670.村への帰り

 そんなわけで3体の砂コカトリスが留学(?)に来ることになった。


 群れの中で別れはもう済ませているらしい。


「そんな素振りはなかったが……」


 コカトリスの別れだから、歌ったり踊ったりするかと思った。


「ぴよ。聞いたら、砂漠の中でオアシスを探すのも慣れたモノらしーぴよ」

「ふむふむ……。ここの南の砂漠はかなり広いですよね」

「俺たちの国よりも大きいな」


 この砂漠の諸国の面積はかなり大きい。

 衛星写真があるわけでもなく、ざっくりとした計測だが……。


「ウゴ、そうなんだ……!」

「その代わり、人口は少ないが。土地柄、仕方ないかもだな」


 砂漠の国の街としては、ザンザスを超える規模の街はなかったと思う。


 それから夜はまったり過ごし……ステラとレイア、ディアが砂コカトリスのリーダーを囲んでいた。


 ステラがうつ伏せになった砂コカトリスの背中をマッサージしている。


「やはり背中はほんのちょっと違いますね」


 もみもみ、もみもみもみ。


「少し毛が硬めですよね。砂を弾くためでしょうか」


 もみもみもみ。

 レイアも砂コカトリスをマッサージしている。


「ええ、ほんの少しの違いですが……」

「ぴよ。かあさまのマッサージはどうぴよ?」

「ぴっ……ぴよぴ」(ふぁ、あっ……寝てた)


 完全に砂コカトリスはリラックスモードに入っているな。留学前の緊張は特にないらしい。


「ふむふむ……。村に帰ったら、他のぴよちゃんともきちんと比べたいところですね。マッサージしつつ……」

「そうですね、マッサージをしつつ……」


 翌日、目が覚めると宮殿全体が慌ただしかったな。

 帰る人がそれなりにいるからか。


 またひと周りしつつ、気がつけば村へ帰る時間になっていた。


「ぴよよー」(じゃーねー)

「ぴよよー」(またねー)


 砂コカトリスは最後に挨拶して、もふもふと抱き合う。


「ふむ、忘れ物はないか?」

「ああ、大丈夫だ」


 今回も帰りはヴィクター兄さんとナナの2便態勢だ。

 俺たちのほうにぎゅむっとコカトリスが集まり……まぁ、海コカトリスのときと同じだな。


 そこでヴィクター兄さんはふと砂コカトリスの羽を揉んだ。


「……やはり毛並みが少し違うか?」


 やはりヴィクター兄さんも同じことを……。

 と思ったのは秘密である。

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