……」
しかしワープボールは破壊しても即座にダンジョンの魔力で復活してしまう。避けるしかない。
「ここは鉱石が豊富なんだっけか」
「ウゴ、きらきらしたのがたくさんあるよ!」
「ザンザスで使う金属などもここの産出が多いですね」
とはいえ、効率的に採掘して戻るのは手間である。そもそもワープボールがうようよしているため、採掘場所にたどり着くのも一苦労だ。
「あとは場所によっては攻撃的な精霊もいるしね。ほら、ステラが攻略した未踏破エリアの……」
「雷精霊の住み処ですね。懐かしい……」
そんな思い出話を語りながら、俺たちは無限の岩山を進んでいく。ここにも立ち寄る場所は特にない。まずは通過優先だ。
「ぴよ」(ここは殺風景ですね)
「ぴーよ」(おやつセンサーにも反応ナシ!)
どうやらコカトリスにとって、ここは食べるものがないせいか反応が淡白である。わかりやすい……。
とはいえ、コカトリスの身体能力を持ってすればワープボール突破は問題ないだろう。むしろ問題なのは……。
「ぴよ! とうさま、頑張るぴよよー!」
「わふ。この中から見守っているんだぞ」
目の前にはぽよーんぽよーんと不可思議な軌道を描くワープボールがいる。
「見せてやろう、特訓の成果を……!」
このために俺は着ぐるみで動く練習をしたのだから!
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